ライバルにも「出し惜しみはしません」 横浜高エース・奥村頼人が漂わせる懐の深さ
昨秋の明治神宮野球大会、今年3月の選抜高等学校野球大会で優勝し、今夏の全国高等学校野球選手権大会で“全国大会3冠”を狙う神奈川・横浜高のエース左腕、奥村頼人(らいと)投手(3年)。4月には奈良県で行われた野球日本代表「侍ジャパン」U-18日本代表候補選手強化合宿に参加し、さらなる飛躍へのヒントをつかんだようだ。

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4月に奈良県で行われた「侍ジャパンU-18日本代表候補選手強化合宿」に参加
昨秋の明治神宮野球大会、今年3月の選抜高等学校野球大会で優勝し、今夏の全国高等学校野球選手権大会で“全国大会3冠”を狙う神奈川・横浜高のエース左腕、奥村頼人(らいと)投手(3年)。4月には奈良県で行われた野球日本代表「侍ジャパン」U-18日本代表候補選手強化合宿に参加し、さらなる飛躍へのヒントをつかんだようだ。
奥村投手にとって「侍ジャパン」に呼ばれたのは、各カテゴリーを通して初めての経験だった。「全国のレベルの高い選手たちとプレーできて楽しかったです。選抜大会が終わったばかりで疲れもあったのですが、いろいろな選手のいいところを吸収するつもりで行きました」と頷く。
「自分たちの世代には、左の好投手がたくさんいます。いろいろ聞きましたし、自分も聞かれれば教えました」と語る通り、日本代表候補合宿に招集された投手18人(不参加となった2人を含む)のうち、半数の9人が左腕だった。奥村投手自身をはじめ、昨夏の甲子園大会優勝に貢献した京都国際高・西村一毅投手(3年)、高知・明徳義塾高の池崎安侍朗投手(3年)ら、豪華な顔ぶれが揃っていた。
「細かく言えば10種類くらいある」チェンジアップが最強の武器
今夏の甲子園大会終了後、9月に沖縄県で開催される「ラグザス presents 第32回 WBSC U-18 野球ワールドカップ」に日本代表として出場することも、新たに目標の1つとなった。
最速146キロのストレート、スライダー、カーブを操るが、最強の武器は「縦に落ちるもの、横に落ちるもの、タイミングをずらすものなど、細かく言えば10種類くらいあります」というチェンジアップだろう。
捕手の出すチェンジアップのサインは1つだが、球速も117キロから126キロまで様々。「(横浜高の正捕手)駒橋(優樹捕手・3年)でないと、捕れないかもしれません。自分が日本代表に選んでいただいたとしても、駒橋以外の捕手だと、ちょっと苦労すると思います」と心配するほどだ。かけがえのない“相棒”である駒橋捕手からは「お前は一番組みづらいけれど、一番楽しい投手」と言われているという。
選抜大会入場行進直前、早実のエースから「チェンジアップを教えて」と…
チェンジアップをめぐっては、微笑ましいエピソードがある。今春の選抜大会の開会式。入場行進前の待機所で、たまたま隣の列に並んだ東京・早稲田実業高のエース、中村心大投手(3年)と初めて言葉を交わし、「チェンジアップの投げ方を教えて」と頼まれると、快く伝授した。そして中村投手の急ごしらえのチェンジアップは、大会中に想像を絶する威力を発揮した。奥村投手は「話してみたら、すごく波長が合いました。チェンジアップを教えたら、すぐ理解して試合でも投げてくれていたので、感性のある投手だと思いました」と振り返る。
日本代表候補合宿では、その中村投手とも再会。「選抜大会の時には、タイミングをずらす系のチェンジアップしか教えていなかったので、合宿ではもう少し落差のあるチェンジアップも教えました。夏の大会では使ってくれるのではないかと思います」と明かす。
今後、早稲田実業高と対戦し、中村投手のチェンジアップに切り切り舞いさせられる可能性も、ないとは言い切れないが、「伝家の宝刀というわけではないですし、もしそれで三振に取られたら、いい球ということになるので、それはそれでうれしいです。試合には絶対勝ちますけれど……」と屈託のない笑顔を浮かべる。
「もちろん配球などは教えませんが、(チェンジアップに関しては)チームの情報とは違い、あくまで自分が試しながら磨いてきた感覚の話なので、どうぞ、という感じで出し惜しみはしません」と語る口調から、スケールの大きな野球観がうかがえた。
U-18日本代表候補選手強化合宿では「逆に自分も、他の投手からカーブとか、スライダーとか、いろいろ教えてもらいました。『いいのかな?』と少し思いましたが、誰も隠していなかったです」と笑う。「教わったものには、自分に合うものと合わないものがあると思いますが、いずれにせよ、自分の引き出しが増え、将来誰かに教える立場になった時に役立つと思います」と充実感を漂わせる。
「頼人」という名前に込められた3つの意味…父はかつて右翼手
中学卒業までは、滋賀県彦根市で生まれ育った。「頼人(らいと)」という名前には、3つの意味が込められている。「父(倫成さん)が滋賀の伊香高校、国士舘大学で野球をやっていた時のポジションがライト(right)だったこと。明るい(light)人間になってほしい、そして頼られる人になってほしい、という意味だそうです」と説明する。
「将来的には、小さい頃から憧れていた侍ジャパンのトップチームに入って戦いたいです」とキッパリ。まさに、日本中から期待され、チームメート全員から頼りにされる選手になりそうな人材だ。
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