2度の代表選出で知った“自分の現在地” 早稲田大・熊田任洋を成長させた客観的視点

2023.10.23

身長174センチと大柄ではないが、ユニホームの袖からのぞく腕に浮かび上がる筋肉は、大学4年間の努力の証だ。9月2日、早稲田大の熊田任洋内野手はプロ野球志望届を提出した。NPBの舞台を目指す大きな要因となったのが、高校時代、大学時代に選ばれた野球日本代表「侍ジャパン」世代別代表チームでの経験だった。愛知・東邦高時代の2019年には「第29回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ(U-18 W杯)」、今年は「第44回 日米大学野球選手権大会(日米大学野球)」に出場。それぞれの大会で得た気づきが自らを成長させた。

写真提供=Full-Count

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今夏の日米大学野球に出場、米国投手陣に圧倒され「学びになりました」

 身長174センチと大柄ではないが、ユニホームの袖からのぞく腕に浮かび上がる筋肉は、大学4年間の努力の証だ。9月2日、早稲田大の熊田任洋内野手はプロ野球志望届を提出した。NPBの舞台を目指す大きな要因となったのが、高校時代、大学時代に選ばれた野球日本代表「侍ジャパン」世代別代表チームでの経験だった。愛知・東邦高時代の2019年には「第29回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ(U-18 W杯)」、今年は「第44回 日米大学野球選手権大会(日米大学野球)」に出場。それぞれの大会で得た気づきが自らを成長させた。

「(WBCは)一ファンとして見ている感じでした。『WBCの勢いに乗って自分たちも』というよりは、米国開催で日本が優勝したのが過去にもほとんどなかったので、そこを目指して一致団結していた感じでした」

 日本時間7月8日から米ノースカロライナ州などで開催された日米大学野球。日本は第5戦までもつれ込みながら最終戦で米国代表を下し、見事優勝を手にした。敵地開催で日本が優勝を飾るのは、2007年以来16年ぶり2度目の快挙だった。熊田選手は5試合中4試合に二塁手としてスタメン出場。打席では100マイル(約160.9キロ)に迫る速球を投げる米国投手陣に圧倒され、体格差、力の差を感じたという。

「体格はすごいな、と思いました。日本人にはないというか、(普段)なかなか目にすることはできない体格だったので、学びになりました」。打席では14打数無安打と苦しんだが、その中にも収穫があったという。「(しっかり)球を見極めることができたというのはありました。ストライク・ボールを選んで振ることができたのではないかと思っています」。

2019年のU-18 W杯ではチームメートとの差を痛感「もう一度鍛えようと」

 熊田選手が侍ジャパンのユニホームに初めて袖を通したのは今から4年前、2019年のU-18 W杯だった。チームメートには佐々木朗希投手(現千葉ロッテ)、宮城大弥投手(現オリックス)ら豪華面々が並び、20人中14人が高校からプロの舞台に進んだほど。内野には森敬斗内野手(現横浜DeNA)、同じ東邦高の石川昂弥内野手(現中日)、武岡龍世内野手(現東京ヤクルト)らが居並ぶ中で、熊田選手がスタメンを外れたのは8試合のうち1試合のみ。遊撃で4試合、指名打者では3試合に先発し、22打数7安打、打率.318の好成績を残した。

「ライバルという感じではなかった。日々、勉強するような感じでしたね。(試合は)初対戦ばかりだったので、いい意味でシンプルにできたと。情報もないピッチャーだったので割り切って、打ち球をしっかり決めて打席に入れたんじゃないかなと思います」

 一方で、チームはスーパーラウンドに進み、初戦でカナダに勝ったものの、韓国とオーストラリアに連敗し、5位に終わった。自身も結果こそ出たが、世代を代表するチームメートとのパワーの差を痛感。「飛距離だとか、パワーだとか、全然違いました。プロに行きたいという気持ちはありましたが、『大学でもう一度、鍛え直そう』と思いました」と、プロ野球志望届を提出せず、早稲田大への進学を選んだ。

大学代表では年下選手にもアドバイスを請う飽くなき向上心

 大学では1年春から遊撃レギュラーの座を掴み、打撃改革に一から取り組んだ。「自分の体を知る」をテーマに、コンディショニングやトレーニングを勉強。「自分の調子が悪い時はどういう時なのか。その時にどこを鍛えればいいのか。(自分を)客観的に見るトレーニングをトレーナーさんと一緒にやっていきました」。すると、2年時には1割台と低迷した打率が、3年秋から復調し始めた。一時転向した二塁から遊撃に戻った今春は、打率.341、2本塁打、13打点と好成績を残し、再び日の丸のユニホームを着る機会を得た。

 2度目の侍ジャパンでも、チームメートは逸材揃いだった。遊撃には、3年生ながらすでにプロスカウトの注目を集める明治大の宗山塁内野手がいた。普段は同じ東京六大学野球で鎬を削るライバルだが、「間近で見ると、無駄な動きがこんなにないんだ」と驚いたという。熊田選手は二塁に回ることになったが、「どうライン取りしているのか、どこを意識しているのかとか、色々と聞きました」と、1学年下のスターにも積極的に教えを請うた。

 日本は2勝2敗で迎えた最終戦で米国を下し、優勝という最高の形で大会を終えた。「日米大学野球、U-18 W杯では、実際にプレーしている最中にはその重みは感じませんでしたが、SNSやニュースで大きく取り上げられていて、それだけ注目されていたんだと気付きました。侍ジャパンでプレーできたのは貴重な経験でした」。

 大学に戻り、最後のリーグ戦に臨む熊田選手はプロ野球志望届を提出し、26日のプロ野球ドラフト会議(新人選手選択会議)で吉報を待つ。晴れてプロ入りを果たした後の目標は「佐々木投手がメジャーへ行く前にあのボールを体感してみたいですね。打てる自信はないですけど……。とにかく経験したい、どれくらいすごいんだろうって」。一足先にプロの世界に足を踏み入れた、かつてのチームメートたちと、大舞台で再開する日が待ちきれない。

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