コミュニケーションが生んだ信頼関係 東北楽天捕手がU-18/U-23代表で得た学び

2021.7.26

2015年に開催された「第27回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ」の侍ジャパンU-18代表メンバーには、若くしてプロの世界で活躍している投手が多い。当時、その投手陣を引っ張ったのが、静岡高3年の堀内謙伍捕手(現・東北楽天)だった。日の丸を背負って学んだのは、コミュニケーションの大切さと考える力。かつての仲間と1軍の舞台で対戦するため歩みを進めている。

写真提供=東北楽天ゴールデンイーグルス

写真提供=東北楽天ゴールデンイーグルス

U-18代表で初日の丸を背負った堀内謙伍捕手、投手陣のレベルの高さに圧倒

 2015年に開催された「第27回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ」の侍ジャパンU-18代表メンバーには、若くしてプロの世界で活躍している投手が多い。当時、その投手陣を引っ張ったのが、静岡高3年の堀内謙伍捕手(現・東北楽天)だった。日の丸を背負って学んだのは、コミュニケーションの大切さと考える力。かつての仲間と1軍の舞台で対戦するため歩みを進めている。

 豪華な顔ぶれが揃った。昨シーズンのセ・リーグ新人王に輝いた広島東洋の森下暢仁投手(大分商高)、中日の小笠原慎之介投手(東海大相模高)、福岡ソフトバンクの高橋純平投手(県立岐阜商高)。現在、所属チームの主力として期待される3投手は、高校生の頃から才能が際立っていた。堀内選手は初めて見るレベルの投球に圧倒されたという。

「森下のコントロールはすごかったし、小笠原は左投手であんなに速い球を見たことがなかった。衝撃を受けました」

対戦国のデータはほぼなし、コミュニケーションで築いた投手陣との信頼

 日本代表として初めて臨む国際舞台。だが、相手国のデータはほとんどなかった。だからこそ、投手陣とのコミュニケーションに時間を割き、長所を引き出すことに努めた。食事の時間などに積極的に話しかけ、雑談を交えながら投手の性格や持ち球の使い方を把握。特に、多彩な球種を操る小笠原投手にはそれぞれの球種の活かし方や、カウントや場面によって選ぶボールについて細かく質問。その具体的な説明に「すごく考えて投げている」と驚かされ、剛速球以外にも好投手たる所以があると知った。

 大会では捕手として投手陣をまとめ上げ、日本の準優勝に大きく貢献した。バットでも勝負強さを見せて、打率.438、5打点でベストナインにも選出。外国人投手の動くボールへの対応や、一発勝負の国際舞台でミスをしない重要性を学んだ。

 ただ、それ以上に貴重だったのは、同世代の仲間との出会いだ。一緒にプレーしたのは10日ほどだったが、「思っていた以上に日本代表のみんなが考えて野球をしていたので勉強になりました。自分も頑張らないといけないと思いました」とプロへの思いを強くした。

U-23代表では大一番に機転の利いたリードと打撃でチームを牽引

 その3年後の2018年、東北楽天で3年目を迎えた堀内選手は「第2回 WBSC U-23ワールドカップ」で再び日の丸を背負っている。普段一緒にプレーしていない選手とともに挑む短期決戦。この時も大切にしたのは、投手陣とのコミュニケーションだった。「球種は分かっていても、使い方は全然分からない。考えを聞いて意見をすり合わせていくうちに、サインに首を振られることが徐々に少なくなりました」。バッテリーで互いの意図が分かるようになると、息が合い、信頼関係が生まれていった。

 それを象徴する試合が、決勝進出をかけたスーパーラウンド第2戦のベネズエラ戦だった。日本の先発・種市篤暉投手(千葉ロッテ)が制球に苦しみ、初回に先制3ランを許す厳しい始まりとなった。種市投手の最大の武器は落差の大きいフォーク。しかし、立ち上がりから高めに浮いていたため、堀内選手は「他のボールで立て直そう」と提案。2回からフォークを“捨てる”決断をした。直球とスライダーで組み立てる配球に切り替え、「フォークを消しはしないが、投げるとしてもワンバウンドでいい」という考えを共有した。

 すると、種市投手は調子が悪いながらも、2回以降は8回まで無失点と力投。初回の3点被弾から立ち直らせた堀内選手は、同点の8回裏に決勝3ランを放ち、バットでもチームを救った。

 日本は全勝で決勝へコマを進めるも、メキシコに延長10回タイブレークの末に敗れて準優勝。種市投手は最優秀勝率に選ばれたが、堀内選手によるサポートの大きさは計り知れない。

1軍で活躍する同世代に刺激「自分も頑張らないといけない」

 プロ6年目の今シーズンは、まだ1軍での出場機会がない。同世代の活躍に「自分も頑張らないといけない」と身が引き締まる。

「1軍の舞台で対戦できるように、と思っています。森下は新人王を獲って先を行っている。何とか追いつけるようにしていきたい。守備も打撃も走塁も、2ランク3ランク上がっていかないとレギュラーになれませんから」

 今でも変わらず大事にしているのが、投手とのコミュニケーションだ。たくさん話すだけではなく、投手のタイプによって話し方やタイミングを変えているという。外国人投手であれば細かい話をする時は通訳を交えるが、関係を築くために、普段はできるだけ片言の英語でも話しかけるようにしている。

 2度の国際大会で投手の長所を引き出し、信頼を得た堀内選手。プロ野球界でも存在感を見せる日は、そう遠くはないはずだ。

記事提供=Full-Count
写真提供=東北楽天ゴールデンイーグルス

NEWS新着記事