侍ジャパン、韓国を破り10年ぶり世界一 稲葉監督は涙「込み上げてくるものあった」

2019.11.18

野球日本代表「侍ジャパン」は17日、東京ドームで行われた「第2回 WBSC プレミア12」決勝で韓国に5-3と勝利し、10年ぶりの世界一に輝いた。初回にいきなり3点を失う波乱の幕開けとなったが、2回に山田哲人内野手(東京ヤクルト)が逆転の3ラン。奪ったリードを決死の小刻みな投手リレーで守り抜き、宿敵の韓国を撃破して大会初優勝を飾った。

写真提供=Getty Images

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歓喜の胴上げは8回「選手のおかげで世界一になれた」

 野球日本代表「侍ジャパン」は17日、東京ドームで行われた「第2回 WBSC プレミア12」決勝で韓国に5-3と勝利し、10年ぶりの世界一に輝いた。初回にいきなり3点を失う波乱の幕開けとなったが、2回に山田哲人内野手(東京ヤクルト)が逆転の3ラン。奪ったリードを決死の小刻みな投手リレーで守り抜き、宿敵の韓国を撃破して大会初優勝を飾った。

 試合終了の瞬間を迎えると、一斉にベンチを駆け出した選手たちはマウンド付近で歓喜の輪を作った。大歓声に包まれる東京ドームで、その光景をベンチから見守った稲葉篤紀監督は人目をはばからず涙した。激闘の末に辿り着いた世界一。選手たちの手で8度宙に舞った指揮官は「選手たちが本当に、慣れないことも世界一を取るためにやってくれた、というところに込み上げてくるものがありました」と、表情を綻ばせた。

 日韓対決となった頂上決戦は、立ち上がりから劣勢に立たされる展開となった。先発マウンドを託した山口俊投手(読売)が初回、いきなり2ラン、ソロと2本塁打を浴びて3失点。まさかの立ち上がりに、東京ドームも異様な雰囲気に包まれた。

 だが、侍たちは怯まなかった。その裏、四球で出塁した坂本勇人内野手(読売)を一塁に置き、4番の鈴木誠也外野手(広島東洋)が左翼手の頭を越える特大タイムリー二塁打。一塁走者の坂本内野手が一気に本塁まで生還し、逆襲への流れを作った。

 2回には2死から會澤翼捕手(広島東洋)の四球、菊池涼介内野手(広島東洋)の内野安打で一、二塁。ここで打席に立った山田内野手は2ボール2ストライクから3球ファウルで粘り、迎えた8球目、内角低めの真っ直ぐを捉えた。打球はファンの大歓声に押されて左翼スタンド中段に飛び込む逆転3ラン。一気に試合をひっくり返した。

先発の山口が初回に3失点 稲葉監督「苦渋の決断」も小刻み継投が奏功

 形勢を逆転すると、侍ジャパン最大の武器とも言える投手陣が奮闘した。稲葉監督は思い切って先発の山口投手を1回で替え、2回から高橋礼投手(福岡ソフトバンク)をマウンドへ。サブマリン右腕が2回を無失点に封じると、そこから小刻みな継投策に打って出た。

 4回には前日の韓国戦でセーブを挙げた田口麗斗投手(読売)を起用。左腕が2イニングを無失点とすると、6回からは中川皓太投手(読売)、甲斐野央投手(福岡ソフトバンク)も1イニングずつ「0」を並べた。すると、打線は7回に浅村栄斗内野手(東北楽天)の適時打で1点を追加し、リードを広げた。

 8回を山本由伸投手(オリックス)がきっちり封じると、最終回は山崎康晃投手(横浜DeNA)が、東京ドームを埋める超満員のファンによる“康晃ジャンプ“とともにマウンドに登場。4番から始まる韓国打線を2者連続で内野ゴロに打ち取ると、最後は空振り三振に仕留めて胴上げ投手となった。

 2日連続の日韓戦という稀な状況の中で選択した決死の投手リレー。稲葉監督は試合後、「もう今日は総力戦でした。(高橋)礼も中4日で無理させてしまいましたけど、お願いしたら『大丈夫です。いきます』と言ってくれて、よく投げてくれた。(山口投手の降板は)球も浮いてましたし、打者も嫌がる素振りがなかったので、苦渋の決断でしたが、後ろにみんないましたので替えようと決断しました」と、投手たちの奮起に目を細めた。

稲葉監督は選手たちの奮闘を絶賛「どの試合も楽な展開はなかった」

 オープニングラウンド3試合、スーパーラウンド4試合を戦い、この日が8試合目。宮崎、沖縄での事前合宿を含めると約1か月、結束力を高めた侍ジャパンは世界一を目指して一丸となって戦ってきた。

「監督に就任させていただいてから、この2年間、プレミア12、そして東京五輪に優勝したいと思ってきました。世界一になりたいという選手たちが集まってくれて、選手のおかげで世界一になれたと思います。どの試合も楽な展開はなかった。選手たちが粘り強くやってくれた結果が、この素晴らしい結果に繋がったと思います」

 稲葉監督は試合後、何よりも先に懸命に戦った選手たちを称え、労いの言葉を送った。コーチとして戦った4年前の第1回大会は、準決勝で韓国に敗れて涙を呑んだ。その韓国に勝利して手にした優勝は、格別な思いだっただろう。

 来年の金メダル獲得に向けて試金石となった今大会で、指揮官が得た収穫は大きかった。

「粘り強くやっていく。四球を選ぶ、バントをやる、なかなか長打は出ないので1点ずつコツコツ取るというのは勉強になりました。どこも強力な打線でしたから、そこに投手陣は立ち向かって勇気を持ってやってくれた」

 小技も使いながら少ないチャンスで1点をもぎ取っていくという、侍ジャパンとしての戦い方が見えた。

「今回は特にジャパンに対して想いがあるメンバーが集まってくれた。最後は熱いメンバーで戦いたかった。これからもそういうメンバーで戦いたい」と稲葉監督。日の丸への強い想いを持った選手たちと共に掴んだ世界一。2020年に控える大一番へ繋がる、大きな意味を持った優勝となった。

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