稲葉篤紀監督率いる侍ジャパンが初陣へ 山崎武司は「期待もあるし、不安もある」
野球日本代表「侍ジャパン」は11月16日から19日まで東京ドームで開催される「ENEOSアジアプロ野球チャンピオンシップ2017」に挑む。7月に就任した稲葉篤紀監督の初陣。現役時代に通算403本塁打を放ち、本塁打王2度(1996年、2007年)、打点王1度(2007年)の実績を誇る野球解説者の山崎武司氏は、今回のメンバー構成について、大砲の少なさを指摘。「スモールベースボール」で勝利をつかむべきだと分析した。
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16日に大会が開幕、24歳以下の若い選手にエール「球界のスターになってほしい」
野球日本代表「侍ジャパン」は11月16日から19日まで東京ドームで開催される「ENEOSアジアプロ野球チャンピオンシップ2017」に挑む。7月に就任した稲葉篤紀監督の初陣。参加資格が24歳以下、または入団3年目以内(オーバーエージ枠3人を含む)とされている今大会で日本は、16日に韓国、18日にチャイニーズ・タイペイと対戦。上位2チームが19日の決勝戦に進む。
現役時代に通算403本塁打を放ち、本塁打王2度(1996年、2007年)、打点王1度(2007年)の実績を誇る野球解説者の山崎武司氏は、今回のメンバー構成について、大砲の少なさを指摘。「スモールベースボール」で勝利をつかむべきだと分析した。
一方で、若い選手たちの”爆発力“にも期待。勢いに乗れば大きな力を発揮する可能性があるとした上で「期待もしているし、不安もあります」と率直な思いを明かした。今回の日本代表メンバーに「球界のスターになってほしい」とエールを送った山崎氏。自身の若手時代も振り返りながら、大会の見どころを語ってくれた。
――今回は24歳以下の選手が出場する大会となりました。日本代表のメンバー構成を見て、率直にどのような印象を持たれますか?
「投手陣の方がいいメンバーが揃っているかなと言う印象を受けますね。だから、攻撃では打って勝つというよりも、足を絡めたり、スモールベースボールをやらないといけないのではないでしょうか。バンバン打てる感じではなさそうなメンバーですからね。バッター陣は本当につないでいくしかないですよね」
――パワーのある打者だと、オーバーエージ枠の山川穂高選手(埼玉西武)に期待がかかります。
「そうですね。これからどうなっていくかというバッターですけど、確かにパワーもあるし、いいバッティングをしています。ただ、これを来年以降も続けられるかどうかでしょう。来年も成績を残せたら自信になる。だから、この侍ジャパンの試合と来年が本当に大切です」
――福岡ソフトバンクの上林誠知選手も飛距離が出るバッターとして注目されています。
「いいスイングしてますね。ただ、今年は思ったより数字が伸びなかった。もっと打つかなと思いましたけど。いずれ伸びてくる選手だと思いますが、やはり安定感が大切。打率、ホームラン、打点も全部というわけにはいかないかもしれませんが、自分のバッティングにこだわってやってほしいですね」
経験の浅いメンバーでの優勝へ「首脳陣の腕の見せどころ」
――野手陣では山崎さんの中日の後輩に当たるルーキーの京田陽太選手もメンバーに入っています。今年は1年目からショートのレギュラーとして活躍しましたが、どのようにご覧になっていましたか?
「1年目としては頑張ったけど、2年目でこの成績では、1番としての仕事という面ではまだ足りない。フォアボールもないから、出塁率などをちょっとずつ改善していけるといいですね。京田選手も今年は今年で、来年はもうワンランク上の京田選手にならないといけないですしね。でも、よく頑張ったと思います。このメンバーだと、おそらくショートが西武の源田(壮亮)選手、セカンドが京田選手という形になるでしょうね」
――投手陣はいかがでしょうか。オーバーエージの中日・又吉克樹投手や、横浜DeNAの守護神・山崎康投手をはじめ、プロですでに実績を残している選手もいます。
「ピッチャーだと、先発の軸は今永昇太投手(横浜DeNA)、薮田和樹投手(広島東洋)、田口麗斗投手(読売)になるでしょうね。あと多和田真三郎投手(埼玉西武)も先発の可能性があると思います。救援では、又吉投手は今年は球が元気でしたからね。去年も、悪かった時も球は行ってたけど、ただばらついていた。今年はばらつきはなくて、安定してたんじゃないかなと」
――今年、飛躍を遂げた薮田投手の良さはどういうところにあるのでしょうか?
「球が強いし、追い込んでからのフォークも持ってる。自分のピッチングができれば打たれない確率は非常に高いと思います。ただ、薮田投手もすごくいいピッチャーですが、少し安定感が気になります。国際試合とか、一発勝負というところになると、どうなのかなと感じます。安定感という意味では、今永投手の方がいいのかなと。ただ、今永投手はコントロールとか球のキレがあるけど、国際試合になると力も必要。力という部分についてはちょっと足りないかなと思います。いろんなプラスの要素、マイナスの要素がある。本当に未知数な選手が多いと思います」
――24歳以下という年齢制限があると、どうしてもプロ野球で何年も続けて成績を残してきたという選手が少なくなります。その分、乗ってしまえばすごい力を発揮する可能性もありそうです。
「24歳以下はプロでも実績とか成績とか、まだ安定感のない選手ばかりですよね。正直、未知数なところがあると思います。侍ジャパンのフル代表だと、ある程度、実績と安定感を持っているから『このくらいはやってくれる』という計算が成り立つけど、この24歳以下は本当に分からない。良くもなるし、悪くもなる。そういう難しい年齢制限が入ってるから、首脳陣の腕の見せ所じゃないでしょうか。
数字を残している選手もそこそこいるけど、打てなかったら全くという選手もいますよね。例えば、オコエ(瑠偉)選手(東北楽天)は今季数字を残してるけど、CSではピッチャーがとことん合わなかった。若い選手はそういうところがあるから怖いですよね。逆に、内川(聖一)選手(福岡ソフトバンク)なんてとんでもない成績は残さないけど、国際試合とか大事な試合になったら打ってくれる。それが、安定感ということになるのですが。そういう意味では、今回の侍ジャパンはやってみないと分からないメンバー。期待もしているし、不安もあります」
「日本は少ない点数でピッチャーが頑張って逃げ切るという形が一番」
――その中であえて中心になる選手を挙げるとすると…。
「キャチャーで安定して成績を残している田村龍弘選手(千葉ロッテ)や、横浜DeNAの桑原将志選手(横浜DeNA)もずっと試合に出ている。そういう選手が引っ張っていってほしいですね。とにかく、メンバーの名前だけを見てみると、軸になる選手がいないように思えるので、軸になる選手が出てきてほしい。まだこの中に球界のスターはいない。今回、日本代表に入ったわけですから、そういう選手になってくれれば」
――相手は韓国、チャイニーズ・タイペイになります。若い選手にとっては、海外のチームと対戦することも大きな経験になるのではないでしょうか。
「同じアジアの中でも韓国はパワー系ですからね。今回のメンバーは分かりませんが、韓国の若い選手は2月の日本でのキャンプを見ていてもまだまだ荒い選手が多い。そういう部分では、日本の選手のほうがレベルが上だと思います。まだ細かい野球ができてないという印象がすごくあるので。ただ、同じアジアで、野球のスタイルはあまり変わらない。日本はやはり、少ない点数でピッチャーが頑張って逃げ切るという形が一番でしょうね。筒香(嘉智)選手(横浜DeNA)と中田(翔)選手(北海道日本ハム)のように、大砲が2人くらいメンバーにいると違いますが、今回は『打ってくれ』と言ってもなかなか難しい部分もあると思います」
――そういう意味では、先ほども言われていたように、稲葉監督の采配も大事になってきそうです。
「監督もペナントレースで選手は見ているけど、これまでの代表に比べて性格とか、そういうものもまだ把握できてないと思います。それでも、うまく適性に合わせてチームを作ってやるのが監督の仕事です。最近、侍ジャパンでいいなと思うことは、若い監督、コーチが多くなってきたことです。これは1つの好材料ですよね。そういう面では、選手と同じで若い力は未知数ですが、楽しみもいっぱいある。首脳陣にも期待しています」
――最後に、山崎さんは日本のプロ野球史上でも稀に見る“遅咲き”の選手として、素晴らしい成績を残しました。24歳以下の選手がこの時期にやっておくべきこととは、どういうことになるでしょうか。
「特に、高卒からの4年間、大卒からの2年間は大事だと思います。今は球団の見切りも早いから、選手は可哀想かなと思うところもありますけどね。私は、24歳くらいの時はまだ全然、未完成でした。それこそ、プロに入って2年目なんてバリバリの2軍でしたから。キャッチャーとして壁にずっと当たっていた時代で、自分が活躍できるイメージも全くありませんでした。間違いなく、プロ野球の過去の歴史で、これだけ長く2軍にいてあんな成績を挙げた選手は自分しかいないわけですから。どれだけ遅咲きなのか、と言われますけど、本当にできなかったんですよ(笑)。8年目くらいになっても、できなかった。9年目でホームランを16本打った時に、やっと『俺ひょっとしたら1軍でもできるかも』と思ったんです。8年目まではさっぱりでした。
だから、24歳くらいの時に何をしたかあまりイメージがないんです。急に打てるようになってしまった。でも、11年目でまたさっぱり打てなくなってしまった。なぜ打てなくなったのかも分からなかった。11年目のキャンプの時はメチャクチャ練習したんです。不安だったので。だけど、打てなかった。何も考えずに練習していたし、ただ練習すれば良くなると浅はかな考えでやっていました。なぜ良かったか、なぜ悪かったか、把握ができかった。結局、それが悪かったんです。努力だけなら誰でもできる。それでもできないから考えるようになるんです。それが大切だと思います」
山崎氏は最後に「努力だけで打てるんだったらみんな努力しますよ」と繰り返した。今回、大会に出場する選手たちも、日本代表メンバーとして結果を残そうと、懸命に努力を重ねるだろう。ただ、だからといって必ず結果が出るかは分からない。山崎氏が伝えたいのは、若い選手たちがそこで何を考え、次につなげるかということ。そして、来季以降も侍ジャパンに選出されるような成績を残し、「球界のスター」へと駆け上がってくれることを願っている。
【了】
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