専門家は6人の候補を挙げる 「WBSCプレミア12」で侍ジャパンの正捕手は誰に?
稲葉篤紀監督が率いる野球日本代表「侍ジャパン」は、今年11月に「WBSCプレミア12」に挑む。世界一を目指す上で、鍵を握るポジションの1つが「扇の要」の捕手だろう。現在、各球団には若き正捕手が次々と誕生しており、誰が本番で日本代表のレギュラーを務めることになるのか、大きな注目が集まる。
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昨年まで東京ヤクルトでバッテリーコーチを務めた野口寿浩氏が分析、適任は…
稲葉篤紀監督が率いる野球日本代表「侍ジャパン」は、今年11月に「WBSCプレミア12」に挑む。世界一を目指す上で、鍵を握るポジションの1つが「扇の要」の捕手だろう。現在、各球団には若き正捕手が次々と誕生しており、誰が本番で日本代表のレギュラーを務めることになるのか、大きな注目が集まる。
現役時代にヤクルト、日本ハム、阪神、横浜の4球団で捕手としてプレーし、昨年までの2年間は東京ヤクルトでバッテリーコーチを務めた野球解説者の野口寿浩氏は「候補に挙がりそうな選手は6人くらいいる」と話す。侍ジャパンのレギュラーにふさわしい選手は誰なのか。
野口氏は、国際大会を戦う日本代表の捕手のタイプは「バランス型がいいのではないでしょうか」と話す。なぜか。「周りにいい打者がたくさんいるので、打てるに越したことはないですが、守りがしっかりしたタイプがいいかなとは思います。ただ、打てる選手が入れば、打線の切れ目はなくなる。盗塁を刺せるスローイングというのも重要ですが、国際大会でそれだけ動いてくる相手チームがあるのかどうか。そういうのは、逆に日本がお家芸的な部分があると思うので、そんなには動いてこないことが考えられます。そう考えると、しっかりリードができて、打撃ではチャンスに強い選手のほうがいいかなと思います」。一芸に秀でた選手よりは、総合力の高い選手がいいというのだ。
さらに、メンタル面の強さも持ち合わせている必要があるという。
「内心ドキドキしていても、それを外に見せない。捕手はそういうことが非常に大事になります。キャッチャーが動揺を見せると、チーム全体の雰囲気がバタついてしまう。守備の時に、捕手がチームで1人だけ反対を向いている意味というのはそこですから。特に、何が起こるか分からない国際大会では、虚勢でもいいから、どっしりしていられる選手がいいですね。『バタバタするなよ』と嘘でもいいからマウンドで言える選手。『大丈夫だよ。落ち着けよ』と平気で言える選手ですね。内心では『俺が一番緊張している』でも別にいいんです。ですが、それを見せないことは非常に大事です」
では、現在のプロ野球界で侍ジャパンの正捕手に適任なのは誰なのか。野口氏が候補として挙げるのが、広島東洋の會澤翼捕手、埼玉西武の森友哉捕手、福岡ソフトバンクの甲斐拓也捕手、千葉ロッテの田村龍弘捕手、読売の小林誠司捕手、阪神の梅野隆太郎捕手の6人だ。その中でも、セ・リーグ3連覇中の広島東洋を牽引する會澤捕手を絶賛する。
「打撃の良さが光りますが、リードも含めて、決して守りの悪いキャッチャーではありません。若干、スローイングにウィークポイントはあるにしても、先ほど言ったように国際大会で相手がそれほど動いてこないと考えると、會澤選手が適任ではないかなと。一番バランスが取れています。広島東洋が去年まで3連覇できたのは、打線がいいだけではなく、會澤選手の力はかなり大きかったと思って見ています。會澤選手が成長していなかったら3連覇していただろうか、と。あの個性派集団をまとめ上げているのですから、リーダーシップも相当なものがあります。どっしりしていられるということを考えても、適任です」
正捕手ではなくてもチームに必要なのは埼玉西武の森捕手!?
昨年の日本シリーズでMVPに輝いた甲斐捕手はどうか。ことごとく相手の盗塁を刺す強烈なスローイングは大きな武器だ。
「今までの稲葉監督の起用を見ていると、順当にいけばレギュラーは甲斐選手かもしれません。すごくいい捕手ですね。甲斐選手のスローイングの技術は本当に高く、一番のストロングポイントでもありますし、リード面でも成長はしていますが、攻撃面を考えるともう少し(力が)欲しいかなと。読売の小林選手も、甲斐選手と共通のストロングポイントとして肩、スローイングがあります。ただ、そのほかの要素で上回るキャッチャーがいます。例えば、ワンバウンドをしっかり止める、データに基づいた配球ができる、というところも考えていくべきかなと」
また、野口氏が「個人的にオススメしたい」と語るのが、阪神の梅野捕手だ。「今年の成長ぶりは目を見張るものがある」と高く評価している。
「リードでだいぶ成長した部分があって、単調になることがなくなってきました。しっかり相手のことを見ているのは、キャッチャーとして大切なことです。ようやく、(打者を)見て、正しいことを感じることができてきたのではないかなと思いますね。ただ、足を骨折しているので、その影響がどうか。11月までに骨は治っているでしょうが……。あとは国際大会、侍経験がないので、その辺りがどうかなと思います」
さらに、ロッテの正捕手を長らく務める田村捕手についても、野口氏は「すごくいいキャッチャーになってきています」と評価する。ただ、経験は豊富ではあるものの、実はまだ25歳と若いだけに「次世代」の正捕手として期待。「その次の大会なら筆頭候補に挙がるキャッチャーになってると思います」と話した。
一方で、正捕手という役割ではなくてもメンバーに入れておくべきだというのが、西武の森捕手。打力という圧倒的な強みを持つため、捕手に限らずあらゆる使い方ができるというのだ。
「森選手もすごく成長していますし、去年の埼玉西武の優勝もあるので、自信を持って守れるようになっていると思いますが、バッテリーを組むピッチャーがどれだけ安心感を持って投げられるかと考えると、まだ會澤選手とか甲斐選手のほうが1枚上手かなという感じはしますね。ただ、森選手を選んでおけばピンチヒッターやDHなど使える幅が広がってくる。他のポジションも守れます。1軍の試合で外野を守ったことがあるという経験は大きい。一番使い勝手がいい選手として、チームにいたら大きいと思います。どこで使おうかと迷ってしまうほどの選手ですね」
野口氏は6人の名前を挙げたが「素材としてはいい選手が多くいると思うので、次の大会、その次の大会くらいは本当に楽しみです。逆に誰を落とすのか悩む可能性もあります」と語る。一時、プロ野球界には正捕手と呼べるような選手が少なくなっていたが、ここにきて続々と若手が台頭してきている。もちろん、活躍次第ではベテランも候補になるという。
「年齢で区切る必要はないと思います。最近のプロ野球だと、30歳を過ぎても下り坂ではありません。30歳を過ぎても成績が上がっていく選手は多くいます。成績さえ出ていれば、40歳を過ぎていても選ばれていい。それが勝負の世界です」
11月にどの選手が日の丸のユニホームで「扇の要」を務めるのか。野口氏が候補の挙げた選手、そして、名前が挙がらなかった選手たちのプレーにも注目が集まる。
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