「今回の大会の経験を糧に」―侍ジャパンU-18代表、5位で終えたW杯で手にしたもの

2019.9.16

韓国・機張(きじゃん)で開催された「第29回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ」で初の世界一を目指した侍ジャパンU-18代表は、オープニングラウンドを4勝1敗で突破したものの、スーパーラウンドでは2勝3敗という結果で決勝戦と3位決定戦に進めず、5位で大会を終えた。通算の本塁打数はカナダに並んでトップの5本と長年の課題だった長打力に改善は見られたが、8試合で9失策と守備のミスが失点につながり、投手陣も良さを発揮することができず、課題の残る大会となった。

写真提供=Getty Images

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4大会ぶりにメダル逃し、永田監督は責任を背負う「全て私の不徳の致すところ」

 韓国・機張(きじゃん)で開催された「第29回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ」で初の世界一を目指した侍ジャパンU-18代表は、オープニングラウンドを4勝1敗で突破したものの、スーパーラウンドでは2勝3敗という結果で決勝戦と3位決定戦に進めず、5位で大会を終えた。通算の本塁打数はカナダに並んでトップの5本と長年の課題だった長打力に改善は見られたが、8試合で9失策と守備のミスが失点につながり、投手陣も良さを発揮することができず、課題の残る大会となった。

 スーパーラウンド第2戦、9月6日の韓国戦で守備の乱れから同点に追いつかれ、最後はサヨナラ負けを喫した侍ジャパンU-18代表。第3戦のオーストラリア戦に勝てば決勝進出への望みは残されていたが、2回に拙守が重なり4失点を喫し、最後まで跳ね返すことができなかった。永田裕治監督は「最後は守備がね……。本当に申し訳ない。全て私の不徳の致すところ。監督の責任です」と敗因を背負い込んだ。

 20人という登録枠の関係で投手を多くメンバーに入れなければならなかったため、不慣れなポジションを守った選手もいた。投手9人で野手11人。内野手は7人のうち6人が自チームで遊撃を務め、外野手は2人と少なかった。その影響もあったのだろう。

 打撃面では本塁打が5本飛び出し、フェンス直撃の長打も出た。戦術面では送りバントを多用して1点を取りに行く野球をしたものの、なかなか得点に結びつかなかった。また、投手起用はオープニングラウンド初戦のスペイン戦からスクランブル体制に。本来、エース格と考えられていた佐々木朗希投手(大船渡)が右手中指の血マメで、奥川恭伸投手(星稜)も夏の甲子園の蓄積疲労により、韓国入り後もノースロー調整を強いられた。

西と宮城は投打でフル回転、宿舎や表彰式では他国選手と交流も

 起用プランは崩れ、ほとんどの選手に先発と中継ぎの両方で準備するよう指示が出た。血マメの患部が治った佐々木投手もカナダ戦から登板に備えて準備をしていたが、翌日の韓国戦で同じ場所から出血した。前日の試合中にブルペンで投げすぎたことが原因だったようだ。

 そんな中で、西純矢投手(創志学園)と宮城大弥投手(興南)は投打でフル回転し、チームを救った。西投手は4試合で打席に立ち、12打数6安打、2本塁打で打率.500。投げても4試合で防御率1.35だった。宮城投手も4試合で打席に立ち、8打数3安打で打率.375。投手としては3試合で防御率1.04。ともに韓国戦の外野守備でも本塁で走者を刺す好返球を見せるなど、チームを牽引した。永田監督から「頼むぞ!西!」と言われると「任せてください!」と力強く返すハート、肉体の強さを見せた。自身のパフォーマンスを思い通りに出した西投手や宮城投手、そして4試合で6イニング無失点だった飯塚脩人投手(習志野)が持っていたようなメンタルの強さが、国際大会では必要だった。

 試合では激戦を繰り広げたが、国際大会は親善の場でもある。同じホテルに出場国の全選手が宿泊し、談笑する場面も見られた。韓国戦では宮城投手が相手選手に死球を当ててしまい、帽子を取って謝罪。すると、当てられた選手はヘルメットを取って、それに応じていた。森敬斗内野手(桐蔭学園)は出塁すると、守備に就く相手チームの選手と固く握手を交わしていた。決勝戦後に行われた閉会式では、先発投手部門でベストナインに選ばれた奥川投手、一塁手部門で選ばれた韮澤雄也内野手(花咲徳栄)、本塁打王を獲得した西投手が表彰を受けたが、その直前には他国の選手たちと写真撮影を行うなど、野球を通じて交流を深めた。

 悲願の初優勝を目指した大会で、5位という結果に満足している選手はいないだろう。永田監督は「この子たちはこれからもっと伸びていく選手ですから、今回の大会の経験を糧にしていってもらいたいです」とエールを送った。プロ注目の佐々木投手も「こういう雰囲気の大会を戦ったこと、仲間と(一緒に過ごした)楽しかった時間など、これからにつながる経験ができたと思います」と振り返った。大谷翔平投手(ロサンゼルス・エンゼルス・オブ・アナハイム)ら多くのプロ野球選手が巣立ったこの大会から、また世界に羽ばたく選手が現われるか、今後も注目が集まる。

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