「世界トップレベルに疑いはない」―山本昌氏が見た2017年「侍ジャパン」の戦い

2017.12.25

野球日本代表「侍ジャパン」のトップチームは2017年、2つの国際大会に挑んだ。3月の「第4回ワールド・ベースボール・クラシック™(WBC)」は、前回大会に続くベスト4。11月の「ENEOS アジア プロ野球チャンピオンシップ2017(アジアCS)」では初代王者に輝いた。50歳までの32年間、現役としてプロ野球の第一線でプレーした“レジェンド”左腕・山本昌氏は「世界トップレベルの野球をやれているということに関しては疑いようがない」と太鼓判を押している。

写真提供=Full-Count

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“レジェンド左腕”山本昌氏はWBCとアジアCSをどう見たのか

 野球日本代表「侍ジャパン」のトップチームは2017年、2つの国際大会に挑んだ。小久保裕紀前監督が率いる「小久保ジャパン」の最大の目標であった3月の「第4回ワールド・ベースボール・クラシック™(WBC)」は、前回大会に続くベスト4。そして、稲葉篤紀新監督が率いる「稲葉ジャパン」の初陣となった11月の「ENEOS アジア プロ野球チャンピオンシップ2017(アジアCS)」では初代王者に輝いた。

 WBCでは世界一奪還はならなかったものの、準決勝の米国戦は1-2の惜敗。決勝でプエルトリコを下し、初制覇を果たした世界一の野球大国相手に互角の戦いを繰り広げ、青木宣親外野手以外は“国内組”で臨んだ大会で日本の底力を見せた。一方、原則24歳以下、入団3年目以内(オーバーエイジ枠3人を含む)という規定が設けられたアジアCSでは決勝で韓国に7-0の完勝。アジアナンバーワンの実力を改めて証明した形だ。

 50歳までの32年間、現役としてプロ野球の第一線でプレーし、通算581試合登板で219勝165敗、防御率3.45の成績を残した“レジェンド”左腕・山本昌氏は「世界トップレベルの野球をやれているということに関しては疑いようがない」と太鼓判を押した。

 WBC準決勝では、日本の絶対的エースとして大会に臨んだ菅野智之投手(読売)が圧巻のピッチングを披露。4回に味方のエラーから失点を喫したものの、6回3安打1失点6奪三振1四球で自責点は「0」の快投だった。以前から、現在メジャーリーグでプレーする投手たちが日本代表に入ったとしても「今の菅野投手なら引けを取らない」と高く評価していた山本氏は、あらためて右腕を絶賛した。

「真っ直ぐも十分通用していましたし、コントロールも素晴らしいものがありました。日本のエースですから、あれくらいのピッチングは(期待通り)、とは思います。最終的に長打でやられてしまったなというところはあります。日本はヒットは出たけど単打、向こうには長打というところで決勝点を取られてしまいました。パワーという面では敵いませんので、ああいうところをうまく絡め取るような野球ができればと。ただ、菅野投手に関しては、素晴らしいピッチングだと思いましたし、彼は世界のどこにいっても通用するということじゃないですか」

 この一戦では不運な形の失点で敗戦投手となったものの、大会を通じて4試合に投げ、11イニングを1失点、防御率0.82という好成績を残した千賀滉大投手(福岡ソフトバンク)についても、“レジェンド”左腕は称賛する。育成契約出身ながら、日本代表、そしてWBCの大会オールスターチーム(ベストナイン)選出と成長を続ける24歳の活躍は「当然の結果」と見ている。

世界一奪還へ、山本昌氏が掲げる“課題”とは

「千賀投手はまだまだ菅野投手に比べれば精度は低いですけども、大きな特徴のあるフォークとスピードのある真っ直ぐがありますので、それが調子よく決まれば、彼も世界中どこにいってもやれるはずですよ。結局、日本のいいピッチャーというのは打者の動体視力ギリギリのボールを投げるので、当然、通用しますよね。人間の限界に近いボールを投げているピッチャーというのは、調子がいい限り通用すると思っています。そういう意味では、千賀投手、菅野投手については、私は当然の結果だと思っていますけどね」

 世界トップクラスの投手力を誇る侍ジャパン。その中でも、エース級の実力を持つピッチャーが調子を崩していない限り、通用しないはずがないという。その上で、山本氏は「小久保監督の元で準備期間があって、しっかりやれていたのではないかなと思いました。世界トップと比べても全く引けを取りませんし、結果的にベスト4ということになりましたけど、勝ってもおかしくない試合でした。小久保監督以下、コーチ、スタッフ、競技関係者みんなが頑張った結果かなと。それはもちろん優勝してほしかったんですけど、世界トップレベルの野球をやれているということに関しては疑いようがないと思っています」と大会を総括した。

 一方で、2大会連続で世界一に届かなかったというのも、また事実。再びWBCで優勝するために必要なのも、投手力であるという。どういうことか。山本氏は、侍ジャパンについて「現状、日本の最高のメンバーでいっているので、課題も何もないと思います」としつつも、頂点に立つためには投手陣のさらなる頑張りが重要との考えを示した。

「結果的にピッチャーが点を取られなければ負けないわけだから、そこはピッチャーの頑張りが絶対に必要です。僕の持論としては、WBCでの打線は開幕前で調子の上がりきっていないところで試合をやりますので、どこの国も同じ(条件)ですけど、普通にやっていればピッチャーの方が仕上がりやすいんですよね。バッターは米国戦のように沈黙する試合も出てきますので、そう考えると、これからもWBCでは、やはり投手力をしっかり上げていったほうが、日本は勝負になるんだろうと思います。打線は素晴らしいメンバーでいったので、その調子が上がる、上がらないはまた別の話なので」

 世界一とも言われる日本の投手力。米国の投手陣を打ち崩せなかったことで、打線の課題に目が行きがちだが、“強み”を磨いていくことを決して忘れてはいけないという。

アジアCSは「意義ある大会」、侍ジャパン強化へ必要な若手の“突き上げ”

 では、稲葉新監督の元で韓国、チャイニーズ・タイペイ代表を破り、初代王者に輝いたアジアCSについてはどう見たのか。原則24歳以下、入団3年目以内(オーバーエイジ枠3人を含む)という規定が設けられた大会について、山本氏は「国を背負って戦うというのは非常に貴重な経験だと思いますし、若い選手はなおさらなので、1つレベルアップするには素晴らしい経験をしたのではないかなと。大会の意義は十二分にあったと思います」と振り返る。大会MVPに輝いた外崎修汰内野手(埼玉西武)、そして投手陣では先発の今永昇太(横浜DeNA)、田口麗斗(読売)ら新たなスター候補が活躍。収穫のある大会となった。

「(シーズンを通して)田口投手は抑えていくコツを掴んだかという感じがします。大崩れしないという意味では。コントロールがいいですよね。低めに決まりますし、高めに浮かない。国際大会はやっぱり長打、一発で決められるのが一番つらいので、自然に投げて低めに行くというのが彼の強みです。あと、バッターの遠いところで勝負するのがうまい。インコースをボールにしたりして、ボールを遠くに見せるのがうまいので、国際試合でも本当に十分に通用するんじゃないかと思いますけど。

 今永選手も素晴らしいんですけども、まだまだ粗さがある。力でいってるので、調子が悪いと捕まることがあります。ただ、球の走り、ストレートで空振りを取れるピッチャーはなかなか少ないので、その辺をしっかりやっていけば、今永投手も十二分に国を代表するピッチャーになれると思いますね」

 自身と同じ2人の先発左腕について、山本氏は称賛と課題の言葉を並べた。そして、攻撃陣を含めて、アジアCSに出場した選手の“突き上げ”が、侍ジャパンが強くなっていくためには必要不可欠だと指摘。そうなることで、大会が開催された「意義」はさらに大きなものになっていくというのだ。

「もちろん、優勝したのは打線の評価もあります。“トップ代表”と言っていいのか分かりませんけど、WBCのような大会で国を代表するということになると、(アジアCSに出場したメンバーから)何人が入れるか難しいところになります。ただ、確実に何人かは“トップ代表”にも入れる選手がいました。この中からどんどん侍ジャパンの“トップ代表”の方に入っていくようじゃないと、レベルアップは望めないかなと思っています。“アンダー”の選手がどんどん上に刺激を与えてほしいなと思いますね」

 世界ベスト4とアジアナンバーワン。今年、「侍ジャパン」トップチームが残した成績には、それぞれ大きな意味があった。これを糧にして、日本がさらにレベルアップしていくことを“レジェンド左腕”は願っている。

【了】

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