楽天・村林一輝が初の侍ジャパンで発揮した“積極性” 増えた引き出しが「全部活きています」
東北楽天の村林一輝内野手は、2024年の第3回WBSCプレミア12で野球日本代表「侍ジャパン」初選出を果たした。追加招集に「ビックリしました」と率直な思いを明かすが、各球団から集ったチームメートたちに積極的に質問をぶつけて貴重な経験を得た。

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秋季練習中の追加招集に「何の電話だろうと思ったら『え、ホンマ!?』」
東北楽天の村林一輝内野手は、2024年の第3回WBSCプレミア12で野球日本代表「侍ジャパン」初選出を果たした。追加招集に「ビックリしました」と率直な思いを明かすが、各球団から集ったチームメートたちに積極的に質問をぶつけて貴重な経験を得た。
すでに2024シーズンを終え、秋季練習に入っている時だった。「何の電話だろうと思ったら代表入りで『え、ホンマ!?』って思いました」。プロ入り前、いつかは……と夢見ていた侍ジャパンのトップチームだが、実際にプロでプレーすると「レベルの高さを感じて到底目指せるところではない」と遠ざかった場所でもあった。それでも「まずは自分のチームで試合に出ることを目標として取り組んでいました」という言葉通り、飛躍の1年を経て吉報が届いた。
しかし、代表入りにつながった昨季の手応えは「あまりないです」という。2015年ドラフト7位で大塚高(大阪)からプロ入りして、2024年は自身初の規定打席に到達。遊撃のレギュラーとして139試合で打率.241、6本塁打、50打点だった。「大きな怪我なく試合に出られたのは自信になるところではありましたけど、成績は物足りない。走攻守全てにおいてもっとできることがある、今年(2025年)に対しての課題がまた、たくさん見つかったシーズンでした」と振り返った。
プレミア12で日の丸のユニホームに袖を通したのは、そんな時だった。最初の出番は、オープニングラウンド初戦の豪州戦。9回から二塁の守備に就いた。「シーズンとはまた違った緊張感がありました。ただ出番がどこであろうと、全力を尽くそうと思って取り組んでいたので」。独特な空気感を味わいながらも、自分の仕事を全うすることだけに注力した。
感謝する井端監督の言葉「コミュニケーションがありがたかったです」
日本は4戦目のキューバ戦でスーパーラウンド進出を決めた。翌日のドミニカ共和国戦では「1番・二塁」で初めてのスタメン出場の機会が巡ってきた。硬くなりそうな村林選手の心を軽くしたのは、井端弘和監督だった。
「最初に練習に合流した時から『しっかり準備して』という言葉をいただいていたので、そういうコミュニケーションがありがたかったです。井端監督のためにも何とか勝利に貢献したいと思っていました。打てなかった(6打数無安打)ですけど、内容としては悪くなくて、積極的にいこうと思っていたので。もちろんヒットは打ちたかったですけど、チームが勝てたのでいいかなと思いました」
とはいえ、“6の0”を気にしていなかったわけがない。スーパーラウンド3戦目のチャイニーズ・タイペイ戦で再び「1番・二塁」で先発機会を掴むと、いきなり先頭打者弾を放った。自身も驚いたという一発を振り返り「ヒットが出ていないのがチームで多分、僕だけだったので。意識はしますよね。しないって思っても、しちゃいますよ。だから正直ホッとした部分はすごくありました」と本音を吐露した。
この試合、相手先発が直前に交代となるイレギュラーもあった。そんな中で、1番打者がいきなり本塁打を放ったのは大きかったと言えるだろう。「井端監督から『消極的になる必要はない』と言ってもらって、初めての舞台でしたし、すごく助かりました。せっかく1番で使ってもらったので勢いをもたらすことができればと思っていて、結果的に本塁打になった感じです」と指揮官のアドバイスに結果で応えた。
大会通算打率.182に「何もしてない」も…「得られるもの大きかった」
大会を通じて4試合で打率.182(11打数2安打)、1打点、2三振にとどまり、「何もしていないです」と首を横に振る一方で、過ごした時間はかけがえのないものとなった。ゴールデン・グラブ賞7度の名手・源田壮亮内野手(埼玉西武)とは守備談義を交わし、紅林弘太郎内野手(オリックス)とは食事に出掛けて、年下ながら多くのことを吸収した。栗原陵矢内野手(福岡ソフトバンク)や森下翔太外野手(阪神)、牧秀悟内野手(横浜DeNA)らには打撃の質問をぶつけた。超積極的な姿勢で貪欲に動き回った。
「各球団で活躍している選手の話を聞けるのがすごく楽しかったですし、そういう機会はあまりないので、得られるものが大きかったです。聞きたいことがあって、自分が上手くなるための手段だったら(自分から)全然行けます。個人のレベルが高いと思いましたし、野球人生において貴重な経験をさせてもらってすごく感謝しています。僕自身、レベルアップしないといけないなというのを改めて思いました」
それぞれの選手が持つ“理論”は、村林選手の引き出しを増やした。「何がとは言えないですが、全部今季に活きていますよ」と笑った通り、プロ10年目を迎えた今季は持ち前の守備力だけでなく、首位打者争いを繰り広げるほどに打撃面でも輝きを放っている。
27歳は控えめながらも、胸に秘めた思いを明かす。「日本のマークを背負って戦うのは特別なこと。もちろん今後選んでいただけるなら光栄なことです。でも、まずは自分のスキルを挙げることが野球選手として一番大事なので、その先にそういうものがあるのかなと思っています」。“足りない部分”も痛感させられた初の侍ジャパンを経て、村林選手はさらに大きくなっていく。
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