トレーナーの仕事は「治療」だけではない? 日通野球部の中谷さんが重視する「予防の意識」

2019.1.8

スポーツ選手が最大限の力を発揮できるようにあらゆる面でサポートをしているトレーナー。しかし、実際にどのような仕事をしているのかは、あまり知られていない。そこで、日本通運野球部でチームトレーナーを務める中谷大志さんに、トレーナーになった経緯や仕事の内容、選手と接する上で気をつけていることなど、話を聞いた。

写真提供=Full-Count

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今年から日本通運野球部へ、中谷大志さんが語るチームトレーナーの仕事

 スポーツ選手が最大限の力を発揮できるようにあらゆる面でサポートをしているトレーナー。しかし、実際にどのような仕事をしているのかは、あまり知られていない。そこで、日本通運野球部でチームトレーナーを務める中谷大志さんに、トレーナーになった経緯や仕事の内容、選手と接する上で気をつけていることなど、話を聞いた。

 中谷さんは野球の名門、大分・明豊高で今宮健太内野手(現・福岡ソフトバンク)とチームメートだった。しかし、後に野球日本代表「侍ジャパン」にも選出される名手のプレーを目の当たりにし、実力の差を感じ始め、プロを目指すことを断念。大学時代に怪我をした経験から、体のことに詳しい野球の指導者を目指し、大学で教員免許を取得した。そして、より詳しく体のことを学びたいと、卒業後に専門学校へ進学。在学中にさまざまな資格を取得し、今年から日本通運野球部のチームトレーナーになった。

 一般的にトレーナーの仕事は「治療をする人」という認識があるが、練習中に選手が怪我をしないように注意し、怪我をしてしまった場合の応急処置、治療、リハビリ中のトレーニングサポートなど、その仕事内容は多岐にわたる。

「練習中は危険なことが起こらないように注意し、起きてしまったらすぐに対応するようにしています。選手は練習に集中しているので気が付きませんが、(バッティング用の)ネット1つでも『ここに置いていたら危ない』という時があります。また、試合中はデッドボールや自打球が当たった時の処置だけでなく、試合に集中して水分補給をしない選手もいるので、そういった選手に声をかけるなど、体調管理にも気を使っています」

 チームトレーナーとして1年目のシーズンを終えたが、足りないことだらけだったと振り返る。中でも、一番不足していると感じたのは「物事の伝え方」だという。

「自分は専門学校でたくさんのことを知り、資格も取りました。でも、学校で教わったことを選手やコーチに話しても、上手く伝わりませんでした。例えば、日本の野球は『きつい練習を長い時間やるほうが上手くなる』という考え方が根付いていますが、もっといいやり方があると感じています。それをどう伝えるか。自分は物事をはっきり言ってしまうタイプなのですが、言われる側の立場だったら嫌だなと考えました。どうしたら相手に伝わるのか、今年はそこが一番悩みました」

「何か月も治療に費やすのはもったいない。予防の意識をもっと大事にしてほしい」

 猛暑だった今年の夏は、練習中に倒れる選手もいたという。中谷さんは、水分補給の仕方や食事の摂り方の資料を作って選手に説明し、練習の前後で体重測定をするなど、選手の体調管理を徹底して行った。また、練習のやり方に対してもコーチに自分の考えを伝えた。

「強化練習などは、選手もふらふらになっていました。その様子を見て『それは違う』と伝える大事さを感じました。コーチとは関係が気まずくなる時もありますが、自分の意見を通すところは通しています。自分も学生時代にハードな練習をしていましたので、それが正しいと思っていましたが、結果的に怪我をすることもありました」

 今年、トレーナーとしてチームに付くという学生時代からの夢を叶えたが、これからは自分の強みを持ったトレーナーを目指したいと夢を語る。

「『自分はこれができます』と言えるトレーナーになりたい。自分の興味と選手の需要が合うものを極めたいと思っています。そして、治療より、怪我をする前に準備をすることが大事だということを、もっとチームに浸透させたいですし、それができるトレーナーを目指しています。怪我をして何週間、何か月も治療に費やすのはもったいない。予防の意識をもっと大事にしてほしいと思います」

 選手に話を伝えるためには「相手をまず受け入れることが大切」だという。そのために、日ごろから選手とコミュニケーションを取り、それぞれの選手の性格を理解することに努めている。「上手く行かないときは『くそー』ってなりながら、どうやって口説いてやろうかと思って、楽しんでやっています」。そう話す中谷さんの笑顔は、充実感に満ちていた。


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