毎日30回フルスイングで「プロになれた」スラッガー中村紀洋氏が語る育成論
2017年も各世代で強さを発揮した野球日本代表「侍ジャパン」。トップチームが世界の頂点に返り咲くために、また総合力でトップをキープしていくために、不可欠なのは継続して有望な選手たちを輩出していくこと。それだけにアンダー世代である12歳以下、15歳以下の選手たちへの指導は重要なポイントだ。世界で通用する選手になるために、若い時期に取り組むべきことは何か。NPBで通算404本塁打を放ち、メジャーリーグのロサンゼルス・ドジャースでもプレー。現在は、高校野球部でコーチも務めている中村紀洋氏に語ってもらった。
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世界に通用する打者になるために―スラッガー中村紀洋氏が語る育成論
2017年も各世代で強さを発揮した野球日本代表「侍ジャパン」。世界野球ソフトボール連盟(WBSC)の世界ランキングでも、アメリカなど強豪国を抑えて男女ともに1位を堅持している。トップチームが世界の頂点に返り咲くために、また総合力でトップをキープしていくために、不可欠なのは継続して有望な選手たちを輩出していくこと。それだけにアンダー世代である12歳以下、15歳以下の選手たちへの指導は重要なポイントだ。
世界で通用する選手になるために、若い時期に取り組むべきことは何か。NPBで通算404本塁打を放ち、メジャーリーグのロサンゼルス・ドジャースでもプレー。現在は、高校野球部でコーチも務めている中村紀洋氏に語ってもらった。
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「(世界で活躍するには)まずは国際野球というものに対する慣れが必要ですね。ボールの重さも、ストライクゾーンも変わる。そういった状況の中でこじんまりまとまらずに、プレーしてもらいたいですね。結果は求められるでしょうけど、この年齢の時点で、現状でできることをしっかり試合で出してもらいたい。そういう経験が、いつかプロで侍ジャパンに入るようなことになればプラスになると思います」
――プロ野球選手になるために10代でやるべきことはありますか。
「毎日、バットを握ることです。そしてスイングすること。ミートするんじゃないですよ。思い切って振ることが大事。しっかりバットを振るという基本的なことができていないと、まず試合でいいスイングなんてできるはずがないですから」
――身体ができていない12歳以下、15歳以下という世代にとって思い切り振るというのは難しい部分もありそうですが。
「こじんまりするのはいつでも簡単にできるんですよ。その子たちがそれぞれ現状でしっかり身体を使って思い切って振る。これは日頃の練習、努力が必要ですが、必ず将来に繋がっていくはずです。継続することが大事なんです」
――継続するためには野球を好きになることも大切ですよね。
「そもそも野球を嫌いなら上の世界でも無理ですよ(笑)。ただ、指導者とか、練習のやり方でも変わってきます。闇雲に1000回とか振るのではなく、少なくてもいいからしっかりと身体を使ったスイングを真剣にやることが大事ですね」
毎日欠かさずやっていたフルスイング30回
――中村さんは今も子供たちを指導していますが、育成年代の選手を教えるにあたって最も注意していることは何ですか。
「まず、『できなくて当たり前なんだ』と思ってやることです。これくらいできるだろうと思っても、そんな簡単にできないのが野球なんです。できた時には褒めてあげる。できたとしても、野球というのは1回できたからオッケーではない。できる確率を上げていくことですね」
――できたという事実を重ねるということですね。
「このボール、このコースを10回きたら必ず10回打てるのはプロ。どう思って練習して努力して積み重ねていくかですね」
――ご自身が育成年代の時に大切にしていたことはありますか。
「中途半端だけはしませんでした。守備でもバッティングでもね。人が練習してるからやろうかな、では無理。自分自身にやる気がなければ練習も努力もできないし、変わっていけないと思います。僕は小学3年からリトルリーグで野球を始めて、高校3年生で最後の大会が終わり、プロに入るまで、毎日30回バットを振っていました」
――30回というと回数的には多くはないですよね。
「しっかりと身体全体を使ってフルスイングしたら、そんな1000回とか振れませんから。試合のつもりでベストのスイングを30回やるとしんどいですからね。僕はそれが生きたし、結果的にこのおかげでプロになれたと思っています。休みなしで毎日ですよ。1月1日に初詣とか行ったことなかったですからね」
大切なのは「毎日やること」、フルスイングはなぜ大事なのか?
――プロに入ってもその努力を続けていましたね。
「オフに海外旅行に行っても、バット持参でしたよ。寒い時期に有馬温泉に行った時、その時もバット持参だったんですけどね。表通りでスイングしてたら通行人に不思議な顔で見られたこともありますよ(笑)。まさかプロがこんなところで寒いのにスイングしていると思わないでしょうからね」
――毎日ということが大事ですね。
「そう。毎日ね。指導している子供たちには言っていますよ。結果どうこうじゃない。毎日やることが大切だと。野球だけではなく社会に出ても必要なんです。継続するって本当に難しいですけどね。人間は妥協しますから」
――フルスイングというのはなぜ重要なのか。
「身体を作るという意味でもすごく重要なんです。12歳とか15歳くらいの年代はこれからまだまだ大きくなってくるところですから。ウエートトレーニングでは鍛えられない筋肉というものがあるんです。バットを振ることが仕事になる、それを目指している人がバットを振らないでどうしますか。バットを振る筋肉はバットを振ることで付くんですよ。毎日、コツコツ続けることでいつか芽が出て花が咲く。でも、それがいつか分からない。だから妥協してしまう」
――つまりやり切るということが重要。
「野球を辞めるその時に後悔しないように。プロの世界でもそう。人それぞれですが、プロでもクビになってしまうという時にどう思えるか。僕はやり切ったと思っています。」
◇中村紀洋(なかむら・のりひろ)
1973年7月24日生まれ、44歳。大阪・渋谷高から1991年のドラフト4位で近鉄バファローズ(大阪近鉄バファローズ)に入団。入団1年目に1軍デビューを果たし、高卒新人ながら2本塁打を記録。2000年には39本塁打、110打点で2冠を達成。2001年には2年連続の打点王に輝いた。2005年にはドジャースへ移籍。翌2006年にオリックス・バファローズに入団すると中日ドラゴンズ、東北楽天ゴールデンイーグルス、横浜ベイスターズ(横浜DeNAベイスターズ)と渡り歩いた。ベストナイン5回、ゴールデングラブ賞7回、日本シリーズMVPなどタイトル多数。NPB通算2267試合出場、7890打数2101安打、打率.266、404本塁打、1348打点。現在は高校野球部のコーチも務める。
【了】
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