“真の”大学代表で一念発起 福岡ソフトバンク2年目外野手が学んだ考える力
日の丸をつけて戦った日々は刺激に満ちていた。福岡ソフトバンクの柳町達外野手は慶應大学4年時の2019年7月、野球日本代表「侍ジャパン」大学代表の1人として「第43回日米大学野球選手権大会」に参加し、メジャーリーガーの卵たちとの戦いに臨んでいた。
写真提供=Full-Count
2019年に日米大学野球に出場した柳町達、打率.500で首位打者獲得
日の丸をつけて戦った日々は刺激に満ちていた。福岡ソフトバンクの柳町達外野手は慶應大学4年時の2019年7月、野球日本代表「侍ジャパン」大学代表の1人として「第43回日米大学野球選手権大会」に参加し、メジャーリーガーの卵たちとの戦いに臨んでいた。
「日本での開催で『負けられないんだな』と、すごく緊張感がありました。侍ジャパンは日本の中で選ばれた人たちの集まり。そういうところに選ばれるというのは幸せですし、その中で野球ができるというのはなかなかないこと。その嬉しさを噛み締めながらやっていたことを覚えています」
柳町選手にとって大学代表への選出は、これが初めてではなかった。その1年前、台湾で行われた「第6回FISU世界大学野球選手権大会 2018」のメンバーに3年生で選ばれ、日の丸をつけた。だが、同時期に「第42回日米大学野球選手権大会」と「第29回ハーレムベースボールウィーク」が開催され、大学野球界の主だったメンバーはそちらに出場。柳町選手が選ばれた大学代表は、実際のところは“東京六大学選抜”だった。
心境は複雑だった。「もう1つの方が、本当に全てのリーグから選ばれた代表だったので、そちらに選ばれなかった悔しさもありました。選ばれた嬉しさもありながら……で難しい感情でしたね」。日本はチャイニーズ・タイペイや韓国を破って優勝したものの、スタメンに名を連ねる機会は少なく、悔しさの残る大会だった。
恩師からの助言で身についた「考えて、実践して、結果を出す」プロセス
それからおよそ1年後――。4年生となった柳町選手は春季リーグで打率.378をマークするなど絶好調で、東京六大学野球で史上33人目となる通算100安打も達成。大学球界屈指の好打者として名を馳せ、晴れて「第43回日米大学野球選手権大会」に臨む“真の”大学代表に選ばれた。「実感はあまりなかったんですけど、いざアメリカ代表と対戦するとなると『日本代表なんだな』と感じ、身が引き締まる感じがしました」と振り返る。
「アメリカは出てくるピッチャー全員、球が速くて凄いなと思いました。日本にいないような投げ方をする投手ばかりだなと」
米国代表の投手たちが投げるスピードボールに面喰らいながらも、次々と快音を響かせた。第1戦にいきなり2打数2安打とすると、第5戦でも3打数2安打をマーク。5試合全てに先発出場し、12打数6安打、打率.500の好成績で首位打者に輝いた。
「球が速かったので、先に準備するというところを意識して、それが上手くいった大会でした。当時の慶大の監督だった大久保(秀昭)監督から『速い球にどう対応していくかが大事だから』とアドバイスをいただき、それで試行錯誤しながらもタイミングを早く取るようにしたら上手くいきました。自分で考えて、実践して、結果を出せたことで、考える力はもちろん、技術的な部分でも自信になりました」
速いボールにどう対応するか。自分なりに考えて導き出した対策で結果に繋がった経験は、プロになった今も生きている。
プロ入り後も刺激を受ける盟友たち「僕も頑張らなきゃと思う」
この大会で大学代表としてともに戦ったメンバーは錚々たる顔ぶれだった。投手陣には森下暢仁投手(現・広島東洋)や伊藤大海投手(現・北海道日本ハム)、早川隆久投手(現・東北楽天)らプロでも早々に結果を出した逸材が並び、野手でも福岡ソフトバンクでチームメートになる海野隆司捕手や、郡司裕也捕手(現・中日)、佐藤都志也捕手(現・千葉ロッテ)、牧秀悟内野手(現・横浜DeNA)、宇草孔基外野手(現・広島東洋)らが名を連ねていた。
その中でも1学年下だった牧選手は印象深い存在だったという。「凄くいいバッターだと思いながら見ていました。その当時も4番だったので、将来は凄いバッターになると見ていました」と、溢れる能力に目を惹かれた。同じ東京六大学野球でしのぎを削った森下投手や早川投手らがプロでも活躍する姿には、「同級生や下の子が活躍していると、僕も頑張らなきゃなと思いますよね」と大いに刺激を受けている。
来季は勝負の3年目「侍ジャパンに選ばれるような選手を追い越す」
プロ2年目のシーズンを終え、来季の目標は1軍でのレギュラー獲りだ。今季はプロ初本塁打を放ったが、1軍では20試合に出場して打率.229と満足はしていない。来季は勝負の3年目と位置づける。
「大学2年からずっと代表選考合宿には呼ばれていたけれど、なかなか(代表入りには)手が届かなくて……。その時『上には上がいる』と痛感しながらやってきたことが、僕自身の成長に繋がったと思います。まだまだ未熟なので(プロでも)どうやったら成長できるかを考えながら、侍ジャパンに選ばれるような選手を追い越すという思いを強く持ってやっていくことが大事だと思っています」
いつの日か、侍ジャパンのトップチーム入りし、かつてともに戦った仲間たちと再び日の丸を背負って世界と対峙する。そんな未来に思いを馳せながら、柳町選手は今日もバットを振り続ける。
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