侍ジャパンでの経験をチームに還元 網谷圭将がアジア選手権で受けた成長への刺激
川口朋保監督率いる野球日本代表「侍ジャパン」社会人代表は、9月22日から中国・平潭で開催された「第31回BFAアジア選手権」に出場し、2大会連続21度目の優勝を果たした。スーパーラウンドでは韓国相手に今大会唯一となる黒星を喫したが、決勝ではチャイニーズ・タイペイを11-0と完璧に封じる快勝。社会人野球のレベルの高さを世界に示した。

写真提供=Getty Images
横浜DeNAで3年プレーも戦力外…ヤマハで始まった新たな野球人生
川口朋保監督率いる野球日本代表「侍ジャパン」社会人代表は、9月22日から中国・平潭で開催された「第31回BFAアジア選手権」に出場し、2大会連続21度目の優勝を果たした。スーパーラウンドでは韓国相手に今大会唯一となる黒星を喫したが、決勝ではチャイニーズ・タイペイを11-0と完璧に封じる快勝。社会人野球のレベルの高さを世界に示した。
6試合すべてに「3番・左翼」で先発出場し、優勝の原動力となったのが、ヤマハの網谷圭将外野手だ。通算打率.381、大会最多となる11打点を記録。ベストナイン(外野手)にも選出される活躍で、その存在を光らせた。
ヤマハに入って7年目。打率も残せるパワーヒッターとして打線を牽引し、2023年から2年連続で社会人ベストナインに選ばれていたが、侍ジャパン入りは初めての出来事だった。そもそも、小学生から始まった野球人生を振り返っても、日本代表は遠い存在だったという。
「高校の時は甲子園でバリバリ活躍した選手が高校日本代表になるものだったし、プロ野球では本当にすごいトップ選手が行くところという感じだったので、自分にははるか遠い別世界。自分が日本代表入りするなんて、頭をよぎりもしませんでした」
ヤマハで開花した打撃 2023年都市対抗野球では久慈賞に選出
千葉英和高から2016年に育成ドラフト1位で横浜DeNAに入団。当時のアレックス・ラミレス監督に打撃を高く評価されていたものの、在籍した3年で支配下選手登録を勝ち取ることはできず。「今思えば、心・技・体、どれも揃っていなかった。まだ早かったな、と思います」。2018年10月に戦力外通告を受けた後、縁あってヤマハに加わることになった。
だが、最初から順風満帆だったわけではない。殻を破りきれず、結果も出ないまま。モヤモヤする毎日をなんとか打ち破りたいと覚悟を決め、2年目には佐藤二朗野手コーチ(当時)の助言を得ながら打撃改造に着手。技術面はもちろん、メンタル面やトレーニング方法も含め、「全部をぶち壊して、もう一度新たに積み上げることにしました」と振り返る。
効果は覿面だった。体重を10キロ増やしたことでパワフルな打球が飛ぶようになり、打席で冷静さを保つことで確実性もアップ。頼れる4番打者として、2023年の第94回都市対抗野球大会ではヤマハの準優勝に大きく貢献し、敢闘賞にあたる久慈賞を受賞した。
「日本代表との距離が縮まり、イメージできるようになった」
その年、JABA選抜として参加した台湾ウインターリーグ・ベースボールでも、首位打者と最多安打の2冠を獲得。着実な成長を続けていく中で、いつしか日本代表は遠くない、目指すべき場所となっていた。
「社会人に入ってからウインターリーグや代表候補合宿にも参加させていただき、色々と経験することができた。経験が重なるにつれて、日本代表との距離が縮まり、(自分が入る)イメージができるようになったんです。そうした流れの中で選出していただき、本当にうれしい気持ちと、日の丸を背負う上に3番(打者)を任された責任とが半々でしたね。舞い上がる気持ちはありませんでしたし、チーム内での立ち位置や、対戦相手によってどういうプレーをするべきか、イメージしながら準備できました」
川口監督をはじめ、チームを支えるスタッフのサポートもあり、大会では「思い切ってやれたのが一番です。失敗した後のことは考えずに、思い切ってプレーできる環境を作っていただけました」と大活躍。その中でも、強豪として鳴らす韓国、チャイニーズ・タイペイとの対戦は、さらなる成長の必要を痛感する良い刺激になったという。
「韓国もチャイニーズ・タイペイも、投手は当たり前のように150キロを超える球を投げてきて、155キロを超えるような投手が何人もいる。本当に世界と戦うには小細工ではなく、しっかりとパワー対パワーで勝てるフィジカルと技術を、日頃から磨いていかないと絶対に通用しないと思いました。今回の大会で改めて感じたところです」
侍ジャパンで得た経験をチームに還元「自分にとって大きな意味を持つ」
同時に、普段はライバルとして火花を散らす他チームの選手たちと、短期間ではあるがチームメイトとして時間を共有し、得た気付きもあった。
「やっぱりチームによって色々な雰囲気がありますから、それぞれのチームで当たり前のこと、大事にしていることを感じられました。例えば、今回はトヨタ自動車の選手が結構多かったので、トヨタ自動車での当たり前が何かが見えてくる。その中で良いところは、チームに戻ってからしっかり繋げていきたいと思いました。社会人野球は個人よりもチームとして勝つことが大事。代表で経験したことをチームに持ち帰って還元することが、自分にとって大きな意味を持っています」
ヤマハは10月28日に開幕する第50回社会人野球日本選手権で、2016年以来2度目となる優勝を目指す。熾烈なトーナメント戦を勝ち上がる中で、網谷選手が日本代表から持ち帰った経験と刺激は、チームにとってもかけがえのない財産となるはずだ。
記事提供=Full-Count
写真提供=Getty Images, Full-Count