初代アジア王者に輝いた若き侍ジャパンに見た光、岩村氏「この先強くなりそうで楽しみ」
稲葉篤紀新監督を迎えて臨んだ最初の国際大会「ENEOSアジアプロ野球チャンピオンシップ2017」で、野球日本代表「侍ジャパン」は無傷の3連勝で優勝を飾った。今回の参加選手は、原則24歳以下、入団3年目以内(オーバーエイジ枠3人を含む)というフレッシュな顔ぶれとなったが、初めて日の丸を背負って戦う選手たちも臆することなく、アジアの強敵・韓国、チャイニーズ・タイペイを寄せ付けない戦いぶりを見せた。
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先発、リリーフともに安定感に優れた投手陣「大きな自信にしていい」
稲葉篤紀新監督を迎えて臨んだ最初の国際大会「ENEOSアジアプロ野球チャンピオンシップ2017」で、野球日本代表「侍ジャパン」は無傷の3連勝で優勝を飾った。今回の参加選手は、原則24歳以下、入団3年目以内(オーバーエイジ枠3人を含む)というフレッシュな顔ぶれとなったが、初めて日の丸を背負って戦う選手たちも臆することなく、アジアの強敵・韓国、チャイニーズ・タイペイを寄せ付けない戦いぶりを見せた。
若武者たちの活きのいいプレースタイルに、第1回、第2回ワールド・ベースボール・クラシック™(WBC)で2連覇に貢献し、現在はBCリーグ福島ホープスで監督を務める岩村明憲氏は「若い世代にいい選手が育っている。この先の日本は非常に強くなりそうで楽しみ」と目を細める。
16日に行われた初戦・韓国戦は、延長10回、4時間29分の死闘の末、8-7で逆転サヨナラ勝利を収め、劇的な白星スタートを切った。第2戦となった18日チャイニーズ・タイペイ戦では先発した今永昇太投手(横浜DeNA)が6回を投げて3安打12奪三振無失点の快投を披露。打っては今大会MVPに輝いた外崎修汰内野手(埼玉西武)が右翼へ力強いホームランを運ぶなど8-2で圧勝した。19日の決勝では再び韓国と対戦し、投打のかみ合った試合運びで7-0の完封勝ち。いろいろな勝ち方ができることを証明した日本だが、岩村氏は「投手陣が素晴らしかった」と称える。
「18日の今永投手、決勝の田口(麗斗・読売)投手と2人の先発左腕の快投は見事。いくら東京ドームのマウンドを知っているとしても、国際大会ともなれば違った緊張感も生まれてきます。その中でまったく崩れることなく試合を作るのは、なかなかできることではありません。
リリーフ陣も頼りがいがありましたね。初戦と決勝に登板した山﨑(康晃・横浜DeNA)投手は、さすがの落ち着きぶりでした。石崎(剛・阪神)投手や野田(昇吾・埼玉西武)投手もいい働きをしていた。失点した投手もいますが、それも含めていい経験。アジアの大会とは言え、日本の投手陣がこれだけ通用したという事実は、大きな自信にしていいと思います」
岩村氏が称える上林の佇まい「かっこいいですよね。職人気質のようなものを感じる」
大会MVPを受賞したのは、3戦出場で打率.462、1本塁打、4打点、1盗塁の外崎だった。プロ3年目、24歳の外崎が、埼玉西武で外野のレギュラーに定着したのは今季から。内外野ともに守れる器用さもさながら、思い切りのよさの中にも広角に打ち分けられる打撃技術が評価され、初めて侍ジャパン入りした。大会中も臆することなくMVPの活躍。「飛躍の年をいい形で締めくくれましたね」と岩村氏は話す。
「外崎選手のよさは、何よりも思い切りのいいスイング。チャイニーズ・タイペイ戦では右打者ながら右翼へ力強いホームランを放ちました。決勝でも、第2打席は外角の球を逆らわずに右翼への先制タイムリーとし、第3打席は内角球をうまくさばいて2点目を挙げました。レフト前安打は『詰まってもいい』と割り切りながら、右手でしっかり押し込めたからこそ生まれたヒット。ボールの内側をしっかり叩ける好打者ですね」
もう1人、岩村氏が絶賛するのが上林誠知外野手(福岡ソフトバンク)だ。「打てるし走れるし守れるし。文字通り3拍子揃った選手」と高く評価するが、何よりも動じない佇まいに感心したようだ。
「かっこいいですよね。初戦の韓国戦でホームランを打っても大喜びしなかった。『当然の仕事をしたまで』という雰囲気で淡々とベースを回る姿から、職人気質のようなものを感じました。私も現役時代はそうありたいと心掛けていましたが、なかなか大舞台で感情の起伏を隠すことは難しい。あの若さで大したものですよ。
上林選手は今回5番を任されていましたが、3番に置いても面白い。足があるので、どんどん仕掛けることができる。外野定位置の競争が激しいソフトバンクで、しっかり揉まれて鍛えられているんでしょう。
外崎選手と上林選手の2人は、24歳以下の世代で中心になることはもちろん、フル代表でも十分に戦える逸材です。この2人が今回の経験を自信にして、来シーズンにどう飛躍するのか。そこが楽しみです」
東京ヤクルト時代の先輩、稲葉監督に祝福メッセージ「おめでとうございます」
初めての陣頭指揮ながら、無事にチームを優勝へ導いた稲葉監督には「おめでとうございます、の言葉しかありません」と話す。監督歴は岩村氏の方が長いが、稲葉監督は東京ヤクルト時代に背中を追いかけた先輩。自身の経験と重ねて、今大会への思いを推察する。
「監督として初めての試合は、とにかく不安しかありませんでした。誰も味方がいないんじゃないか、と思うくらいの緊張を味わった。おそらく稲葉監督も初戦は不安しかなかったと思います。その状況下でも、初戦から選手を信頼した起用法を続けたことは素晴らしかった。その結果、投手も野手も自分らしさを存分に発揮できたんだと思います。
来年の3月に侍ジャパンはオーストラリアと強化試合を2試合行うそうですが、それも個人的には若手中心の編成にしてもらいたいですね。若手に経験を積ませる意味もありますが、今回も侍ジャパンのメンバーに選ばれて注目度を高めた選手がたくさんいる。全国に名を広めた選手の動向を、ファンはレギュラーシーズンも追い続けるでしょう。侍ジャパンを含めた日本球界全体を盛り上げる意味でも、定期的に強化合宿を組み、積極的に若手を起用することが大事だと思います」
侍ジャパンは来年3月3日、4日にオーストラリア代表を迎え、ナゴヤドームと京セラドームで強化試合を行う。2019年のプレミア12、2020年の東京オリンピック、そして2021年のWBCに向け、侍ジャパンがどんな成長を遂げるのか。岩村氏をはじめ日本中が大きな期待を寄せる。
【了】
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