1軍出場の先に待つ同級生との“再会” 福岡ソフトバンク海野を刺激する仲間の活躍

2022.1.17

ひりつくような緊張感の中で戦ったことを、今でも鮮明に覚えている。福岡ソフトバンク・海野隆司捕手が初めて日の丸のユニホームに袖を通したのは2018年のこと。その夏に米国で開催された「第42回日米大学野球選手権」(以下、日米大学野球)、そしてオランダで開催された「第29回ハーレムベースボールウィーク」で、野球日本代表「侍ジャパン」大学代表に選ばれた。

写真提供=Full-Count

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3年目捕手が振り返る、初めて袖を通した日の丸のユニホーム

 ひりつくような緊張感の中で戦ったことを、今でも鮮明に覚えている。福岡ソフトバンク・海野隆司捕手が初めて日の丸のユニホームに袖を通したのは2018年のこと。その夏に米国で開催された「第42回日米大学野球選手権」(以下、日米大学野球)、そしてオランダで開催された「第29回ハーレムベースボールウィーク」で、野球日本代表「侍ジャパン」大学代表に選ばれた。

「選ばれた時は『マジか』みたいな感覚で、ビックリしましたね。凄いメンバーばかりでしたし、ピッチャーは本当にレベルが高いなと感じたのを覚えています」

 当時、海野選手は東海大学3年生だった。代表メンバーを見渡すと、1学年上には日本体育大学の松本航投手(現埼玉西武)、早稲田大学の小島和哉投手(現千葉ロッテ)、東洋大学の甲斐野央投手(現福岡ソフトバンク)、同学年には明治大学の森下暢仁投手(現広島東洋)、苫小牧駒澤大学の伊藤大海投手(現北海道日本ハム)ら、大学球界トップに立つ錚々たる顔ぶれ。のちにプロの世界に飛び込む面々とともに、世界を相手に戦った。

衝撃を受けた日米大学野球、自信を深めたオランダでの活躍

 衝撃を受けたのは、やはりメジャーリーガーの卵たちが揃う米国代表との日米大学野球だった。「とりあえず投手の球がめちゃくちゃ速くて、そこは一番ヤバいなと感じました。クイックのような投げ方で(球速)150キロ、160キロを出す投手がいて。とにかく投げ方が日本の投手とは違いました」。剛速球ながらフォームも独特。日本での常識を覆され、圧倒された。

 その直後に行われたハーレムベースボールウィークでは、攻守に大活躍して優勝に貢献した。第3戦のキューバ戦で初めてスタメンマスクを被ると、打席では3打数2安打1本塁打3打点と大当たり。「バッティングに関しては何も分からない。データも何もないので、とりあえず甘くなったボール、打てると思ったボールを思い切って振る。そのことだけを考えていました」。4回に適時打を放つと、8回には2点弾。この試合が海野選手にとって大きな自信となった。

 第5戦のオランダ戦から決勝のチャイニーズ・タイペイ戦までは3試合連続でスタメン出場。決勝では4安打完封勝ちとリードも冴えた。「キューバ戦に自分で打って、守れて、勝てた、というのが自信になった。何かを掴んだというよりは、自信がついた感じでしたね」。日本にとって12大会ぶりの頂点に立つ原動力になった。

大学代表でも感じた「侍ジャパン」としてのプレッシャー

 ただ、大会中はとにかく過酷だったという。慣れない異国の地。最も苦労したのが食事面だった。「食事が全く違ったので、そこが一番(大変)でした。とにかく口に合わなくて……。食べるものがない感じだったので、みんなでスーパーに行ってカップラーメンを買ってきて食べて、という状況でした」と、今振り返りながらも顔をしかめるほど。カップ麺で空腹を凌ぎながら手にした優勝だった。

 翌年の「第43回日米大学野球選手権」でも大学代表として戦い、3大会ぶりの優勝を飾った。日の丸をつけて戦った3大会を振り返り、「やっぱり勝たなきゃいけないというプレッシャーはすごく強かったですし、それは大学生の代表でもありました。凄い選手ばかりが集まっていたので、その中でプレーできているというのは楽しかったというか、良かったですね。今後に繋がるな、と感じました」と語る。同世代のトップ選手たちと戦った日々は、野球人生においてかけがえのない経験となった。

刺激を受ける仲間たちの活躍「自分も頑張らなきゃ」

 福岡ソフトバンクに入団して今年で3年目。大学代表でともに戦ったチームメートたちは、数多くがプロの世界で活躍している。同い年でもある森下投手、伊藤投手は侍ジャパントップチームの一員として金メダルを獲得した。その姿を目の当たりにし、「シンプルに凄いな、というのが率直な思いですね」と明かす。2人は当時から出色の存在だったようで「投手陣の中でも全く違いました。森下は本当に先発型で落ち着いている感じでしたし、(伊藤)大海はどちらかというと、今と違って押せ押せ(のタイプ)でした」と振り返る。

 海野選手自身はプロ2年間で1軍出場はまだ16試合。チームには球界を代表する甲斐拓也捕手がおり、なかなか出場機会に恵まれないが、森下投手、伊藤投手ら同世代の活躍に「自分が1軍で何も実績を残していないので、負けられないというより、自分も頑張らなきゃと思いますね」と刺激を受けている。

 今、目指すべきは侍ジャパンのトップチームよりも、まず1軍での出場機会を増やすこと。「とにかくホークスの1軍で欠かせない存在になれるように、ということだけしか考えていないです」と決意を新たにする。1軍で定位置を掴んだその先に、侍ジャパンという舞台での同級生との“再会”が待っている。

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