2024年プレミア12は「ステップとして有意義に」井端弘和監督が見据える未来

2023.12.23

2024年11月に予定される「ラグザスpresents 第3回WBSCプレミア12」(プレミア12)で連覇を目指す野球日本代表「侍ジャパン」。10月からトップチームを率いる井端弘和監督は、初陣となった11月の「カーネクスト アジアプロ野球チャンピオンシップ2023」(アジチャン)で全勝優勝を飾る好発進を切った。

写真提供=Full-Count

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井端ジャパンの初陣を飾ったアジチャン2連覇

 2024年11月に予定される「ラグザスpresents 第3回WBSCプレミア12」(プレミア12)で連覇を目指す野球日本代表「侍ジャパン」。10月からトップチームを率いる井端弘和監督は、初陣となった11月の「カーネクスト アジアプロ野球チャンピオンシップ2023」(アジチャン)で全勝優勝を飾る好発進を切った。

 指揮官は今、2024年を迎えるにあたり、プレミア12はもちろん、その先に控える2026年「第6回ワールド・ベースボール・クラシック™」(WBC)や2028年のロサンゼルスまで視界に入れ、思考を巡らせている。

 11月のアジチャンでは新人監督とは思えない度胸満点の采配を随所に見せた。圧巻だったのは、韓国と戦った決勝戦だ。

 2-2の同点で9回を終え、試合はタイブレーク方式による延長戦にもつれ込んだ。韓国に1点を奪われた後の10回裏。無死二塁から始まった攻撃で、井端監督は先頭打者として3番・森下翔太外野手(阪神)に代わって古賀悠斗捕手(埼玉西武)を起用。大会を通じて打率.455(11打数5安打)と絶好調だった森下選手の打撃ではなく、古賀選手のバントに懸けた。

 勝敗を左右しかねないプレッシャーのかかる場面。古賀選手が初球で送りバントを決めると、坂倉将吾捕手(広島東洋)の同点中犠飛、門脇誠内野手(読売)のサヨナラ打に繋がり、日本は見事に優勝を手に入れた。

優勝をたぐり寄せたバントに込められた周到な準備

 実は井端監督はこの重大な局面を想定し、周到に準備をしていたという。直前に行われた侍ジャパン宮崎秋季キャンプでのこと。指揮官は古賀選手に「タイブレークでの代打バントあるよ」と声を掛け続けていた。

「タイブレークがあることは分かっていたので、もし代打でバントをさせるなら誰に託そうかなと、キャンプ初日から色々な選手の顔を窺い、シーズン中の成績も調べていました。一番確率が高そうなのが古賀選手でした」と明かす。「本人は最初、冗談なのかと受け止めていたようですが、毎日言い続けた結果『ひょっとしたら』と思ったようです。途中からバント練習に真剣に取り組んでいました」と笑う。

「土壇場で突然『代打でバントをしてこい』と命じるのではなく、2週間くらい心の準備をする時間があったので、うまく誘導できたかなと思います。僕もあの場面で迷わずにいけました」

 指揮官自身、準備の大切さを痛感した体験にもなったようだ。


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2024年プレミア12はその先の未来を見据えたメンバー選考で

 24歳以下または入団3年目以内の選手が中心メンバーとなったアジチャンに対し、第3回プレミア12はいよいよ年齢制限のない“フル代表”で戦うことになる。しかし、井端監督の視線は直近のプレミア12にとどまらず、「3年後のWBCはもちろん、その先にはロサンゼルスの予選や本番があるので、もう5年後を見据えていかなければならないと思います」と言う。

 その上で「3年後、5年後にはアジアプロ野球チャンピオンシップに出場した24歳以下の選手たちが主力を張ると思います。ですから、次のプレミア12も、ある程度若い選手たちで臨めたらと思っています」と構想の一端を明かす。

「(プレミア12で)アジアプロ野球チャンピオンシップのメンバーを全く使わないということは考えていません。優勝を狙うのは当然ですが、経験というものを踏まえてやっていかないと、先々に大事なところで試合を落とすことになると思います。先を見据えてやっていきたいですね。

 ロサンゼルスが舞台となる2028年には、アジアチャンピオンシップ出場メンバーは28、29歳くらいになっている。一番脂がのる年齢です。この中で何人がバリバリの主力に育ってくれるか。プレミア12をステップとして有意義に使わないといけません」

 井端監督自身はひとまず2024年11月のプレミア12までの任期となっており、それ以降も引き続き采配を振るうかどうかは現時点で分からない。それでも目先の勝利にこだわりすぎることなく、長い目で侍ジャパンの将来を考えている。それというのも、今夏までの2年をU-12代表監督として過ごし、今回も自身の強い希望でトップチームと兼務という形でU-15代表監督にも就任したからだろう。

井端監督が求める侍ジャパンの資質とは…

 そんな広い視野を持つ井端監督が考える、侍ジャパンのメンバーの条件とは何か。「そこに入りたい、そこでやりたいと強く思ってくれる選手であることが一番です。結束し、1つになって戦うのが日本の伝統だと思うので、何が何でも日本のために、勝利のためにという気持ちは大前提だと思います」と言葉に力を込める。「まずはプレミア12、次のWBC、その次のロサンゼルスでも、俺は侍ジャパンでやるんだという気持ちで、これからも日々の練習に取り組んでもらえたらと思います」。

 3月の第5回WBCでは、栗山英樹前監督率いる侍ジャパンが劇的な優勝を遂げ、日本中を歓喜させた。バトンを受け取った井端監督は「WBCで世界一になったシーンは、子どもたちにすごくインパクトを与えて、野球を始めるきっかけになっていると思います。侍ジャパンのトップチームが勝ち続けることが野球の裾野を広げることになると改めて思いました」と振り返る。

 子どもたちにインパクトを与え、憧れ続けられるためにも、指揮官は誓う。

「トップチームは常に勝ち続けなければならないということです」

 アジチャンで生まれた勝利の流れを、2024年も継続させていきたい。

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