松田宣浩氏が語るWBCの経験 忘れぬ痛恨のミス…伝える国際大会の怖さ「甘えがあった 」
NPB通算1832安打、301本塁打をマークした松田宣浩氏は、今年3月から野球日本代表「侍ジャパン」トップチームの野手総合コーチに就任した。2013年、2017年には「WORLD BASEBALL CLASSIC™」(以下WBC)、2015年、2019年には「WBSCプレミア12」(以下プレミア12)に出場するなど、国際大会経験豊かな“熱男”が指導者として、チームを支える。

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侍ジャパン初大会では6打数無安打「緊張したのは覚えています」
NPB通算1832安打、301本塁打をマークした松田宣浩氏は、今年3月から野球日本代表「侍ジャパン」トップチームの野手総合コーチに就任した。2013年、2017年には「WORLD BASEBALL CLASSIC™」(以下WBC)、2015年、2019年には「WBSCプレミア12」(以下プレミア12)に出場するなど、国際大会経験豊かな“熱男”が指導者として、チームを支える。
福岡ソフトバンクで17年、読売で1年、18年間のプロ生活を全てNPBで過ごした。そんな松田氏にとって国際大会はメジャーリーガーや他国の選手と戦える唯一の舞台だった。
「常に侍ジャパンに選ばれたいという思いでした。どの大会も、自分の中ではとてもモチベーションが上がるもの。日の丸を背負うことに関してビビることもなかったですし、とにかく日の丸を背負って野球がしたい。そういった思いにさせてくれるのが侍ジャパンでした」
トップチームに初選出されたのは2012年のこと。WBC前の強化試合、侍ジャパンマッチ2012「日本代表 VS キューバ代表」だった。2試合とも「5番・三塁」で出場したが、6打数無安打。「自分のプレーがなかなかできていなかったのもありますので、緊張したのは覚えています」と振り返る。
国際大会で大切にした「切り替え」と「大会初戦」
好結果が残せなかったトップチーム初出場で痛感したのは、切り替えの大切さだった。長いシーズンと違って、短期決戦は1打席、1打席が勝負になる。
「内川(聖一)さんともよく話していたのですが、短期決戦なので前の打席が凡打であっても、次の打席で打てばヒーローになる。だから、1打席目に三振しても、2打席目にホームランを打てば、日本代表にとって大きな意味を持つことになる。1打席目が凡打だったからと、2打席目、3打席目もくよくよしていると、結果的に自分の成績も悪いし、チームも勝てない」
合わせて大事にしたのは初戦だった。2015年のプレミア12では、2打数2安打2四球で4打席全てにおいて出塁。2017年のWBCでは、1次ラウンドのキューバ戦で3ラン含む4安打でチームを盛り上げた。
「常に初戦。初戦で2安打、3安打を打つと気持ちも楽になる。『よし、この大会はいけるぞ』と、2試合目、3試合目もそのままの調子でいくことができますね。最初からどんどん打っていくと気持ちが楽というのは、国際大会ならではなのかなと思います」
松田氏が忘れられない苦い思い出…「本当に申し訳なかった」
そんな松田氏にとって、苦く、忘れられない思い出がある。2017年WBCの準決勝・米国戦。1-1の同点で迎えた8回1死二、三塁の場面だった。アダム・ジョーンズ外野手の打球はボテボテのゴロ。それを三塁手の松田氏がファンブル。一塁で打者走者をアウトにしたものの、結果的に本塁でアウトにできず、勝ち越し点を献上した。これが決勝点となり、最後は松田氏が空振り三振に倒れ、試合終了となった。
「あれはもう自分のファンブルで負けました。本当に準備不足が出てしまいました。千賀(滉大)投手が投げていて、バッターのアダム・ジョーンズ選手が初球からフォークを打ってこないのではないか、1球くらい見てから勝負をかけてくるのではないかと思ったんです。ただ、1球目から振って、サードへ飛んで来たので。正直、同じようなところにもう1回来たら、ホームでアウトにできる自信は100パーセントあるんですよ。でも、準備不足の中でプレーしていたので、あれは本当に申し訳なかったなと思います」
読みが外れたことに加え、ドジャー・スタジアムの慣れない天然芝。チームは2大会ぶりの決勝進出を逃した。大会後、何度もVTRを見返し、何がダメだったのか、何が普段と違っていたのか――。自問自答を繰り返した。
「ミスを忘れたらいい、と言う人もいますが、忘れるだけでは責任感を持つことはできないと思います。日本代表ですから、国民の皆さんも、聞いた時に納得してくれない。ホークスに帰ってきてからもファンブルした映像を何回も見ました。映像であの場面を振り返ると、準備不足というか、自分の甘えがあったと思いますね」
コーチとして自らの経験を選手に伝授
国際大会では、1つのプレーでヒーローになることもあれば、1つのプレーが命取りになることもある。その怖さを松田氏はよく知っている。
「日本ラウンドは人工芝ですけど、海外に行ったら芝生が多い。なかなか日本のプレーヤーは芝生でのプレー機会はないですし、そこの対応も含めて、僕の経験としては伝えられることはあるかなと思います」
2026年のWBC開催まで、1年を切った。悔しい思いはしてほしくないし、したくない。コーチに立場を変えたWBCで、世界一を奪いにいく。
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