人生を変えた驚きの“代表選出” 愛知工業大・中村優斗を成長させた特別な経験

2024.8.5

驚異の11連勝で、7月に欧州で開催された2大会で優勝を果たした野球日本代表「侍ジャパン」大学代表。14日間で11試合を戦う過密日程にも関わらず、無敗で日本の強さを世界に示した。日本野球の将来を担う逸材が揃う中、投手陣を牽引したのが愛知工業大の中村優斗投手だった。海外で経験した14日間を「日本代表のプレッシャーを感じて緊張もありましたが、いい経験ができました」と振り返る。

写真提供=Getty Images

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代表初選出がトップチーム「『本当ですか?』と何度も確認しました」

 驚異の11連勝で、7月に欧州で開催された2大会で優勝を果たした野球日本代表「侍ジャパン」大学代表。14日間で11試合を戦う過密日程にも関わらず、無敗で日本の強さを世界に示した。日本野球の将来を担う逸材が揃う中、投手陣を牽引したのが愛知工業大の中村優斗投手だった。海外で経験した14日間を「日本代表のプレッシャーを感じて緊張もありましたが、いい経験ができました」と振り返る。

 初めて代表ユニホームに袖を通したのは、3月6、7日に行われた「カーネクスト 侍ジャパンシリーズ2024 日本vs欧州代表」。代表経験がなければ全国大会の経験もない右腕のトップチーム抜擢は、大きな注目を集めた。「選出の話をいただいた時はびっくりしましたし、『本当ですか?』と何度も確認しました」と本人も驚きの選出だった。

 出番は7日の2戦目に巡ってきた。3回からマウンドに上がると、1回を1奪三振無失点。「かなり緊張しましたが、初球に155キロが出たことで『いける』という手応えがあり、緊張も吹っ飛びました」と話す。2人目の打者には自己最速タイの157キロをマークするなど、憧れだった代表ユニホームを身にまとい、力で相手を圧倒した。

 鮮烈の代表デビューから約4か月。欧州で開催された「第43回プラハベースボールウィーク」「第31回ハーレムベースボールウィーク」の2大会で、中村投手は先発、抑えとフル回転の活躍を見せ、両大会を無敗で制する“完全優勝”に貢献した。

プラハでは日本代表の抑えに君臨、2試合で8奪三振の快投

 7月6日からチェコで行われた「第43回プラハベースボールウィーク」では、2戦目と決勝で対戦したチャイニーズ・タイペイ戦に登板。2試合ともに8回と9回の2イニングを任され、いずれも4奪三振無失点の完璧な投球で日本を勝利に導いた。

「3月にトップチームに選ばれ貴重な経験をさせてもらったので、その経験を大学代表チームにも還元し、この大会は自分が引っ張っていくんだという気持ちを持って臨みました」

 持ち味のストレートは常時150キロを越え、スライダーとフォークの切れ味も抜群。緊迫した場面での登板にも動じることなく、堂々としたマウンドさばきを見せた。大会MVPには同じくトップチームを経験した西川史礁外野手(青山学院大)が選ばれたが、中村投手も遜色ない活躍ぶり。「点数をつけるなら90点。自分らしい投球ができました」と手応えを感じた登板だった。

驚異の11連勝につながったハーレムでのスペイン戦

 7月12日からはオランダ・ハーレムに場所を移し、「第31回ハーレムベースボールウィーク」に臨んだ。初戦の米国戦に9-5で勝利した日本は、2戦目に2023年欧州選手権覇者のスペインと対戦した。3回に3点を先制され追う展開となったが、6回に同点に追いつくと7回に勝ち越し。1点リードの8回途中から中村投手がマウンドに上がった。

 8回は無失点で切り抜けるも、9回に2安打を浴びて1死一、三塁のピンチを迎えた。「ハーレムの大会は、球が指に馴染まず苦労しました。(初登板のスペイン戦は)何度もやばいと思いましたが、絶対抑えるんだという強い気持ちを持って1球1球大切に投げ込みました」と集中力を高めた。

 結果は遊撃ゴロで併殺に仕留め、試合終了。劣勢をひっくり返し、1点を守り抜いての勝利だっただけに、チームの結束もより高まった。

 そのまま勝ち進んだ日本は、決勝で再び米国と対戦。先発としてマウンドに上がった中村投手は4失点を喫したものの、米国の強打者相手に5回で8奪三振。力強い速球を武器に“日本のエース”の存在感を見せた。

 ハーレムでは毎晩、チームメートとコーヒーを飲みながらその日の反省や翌日の展望を話すのがルーティンとなっていた。「4年生の投手リレーで決勝を勝てたのが嬉しかったです。海外のどのチームよりも結束力は高かったと思います」。日本ならではの“団結力”も2大会制覇の要因の1つだった。


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グラブに刻んだ「らしくあれ」 プロ入りを目指して「1つ1つ壁をクリア」

 諫早農業高(長崎)時代は無名の存在だったが、愛知工業大に進学後、着実に成長を遂げてきた。3月のトップチームを経て、7月には大学代表として海外で貴重な経験を積んだことで、さらなる飛躍が期待される。

「毎日野球のことだけを考えて、トレーニングも欠かさずやっているので、その積み重ねが結果に結びついているのかなと感じています」と、常に向上心を持って野球に取り組む姿勢も逸材右腕の魅力だ。

 今後はプロ入り、そしてその先にはトップチームの一員として「ワールド・ベースボール・クラシック™(WBC)」での活躍にも期待が高まる。ただ本人は「WBCは手が届かない場所にあるのが分かるので、今は目標にできていません。まずは目の前のことを1つ1つ。プロに入って活躍することが今の目標です」と冷静に現状を見据えている。

 グラブに刻んでいる言葉は「らしくあれ」。周囲の声に惑わされることなく、自分がやってきたことを試合でぶつける。マウンドではそれを常に意識して、打者と対峙している。「試合では自分がやってきたことを出すだけ。1つ1つ壁をクリアし、いつかは日本を代表する選手になりたいです」。150キロを超える力強い速球を武器に、成長著しい右腕がどんな未来を見せてくれるか楽しみだ。

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写真提供=Full-Count、Getty Images

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