侍ジャパンに置きたい「代打の切り札」 “天才”代打師が明かす1打席の「心得」とは(前編)
2017年は世界一奪還が最大の目標になる野球日本代表「侍ジャパン」。2013年10月から小久保裕紀監督が率いるチームは、3年をかけて徐々に骨格を作り、主要メンバーを固めてきた。埼玉西武、読売で活躍し、2014年限りで現役を引退したスポーツコメンテーターの石井義人氏の目に、現在の侍ジャパン打線はどう映っているのか。「代打の心得」として必要なことも含め、語ってもらった。
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埼玉西武、読売で活躍の石井義人氏、2012年CSでは代打ながらMVP獲得
2017年は世界一奪還が最大の目標になる野球日本代表「侍ジャパン」。2013年10月から小久保裕紀監督が率いるチームは、3年をかけて徐々に骨格を作り、主要メンバーを固めてきた。
ただ、国際大会で勝利を積み重ねるためには、勝負どころで「切り札」を持っているかどうかも重要な要素となってくる。特に、代打がうまく機能すれば、接戦で勝利を引き寄せたり、苦しい場面で形勢を逆転させたりすることも可能となる。
埼玉西武、読売で活躍し、2014年限りで現役を引退したスポーツコメンテーターの石井義人氏は、キャリア終盤には主に代打で好成績を収めた。2012年に加入した読売では、1年目に代打打率.405(37打数15安打)、得点圏打率.444を記録し、ペナントレース制覇に大きく貢献。同年の中日とのクライマックスシリーズでも代打でサヨナラヒットを放つなど、「天才」と称された打撃で大活躍し、シリーズMVPに選出された。
そんな石井氏の目に、現在の侍ジャパン打線はどう映っているのか。「代打の心得」として必要なことも含め、語ってもらった。
――まずは現在の侍ジャパン打線の印象について教えてください。昨年末に28人のメンバーのうち19人が先行発表されましたが、石井さんが見て足りない要素はありますか?
「1番に秋山翔吾選手(埼玉西武)、2番に坂本勇人選手(読売)で、3番に山田哲人選手(東京ヤクルト)、4番に中田翔選手(北海道日本ハム)、5番に筒香嘉智選手(横浜DeNA)、これに松田宣浩選手(福岡ソフトバンク)、内川聖一選手(福岡ソフトバンク)が絡んでくるような感じになると思います。全体的に若いかな、という印象を受けますね。もう少しベテランを入れた方がいいと思います。
メンバーを見ると、青木宣親選手(アストロズ)と内川選手くらいですよね。青木選手も経験は豊富ですが、さらに40歳に近いくらいの選手を入れておきたい。そうすれば、もっとまとまると思います。今までであれば、宮本(慎也)さんや稲葉(篤紀)さんのような選手がいましたし、(マーリンズの)イチローさんのような選手もいましたからね。経験のある選手が欲しいですよね」
若手から中堅の多いチーム構成「代打で出てきたら相手が怖がるような選手がほしい」
――若手から中堅にかけては、日本で実績を残している選手も多く入っています。ただ、代打で出ていって結果を残せるような選手が欲しいと。
「中田選手や筒香選手であっても、国際大会ではそんなにホームランは出ないと思います。となると、繋ぐ野球になっていく。(接戦では)プレッシャーもかかってきます。そうなった時に、周りを見える人がいた方がいい。プレッシャーに負けたら、終わってしまいます。チームをまとめられて、代打で出てきたら相手が怖がるような選手がほしいですね」
――繋ぐ野球になれば小技が求められますし、機動力を活かす必要もあるかもしれません。
「スピードで言えば、中島卓也選手(北海道日本ハム)か金子侑司選手(埼玉西武)あたりがいてもいいですよね。絶対に足は必要になると思う。このメンバーを見ると、ここという時に盗塁できる人が欲しいと感じます。経験を積んでる人が一番いいので、本当は去年引退した(元読売の)鈴木尚広さんあたりがいればいいですけど…。
あとは、最も面白い打線で考えるなら、1番・秋山、2番・菊池、3番・坂本、4番・中田、5番・筒香、6番・内川、7番・松田と入れて、山田をベンチスタートにするというのもありかもしれません。山田選手は足がありますし、代打でも使えるので、面白い。守備でいえば菊池選手は素晴らしいですし、2番に固定できます。勝負強い坂本選手を3番に置くこともできる。
このメンバーで変えるとしたら、あとは青木選手をDHで1番に持っていくかどうか。秋山選手を9番でセンターに使ってもいいですね。出塁を考えると、青木選手をトップに持っていくのはいいと思います。もちろん、青木選手はレフトで1番でもいいですし、秋山選手と入れ替えて9番でもいいと思います」
1打席で結果を出す…“天才”打者が語る代打に必要な「心得」とは
――昨年11月の強化試合で侍ジャパンでの「打者デビュー」を飾った大谷翔平選手(北海道日本ハム)の起用法も鍵になりそうです。投手だけでなく、打者としても力を出す形を考えたほうがいいのでしょうか?
「大谷選手については、個人的には打者としては代打で起用すればいいと思っています。投手とどっちも、というのは無理なのではないかと。大谷選手がDHなどでスタメン出場した時に、海外のピッチャーが内角をガンガン攻めてくる可能性もあります。それで右腕にぶつけられたら、大変なことになります。なので、打者として使いたいところですが、ピッチャーだけで行って『ここ』という時の代打だけでいいと思います」
――やはりレギュラーはある程度、想定できますね。あとは、石井さんが仰るように、代打要員や主力の調子が上がらない時のために経験のある選手で誰を加えるのか、ということになります。
「そうですね。昨年、活躍している選手というのはもちろん重要ですけど、もう少し長いスパンで結果を残している選手も必要かなと。例えば、糸井嘉男選手(オリックス)は膝の状態とかコンディションの問題もありますが、代打としても使えます。ベテランがあと1、2人いれば、苦戦した時に力になります。(国際大会では)主力も自分のことでいっぱいいっぱいになってしまう可能性がある。そういう時に、1本ヒットが出れば変わるかもしれませんが、1本が出ないかもしれない。大舞台の1本は大きいですから。選手の中でまとられるような人がいればな、と感じます」
――苦しい時に代打の存在というのは、やはり大きくなります。石井さんは現役時代、代打で素晴らしい結果を残されました。特に、クライマックスシリーズというトーナメントのような形の試合で試合を決める一打を放ってきた。その難しさも知っていると思いますが、代打の心得のようなものはあるのでしょうか?
「結果を考えたらダメですね。なぜなら、4打席ある選手が打てなくて、そこに代打で行ったりするわけですから。1打席で結果を出せというのは正直、無理だと思った方がいい。結果を気にしてもしょうがないので、ガンガン行くことです。繰り返しになりますが、4打席ある選手が打てないのに、1打席で、しかも途中から流れも何もないところで行って『打て』というのは難しい。それを考えたら結果が出なくなります」
石井氏はこのように代打の難しさを強調したが、現役時代には、そんな中でも結果を残してきた。では、なぜ石井氏は「代打の切り札」になれたのか。どのようにして、開き直る“勇気”を持てるようになったのか。インタビュー後編では、さらなる核心に迫る。
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