「まだ自分の考えは甘かった」 第3回WBC代表・大隣氏に気付きを与えた侍ジャパン
12年にわたる現役生活の中で、千葉ロッテの大隣憲司2軍投手コーチにとって、2013年に行われた「第3回ワールド・ベースボール・クラシック™」(以下WBC)に出場した経験は、何事にも代え難いものになっている。
写真提供=千葉ロッテマリーンズ
千葉ロッテ・大隣2軍投手コーチが振り返る2013年の春
12年にわたる現役生活の中で、千葉ロッテの大隣憲司2軍投手コーチにとって、2013年に行われた「第3回ワールド・ベースボール・クラシック™」(以下WBC)に出場した経験は、何事にも代え難いものになっている。
「選ばれるとか選ばれないとかいう前に、テレビで見ていた舞台だったので、まさか自分が選ばれるとは想像もしていませんでした。だから、選ばれたことに対しては、その先の未来も含め、プロ野球全体を背負っているという重みを感じながらやっていましたね」
2007年に福岡ソフトバンクに入団した左腕は、2年目に先発ローテの一角に食い込み、11勝をマーク。翌年も8勝を挙げたが、その後は思うような結果を残せず、2011年オフに一念発起してドミニカ共和国のウインターリーグに参加した。日本とは言葉も習慣も違う世界で野球と向き合い、「日本の環境の良さをすごく感じることができた。自分にとって考え方の1つとしてプラスになったと感じています」と振り返る。
この経験が奏功したのか、2012年は3完封を含む12勝8敗、防御率2.03という活躍。同年11月の「侍ジャパンマッチ2012『日本代表VSキューバ代表』」で初めて侍ジャパンのトップチーム入りを果たすと、翌年にはWBCの舞台でマウンドに上がった。
「2011年にはウインターリーグに行かせてもらって、12年になんとか成績が出て、13年に侍ジャパンに選んでいただいた。そこが自分にとって全てのポイントが詰まった期間だったのかなと。その期間は、本当に毎日毎日、いろいろなことを感じることができました」
今まで経験のないプレッシャーも「楽しめている自分もいた」
WBCでは、第1ラウンド第3戦のキューバ戦と、第2ラウンド1位決定戦のオランダ戦で先発マウンドを任された。キューバ戦では3回2安打1失点ながら惜しくも黒星。オランダ戦では初回、アンドレルトン・シモンズ内野手(ミネソタ・ツインズ)に先頭打者弾を浴びたが、最少失点で凌ぐ3回1失点で白星を飾り、日本を1位通過に導いた。
マウンドに上がれば、いつもと変わらぬ18.44メートル先のミットを目掛けて投げ込むだけ。だが、WBCの舞台では、いつにも増してボールがずっしり重かった。
「僕が投げさせてもらったのは、ラウンド通過が決まった後の2試合だった。それでもチームの勢いだったり、いろいろな要素を考えると、やっぱりただの1試合ではない。ましてや先発としてマウンドに上がるとなれば、その日の試合の流れを背負っている。その中で1球、1点の重みを感じながら投げられたことは、本当にいい経験になりました。
本当に1個1個のプレーが重たかったというか、今まで経験したことのないような……。今思えばプレッシャーだったのかもしれませんが、その時はそれを楽しめている自分もいたと思います。大学時代も代表に選んでもらいましたが、そこはアマチュアとプロの違いがある。日本中が注目している中で、なんかスーパースターになった気持ちにもなりましたし(笑)、そこで投げさせてもらった経験が大きかったです」
鳥谷選手の継続する姿勢に感化「その時の自分に足りなかった部分」
その時代のトップ選手が集う侍ジャパンでは、チームメートからも大いに刺激を受けた。普段は知ることのない他球団の選手が持つ野球に対する姿勢を間近にし、「まだ自分の考えは甘かった」と強く感じたという。
「自分のやるべきトレーニングや練習を常に継続すること。これが簡単なことのようで一番難しいし、本当に大事な、もしかしたら一番大きなポイントかもしれないと実感しました。その時の自分に足りなかった部分の1つだと思います。みんな意識が高い中でも、鳥谷(敬)さんは本当にすごかったですね。毎朝ジムでトレーニングする姿を見て、『あれだけの選手がトレーニングしているのに、僕は何をしているんだろう』と感じました。まさか今、千葉ロッテで同じユニホームを着ることになるなんて、当時はまったく想像していませんでしたけど(笑)」
教え子たちに伝えたい想い「1軍で結果を出すだけではなく、その先を目指してもらいたい」
2018年を限りに現役を退き、現在は2軍投手コーチとして次世代を担う投手の育成に励んでいる。自身の成長に繋がる気付きと経験を得られた場所だからこそ、教え子たちには侍ジャパンを目指してほしいという想いがある。
「プロ野球選手である以上、1軍で結果を出すだけではなく、オールスター出場だったり、WBC出場だったり、その先を目指してもらいたい。トップでもある侍ジャパンでやってほしいという想いは、自分が経験させてもらったから思う部分でもありますね。今も1日1日を大事に過ごしてほしいと伝えていますが、やっぱり高いところを目指してほしいと思います」
1人でも多くの選手がトップに辿りつけるように、コーチという立場からしっかりサポートをし続ける。
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写真提供=千葉ロッテマリーンズ