もう1つの“井端ジャパン”が快挙 U-15代表がワールドカップで悲願の初優勝

2024.9.2

もう1つの“井端ジャパン”が世界一の快挙を達成した。野球日本代表「侍ジャパン」トップチームを率いる井端弘和監督は、たっての希望でU-15代表の監督を兼任。8月16日からコロンビア・バランキージャで行われた「第6回 WBSC U-15ワールドカップ」に臨み、全国から選ばれた20選手とともに悲願の初優勝を飾った。

写真提供=Getty Images

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全国から選ばれた精鋭20選手がコロンビアで熱戦を展開

 もう1つの“井端ジャパン”が世界一の快挙を達成した。野球日本代表「侍ジャパン」トップチームを率いる井端弘和監督は、たっての希望でU-15代表の監督を兼任。8月16日からコロンビア・バランキージャで行われた「第6回 WBSC U-15ワールドカップ」に臨み、全国から選ばれた20選手とともに悲願の初優勝を飾った。

 大会に先駆け、4月から日本リトルシニア中学硬式野球協会、日本少年野球連盟(ボーイズリーグ)、全日本少年硬式野球連盟(ヤングリーグ)、日本ポニーベースボール協会、九州硬式少年野球協会(フレッシュリーグ)に所属する選手を対象とし、「侍ジャパンU-15代表 全日本合同トライアウト ~デジタルチャレンジ~」と題した代表選手公募を実施。6月22日と7月6日にはデジタルチャレンジを通過した40人の最終トライアウトを行い、精鋭20人を選出した。

「バントをしない野球」でオープニングラウンドは5戦全勝

 8月10日から千葉県内で行われた直前合宿では、今春の選抜高等学校野球大会でベスト4入りした中央学院高、昨年は春夏連続で甲子園出場を果たした専修大学松戸高との交流戦に臨み、高校生の胸を借りた。初優勝に向けて絆を強めたチームは13日に日本を出発。30時間以上を要する大移動で、開催地・コロンビアを目指した。

 現地16日から始まったオープニングラウンドで日本は、ドミニカ共和国、プエルトリコ、コロンビア、イタリア、グアムと同じグループAに。初戦のドミニカ共和国戦は乱打戦に打ち勝ち、第2戦ではイタリアを延長タイブレークで下し、第5戦のプエルトリコ戦は2点と小差での勝利となったが、投打のかみ合った試合運びを披露し、5戦全勝で1位通過を決めた。

 U-12代表を率いた時から井端監督が育成年代で掲げるのが「バントをしない野球」だ。打席でしっかりとバットを振るよう教えられた選手たちは、それに体現するかのように5試合で計52点を記録。勢いに乗ってスーパーラウンドへ駒を進めた。

あと1アウトが遠かったチャイニーズ・タイペイ戦

 スーパーラウンドではグループBを上位通過したチャイニーズ・タイペイ、ニカラグア、メキシコと対戦。その中でも大きな壁となって立ちはだかったのが、現地22日に対戦したチャイニーズ・タイペイだった。グループBを首位通過したチャイニーズ・タイペイを相手に先発マウンドに上がったのは林将輝投手(日高リトルシニア)。走者を出しながらも4回2/3を無失点と好投した。

 打線は3回1死満塁の絶好機で、川上慧内野手(明石ボーイズ)の詰まった当たりを二塁手が悪送球する間に2点を先制。5回には新井悠河内野手(藤岡ボーイズ)と川上選手の連打でチャンスを呼び込み、相手失策なども絡んで2点を追加し、リードを4点に広げる。

 だが、6回からマウンドに上がった太田蓮投手(京都リトルシニア)が押し出し四球で1点を失うと、7回には2死から安打や四死球、失策などで1点差。2死満塁で継投した戸倉光揮投手(狭山西武ボーイズ)が右翼への三塁打を浴び、ついには4-6と逆転を許した。その裏の攻撃で1点を返したが追いつかず、日本は悔しい黒星を喫した。

 あと1アウトが遠かった敗戦から学びを得た日本は、メキシコに6-1、グアムに7-2と快勝し、4勝1敗で決勝に進出。同じく4勝1敗のプエルトリコと頂点を競うことになった。


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先制されても、再逆転されても、諦めずに掴んだ初優勝

 決勝で先発マウンドを任された林投手は初回、無死満塁から犠飛で1点先制を許す。だが、その裏の攻撃で日本は新井選手の右三塁打ですぐさま同点に。2回にも大宮翔内野手(東北楽天リトルシニア)のタイムリーなどで2点を勝ち越した。3回に林投手は再び無死満塁から押し出し四球などで3失点。再逆転を許して降板したが、2番手の戸倉投手が後続を封じ、3-4で3回裏の攻撃を迎えた。

 先制されても、再逆転されても、諦めないのが侍ジャパンだ。3回裏、無死一塁から岡田良太外野手(熊本泗水ボーイズ)が右翼へ三塁打を放ち、すぐさま同点に追いつくと、1死後に丹羽裕聖内野手(愛知尾州ボーイズ)の右前適時打で逆転に成功。4回には中島齊志外野手(飯塚ボーイズ)が右翼線へ2点タイムリーとなる三塁打を運び、リードを3点に広げた。

 5回に1点を返され、2点リードで迎えた6回、日本は2死二、三塁のピンチを招く。ここで打球を中堅に運ばれて1点差となり、なおも二塁走者が本塁を目指したが、中堅を守る小久保颯弥外野手(愛知名港ボーイズ)の好返球を中嶋蒼空捕手(佐倉シニア)がうまく捕球してタッチアウト。日本は窮地を脱した。

 7回にも日本は1死一、二塁と逆転の走者を背負ったが、好守も手伝って1点リードを守り抜き、悲願の初優勝を掴み取った。優勝の瞬間、マウンド上には歓喜の輪が生まれ、激戦を戦い終えた20人の選手には最高の笑顔が浮かんだ。

攻守に活躍した川上が大会MVP、最優秀守備選手賞、ベストナインを受賞

 大会MVPに選ばれたのは、打率.414、7打点を記録した川上選手。最優秀守備選手賞とベストナイン(遊撃手)にも輝き、文字通り攻守で優勝に貢献した。首位打者は岡田選手(.529)、本塁打王は福井那留選手(1本)、ベストナイン(三塁手)は新井選手が受賞。チームの初優勝に花を添えた。

 侍ジャパンが誇る縦縞のユニホームに袖を通し、異国の地で戦い抜いたU-15代表選手たち。短期間でチームの絆を深め、互いをカバーし合いながら優勝を掴んだ経験は、この先に広がる野球人生に大きなプラスとなるはずだ。そして、11月に「ラグザス presents 第3回WBSCプレミア12」を控える井端監督にとっても、背中を押される優勝となったことだろう。11月にはトップチームが優勝し、“井端ジャパン”で2冠を飾りたい。

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