世界一奪回へどう戦うべきか 名将・岡田彰布氏が見る「小久保ジャパン」(投手編)
第4回ワールド・ベースボール・クラシック™(WBC)の開幕が迫ってきた。現役時代に阪神、オリックスで通算247本塁打を放ち、引退後は監督としてこの2球団を指揮した岡田彰布氏は、「今大会が今までで最も厳しい戦いになる」と予想する。2005年に阪神をリーグ優勝に導いた名将は小久保ジャパンをどう見ているのか、語ってもらった。第1回は投手編。
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強敵揃いの第4回WBCは「今までで最も厳しい戦いになる」
第4回ワールド・ベースボール・クラシック™(WBC)の開幕が迫ってきた。2大会ぶり3度目の優勝を目指す野球日本代表「侍ジャパン」は、28人の最終メンバーが決定。1次ラウンドでは、キューバ、オーストラリア、中国と同じプールBに入った。3月7日に難敵キューバとの初戦に挑み、同8日にオーストラリア、同10日に中国と対戦(すべて東京ドーム)。2位以内に入れば、2次ラウンド進出となる。
今大会は青木宣親外野手(アストロズ)がメンバー入りし、日本代表としてメジャーリーガーが2大会ぶりに参戦。ただ、投手陣は国内組のみの構成となり、エース候補と見られていた大谷翔平投手(北海道日本ハム)は右足首痛で出場を断念した。小久保裕紀監督のもと、日本はどのように戦うべきなのか。
現役時代に阪神、オリックスで通算247本塁打を放ち、引退後は監督としてこの2球団を指揮した岡田彰布氏は、「今大会が今までで最も厳しい戦いになる」と予想する。2005年に阪神をリーグ優勝に導いた名将は小久保ジャパンをどう見ているのか、語ってもらった。第1回は投手編。
――WBCは今回が4度目の大会になります。過去には日本ならではの「スモールベースボール」で優勝2度、ベスト4が1度という結果でした。日本は今大会どう戦うべきでしょうか。
「(選手の)辞退とかもあって、大谷がいないというのは痛いですよね。当然、(小久保監督は)初戦(の先発は大谷)でいくつもりだったと思うので。逆に、他の国のメンバーは今回が1番いいのではないでしょうか。日本はメジャー組が青木だけですけど、メジャー組のピッチャーは欲しかったですね」
――小久保監督は日本の一番の強みは「投手力」と話しています。「投手力」で勝つ野球をするということについては、どう思われますか?
「基本的に短期決戦だから、やはり(相手に)点をやらないのが1番ですよ。バッティングは短期間でそんなに勢いはつかない。ましてシーズン前ですし、そういう調整をやってないわけですから。相手は初対決のピッチャーばかりになる。球数制限があって、先発完投はほとんどないわけだから、打者は(相手投手と)当たっても2打席くらい。その2打席で対応しろ、というのはなかなか難しい。だから、打つ方はあまりアテにできない。もちろん、うまく小技とかを絡めて点を取れたらいいですけど……。それよりもピッチャーが最小失点に抑えること。当然、ゼロ(無失点)が1番です」
「勝ちパターン」の継投は「今の段階では決められない」
――ピッチャーは菅野智之(読売)、則本昂大(東北楽天)が中心となりそうです。1次ラウンドは65球という球数制限があり、継投もポイントになります。
「(1試合に)先発を2枚もっていかないといけない。イニングの途中ではなく、(球数制限は)65球ですけど、50球台で終わってもそのイニングで交代したほうがいいのではないでしょうか。その球数は読めるので。65球めいっぱいで、しかもイニングの途中でランナーが出たところでいくよりも、イニングの終了で切っていって、ある程度、次のピッチャーがいきやすいようにしたほうがいい。
そうすると、球数が増えて1イニング20球までいってしまったら。(2投手で)3イニング、3イニング(で降板)になるかもしれない。15球でも4イニングまで。そう考えると、7回くらいまでは先発陣が2人で頑張らないといけない。そうでないと、後ろ1イニングずつで4人くらい投げたら、絶対に誰か捕まりますよ。みんな調子がいいということはないので」
――「勝ちパターン」で起用するピッチャーも、大会が始まってからの調子によって変わってきますね。
「変わってくるでしょうね。今の段階では、誰とは決められない」
――岡田さんは阪神の監督時代には「JFK」(ジェフ・ウィリアムス、藤川球児、久保田智之)という「勝利の方程式」を確立しました。ある程度、「勝ちパターン」の形が決まっていたほうがチームとしては安定しますか?
「でも、WBCは短期決戦ですから、最初の登板が1イニングだけでも、そこで点を取られたら、その後は出しにくくなる。後ろのピッチャーは絶対に点を与えたらダメ。目いっぱいいかないと。1イニングをいかせるというよりも、もしかしたら右打者、左打者によってワンポイントで起用してもいい。絶対に後ろのピッチャーは点を与えたらいけない。特に8、9回は」
――WBCでは、普段と違うマウンド、ボールなどの問題も毎回出てきます。そういった要素や、大会の雰囲気に合っている選手をどんどん使っていくべきでしょうか?
「それは打つ方もその時の調子がいい選手を使うべき。ピッチャーはブルペンで調子がいいからといって、(試合で)投げたら打たれてしまう選手もいるけど、それはしょうがない。ある程度、覚悟を決めて投げさせないといけないと思います。最初の(1次ラウンドの)3試合で使ってみて、次のラウンドにいった時には、調子のいい投手を優先的に使っていくという形でしょうね」
各投手にとって鍵となる「大会初登板」
――第2回大会では、最後にダルビッシュ有投手(現レンジャーズ)をクローザーに持っていきました。
「結局、そういう形になるでしょうね。全部で8試合だから、調子がいいもの順で使うべき。繰り返しになりますが、最初の1次ラウンドの3試合である程度投げさせて、次の2次ラウンドからは調子がいい選手から(起用する)。当然、投げない投手も出てくるかもしれないけど、それはしょうがない。短期決戦ですから」
――そのポジションでの経験というよりは、その時の状態を優先するべきでしょうか?
「2番手でいく投手はどうしても(本職は)先発ピッチャーという形にはなりますけど、そのポジション、ポジションで経験者を当てはめたほうがいいとは思います。ただ、負けている時に投げないといけないピッチャーも出てくる。でも、(代表に)選ばれたピッチャーは普段(チームでは)負けている時にほとんど投げてない。そこでどういうモチベーションを保ってやれるか。負けてても、その点差で踏ん張っておいて、打線の援護を待つということが必要になる。各チームではそういう経験をしていないピッチャー、勝ってるときしか投げないピッチャーばかりですからね。それは(精神的に)難しい」
――本来ならクローザーは決めたほうがいいですよね。
「ある程度は確定したほうがいい。でも、各チームのクローザーやセットアッパーがいるから、そこが難しいところですね。各チームの先発を後ろに回すことも出来ない。いくら日の丸をつけたといっても、2009年のダルビッシュみたいに『準決勝、決勝だけお前に頼む』みたいな形だったらまだ選手も球団も納得するかも知れないけど、その球団で先発ローテーションをやっているピッチャーを最初から『お前は後ろな』とは言えない。(大会で投げる)球数も減りますからね。
もちろん、ダルビッシュ、田中(将大、ヤンキース)、大谷がいたら全然違う。日本で1、2、3番目のピッチャーですから。その3人がいないから、今回は日本独自の野球で点を取っていくとか、うまく継投していくとか、そういう戦いをしていきたい。“がっぷり四つ”だと厳しいかもしれない。
先発は則本、菅野、武田(翔太、福岡ソフトバンク)、石川(歩、千葉ロッテ)、第2先発は藤浪(晋太郎、阪神)、千賀(滉大、福岡ソフトバンク)となっていくでしょうけど、牧田(和久、埼玉西武)あたりもうまく使わないといけない。ただ、左打者が並んでいる時にいきなり牧田でいくと、そこで失敗した時の後の影響が怖い。松井(裕樹、東北楽天)にしても、最初は左打者の時にいかせて、抑えてもらって、それで波に乗りたい。最初に左打者を抑えても、右打者にポンポンと打たれたら、次の登板でやっぱり左限定になってしまう。短期決戦はその辺が難しくなると思います。大会初登板の時にどんなバッター相手に投げるかは大きいので、考える必要があるでしょう」
(野手編に続く)
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