侍ジャパン期待の右腕が秘める決意 武田翔太×野村弘樹スペシャル対談
今年23歳になったばかりの武田は、旬真っ盛りの若手で構成される侍ジャパンで、今後長らく先発陣の中心となっていく存在だろう。若き右腕はこれまで2度体験した侍ジャパンで何を感じたのか。球界の大先輩で親交の深い元横浜ベイスターズ・野村弘樹氏に武田の生の声を引き出してもらった。
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トップ選手が集まる代表チームは「ちょっと空気感が違いますね」
小久保裕紀監督の下で段階を経た強化を進めている野球日本代表「侍ジャパン」。2014年11月にはMLBオールスターチームを迎えて「2014 SUZUKI 日米野球」を行い、3勝2敗で勝ち越しに成功。昨年11月に行われた「世界野球WBSCプレミア12」では、準決勝で韓国に敗れて決勝進出を逃す悔しさを味わったが、メキシコとの3位決定戦では圧勝し、次につながる戦いを見せた。
「2014 SUZUKI 日米野球」で、左脇腹を痛めた小川泰弘(ヤクルト)に代わる追加招集により、初めて侍ジャパンに選出された武田翔太(福岡ソフトバンク)は、第4戦に3番手として初登板。2回1失点で侍デビューを果たすと、最終戦となった沖縄の親善試合で先発として3回を4安打1失点に抑え、勝利投手となった。昨年の「世界野球WBSCプレミア12」では2試合に先発し、合計7イニングを無失点に抑える活躍で、侍ジャパンが誇る先発陣の一角に食い込んだ。
今年23歳になったばかりの武田は、旬真っ盛りの若手で構成される侍ジャパンで、今後長らく先発陣の中心となっていく存在だろう。昨季はプロ4年目で初めて2桁勝利を挙げ、今季、パ・リーグ首位を独走する福岡ソフトバンクで前半戦を9勝3敗、防御率2.90という好成績で折り返した。そんな若き右腕はこれまで2度体験した侍ジャパンで何を感じたのか。球界の大先輩で親交の深い元横浜ベイスターズ・野村弘樹氏に武田の生の声を引き出してもらった。
「仲がいい」侍ジャパン投手陣、「幅広くコミュニケーションが取れている」
野村弘樹(以下、野村)「2014年の日米野球で初めて侍ジャパンに招集されたわけだけど、球界を代表するメンバーが集まる中で、何か特別なことは感じたかな?」
武田翔太(以下、武田)「やっぱり代表に選ばれるメンバーだけあって、ちょっと空気感が違いますね。それと、みんな普段自分たちのチームにいる時よりも明るいイメージがあります」
野村「へぇ? 代表の雰囲気って明るいんだ」
武田「はい、何でだか分からないですけど、かなり雰囲気がよかったです。意識の高い選手が多いからかもしれませんけど」
野村「他のチームの選手と技術的なことだったり、メンタル的なことだったり、いろいろな情報交換ができる場でもある」
武田「そうですね。かなりそういうことができますね。僕自身も勉強してみたいっていう気持ちはあります」
野村「誰か仲良くなった選手はいる?」
武田「ピッチャー陣はみんな仲がいいですね。先輩後輩関係なく幅広くコミュニケーションが取れていると思います」
野村「若い侍ジャパンの中でも、翔太選手はかなり若い方だよね。松井裕樹選手(東北楽天)の次に若いくらいかな?」
武田「大谷選手(翔平・北海道日本ハム)と藤浪選手(晋太郎・阪神)の次ですね」
野村「そうなると、若手のみんなで世界一を奪還したいっていう思いもあるでしょ」
武田「そうですね」
各国代表が戦う世界大会「すごく刺激になる」、米国左腕カーショーに興味
野村「去年は(世界野球WBSC)プレミア12で先発して、各国代表との対戦を経験した。そういった世界大会に出たことで感じたことや、今度はこういう経験をしたいっていうことはあるかな」
武田「世界大会は、各国で代表に選ばれた人が戦う野球なので、すごく刺激になりますね。次の世界大会で自分の目で直接見てみたいのは、カーショー(ドジャース)の投球。代表になるかどうか分からないですけど、テレビ中継を見ていて一番エグいなって思いますね。もうずば抜けてますし、次元が違う。卑怯です(笑)」
野村「そういう相手と先発で投げ合ってみたいって気持ちもあるよな」
武田「そうですね」
野村「日本を代表する侍ジャパンのユニフォームを着ると、身が引き締まる思いがするだろうね」
武田「責任感はありますね、代表としての。絶対勝たないといけないって思いはあるし、そういう責任感を持ってやっています」
野村「負けられないもんな。このプレッシャーは大きい」
武田「大きいですね。同時にやり甲斐も感じています」
マウンド上では飄々とした笑顔で打者圧倒も…「実はそれが悩み」
野村「もし自分が侍ジャパンの一員として戦うとしたら……。それを想像しただけでも、すごいプレッシャーを感じるよ。しかも、可能性は低いけど、場合によっては、緊急でセットアッパーに回らなければならないケースもあるかもしれない」
武田「今の侍ジャパンにはセットアッパーのスペシャリストが招集されていますけど、万が一、そういう場面が回ってきたら、差し込まれますよね(笑)」
野村「プレッシャーを背負った状態で、違うポジションに臨むのは難しいよな。準備も変わってくるし、オレは正直イヤだな(笑)。則本選手(昂大・東北楽天)とか、そういう難しい状況でも気迫で結果を出すタイプ。気迫といえば、翔太選手はまた違って、マウンドではいつもニコニコ投げているイメージなんだよね。特に1年目なんかそうだったけど、そのスタイルを崩すつもりはないでしょ(笑)」
武田「ノラリクラリとか、ニヤニヤしてるとか言われるんですけど、やる気はあるんですよ(笑)。やる気はあるんですけど、無意識のうちに、そう見えちゃうんです。実は、それが悩みなんです」
野村「(笑)でも、あの飄々とした感じで抑えられたら、打者はたまらないよな」
武田「メチャメチャ言われますね。でも、そこは僕には関係ない。僕は勝てればいいですから」
野村「ピッチャーとして表情が変わらないのはいいことだ」
武田「でも、マウンド上で焦っている時は、親にはバレますね。周りから見て、表情が変わっていないように見えても、親には『焦ってるな』とか『緊張してるな』とか、全部分かっているみたいで(笑)」
野村「親は偉大だね」
さらなる高みを目指して続く試行錯誤「上を上を目指していきます」
野村「プロ4年目だった去年は初めて2桁勝利に到達した。今年はさらに上を目指すために、いろいろな取り組みをしているみたいだね」
武田「そうですね。シーズンを通して投げられるように、栄養学を勉強して自炊をしてみたり、肩肘の状態に今まで以上に気を遣ってみたり」
野村「走るのが好きだって聞いたけど、それを含めたトレーニング方法も考えているのかな」
武田「2年目のオフに、五十嵐(亮太)選手にアメリカでのトレーニングに一緒に連れて行ってもらって、日本とアメリカの感じがどう違うのか見てきました。メニュー方法としては多いですし、動きの中で体幹や筋肉を鍛えるっていうトレーニングが多かったのが印象的ですね」
野村「いろいろな試行錯誤を繰り返しながら、さらなる飛躍を目指しているんだな」
武田「はい。最低ラインは怪我をしないことが一番。その上で、常にパフォーマンスを上げられるように、上を上を目指していきます」
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写真提供=Full-Count, Getty Images