元阪神・岡田彰布氏が語る時代に即した育成法「秀でているところを伸ばす」

2018.4.16

野球日本代表「侍ジャパン」が世界トップクラスであり続けるためには、次世代を担う若手の育成が大きな意味を持つ。阪神、オリックスで監督を歴任した岡田彰布氏は、オリックスでは2軍助監督、阪神では2軍監督も経験するなど、若手育成の場に身を置いた。才能を潰さずに大きく開花させるためには、どうしたらいいのか。「私は長所を伸ばしていく方がいいと思います」と岡田氏は語る。

写真提供=Full-Count

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阪神、オリックスでは2軍で若手育成も経験

 野球日本代表「侍ジャパン」が世界トップクラスであり続けるためには、次世代を担う若手の育成が大きな意味を持つ。現在、女子を含め各世代に代表チームが編成されている侍ジャパンでは昨年、大学代表が第29回ユニバーシアード競技大会で優勝した他、社会人代表とU-15代表はアジア選手権で優勝、女子代表はアジアカップでトップに輝き、U-18代表は第28回 WBSC U-18ベースボールワールドカップで3位、U-12代表は第4回 WBSC U-12ベースボールワールドカップで4位に入賞した。各代表の奮闘はトップチームの底上げ、そして日本野球界の発展にもつながる。

 毎年のように国際大会が控えるトップチームで最高の結果を出すためには、若い世代での才能の見つけ方、育て方が大きなカギを握ることになりそうだ。阪神、オリックスで監督を歴任した岡田彰布氏は、オリックスでは2軍助監督、阪神では2軍監督も経験するなど、若手育成の場に身を置いた。才能を潰さずに大きく開花させるためには、どうしたらいいのか。「私は長所を伸ばしていく方がいいと思います」と岡田氏は語る。

 かつては、欠点が少なく何事もそつなくこなせる選手が重用されたこともあったが、時代の変化に伴い、野球界でも一芸に秀でた選手に注目が集まるようになった。「ドラフトでも何か1つ秀でた選手を取ろう、という動きになっています」という。

長所をさらに伸ばす「そこにこそ、若い選手の伸びしろは隠されている」

「中学、高校、あるいは大学まで野球をすると、選手本人も自分のセールスポイントが分かるんです。ここが他人よりも優れているって。私は、そこからのスタートでいいと思いますね。秀でているところを伸ばしていく。そこにこそ、若い選手の伸びしろは隠されていると思います」

 岡田氏が現役時代は、長所を伸ばすこと以上に、短所を補う指導が主流だった。「昔はそうでしたね」と笑いながら振り返るが、時代と共に選手の気質が変化するのに合わせ、指導者もまた接し方を変えていく必要があるという。

「今の若い子はハッキリしていますよ。自分の好きな練習は楽しんでやるけど、嫌いな練習はいやいや時間だけ費やす(笑)。それでは上手くなりません。『ここが悪いから、克復する練習をしなさい』って言っても、いやいや取り組むから伸びない。それよりも『ここがいいから、もっと伸ばしていこう』と声を掛けると、何時間でも練習する。私たちが若い頃とは、またちょっと違いますから。ある意味、昔よりも今の若い子の方がハッキリしていますね。

 昔は欠点を指摘されたら、見返してやろうとか反発心を持つことが求められたし、持っている選手が多かった。今はそれよりも褒めて伸びる選手が多い。先輩後輩の関係も、今は大分和らいでいる部分があります。それは時代が変わってきているから仕方ない。指導方法も時代に合わせて変わらないと」

「短所を探していたら、選手は練習しなくなりますよ」

 長所を伸ばす指導法は、岡田氏の理念と経験にも合致する。阪神で2軍監督を務めていた時、当時の1軍監督から2軍では選手の短所を直す指導をするように指示を受けたという。だが、「やっぱり自分だって短所を指摘されるのは嫌じゃないですか。短所を探していたら、選手は練習しなくなりますよ」と続けた。

「短所はなかなか直せません。選手が持つ能力のカテゴリーが10あるとして、何か1つ秀でていれば、他の9つは短所に見えるということ。秀でた部分もさらに伸ばしていったら、3つ4つの短所は消えて見えるくらいになりますよ。そういうことだと思います。

 それはアンダー世代でも、あまり変わらないと思います。ドラフトでも何か1つ秀でた選手を取ろうというのだから、欠点を直す練習をいやいやさせるよりも、セールスポイントを磨く練習を目的意識を持ってさせる方が伸びるでしょう」

 若い世代のうちから、打撃であれ、投球であれ、走塁であれ、守備であれ、何かセールスポイントとなるものを見つけ、誰にも負けないくらいのスペシャリストになること。それこそが次世代に向けて野球界の底上げにつながるのかもしれない。

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