大会2連覇ならずも立派に戦い、勝ち取った準優勝… U-18W杯の熱戦をプレイバック
9月5~14日に沖縄で開催された「ラグザス presents 第32回 WBSC U-18 野球ワールドカップ」(以下、U-18W杯)が大盛況のうちに幕を下ろした。野球日本代表「侍ジャパン」U-18代表は2大会連続で決勝を戦ったものの、惜しくも準優勝という結果に。だが、日の丸を背負って世界と対峙した精鋭20選手は、何にも代え難い貴重な経験を手に入れた。

写真提供=Full-Count
沖縄尚学高の甲子園優勝で沸く沖縄で開催されたU-18W杯
9月5~14日に沖縄で開催された「ラグザス presents 第32回 WBSC U-18 野球ワールドカップ」(以下、U-18W杯)が大盛況のうちに幕を下ろした。野球日本代表「侍ジャパン」U-18代表は2大会連続で決勝を戦ったものの、惜しくも準優勝という結果に。だが、日の丸を背負って世界と対峙した精鋭20選手は、何にも代え難い貴重な経験を手に入れた。
第107回全国高等学校野球選手権大会で沖縄尚学高が初優勝を飾った、わずか5日後。沖縄県勢として15年ぶりの優勝に沸く那覇に集結したのが、甲子園のヒーローたちを中心とするU-18代表だった。大会2連覇のかかるU-18W杯に向け、会場となる沖縄セルラースタジアム那覇で直前合宿をスタート。全国の高校球児を代表する20選手が、1つのチームとして結束を高めるため練習に励んだ。
8月31日には大学代表の胸を借り、9月2日には開催地・沖縄の猛者が集まった沖縄県高校選抜としのぎを削り、壮行試合を2戦実施。大学代表には1-8と格の差を思い知らされたが、沖縄県高校選抜とは接戦を演じて4-3で勝利。本番を前に貴重な実戦経験を積むことができた。
投手力が光ったオープニングラウンドは3戦完封で全勝通過
迎えたU-18W杯。オープニングラウンドで韓国、プエルトリコ、キューバ、イタリア、南アフリカと同じグループAとなった日本は、初戦でイタリアと対戦。チームを率いる小倉全由監督に先発マウンドを託された森下翔太投手(創成館高)は5回まで3安打無失点の快投で1点リードを死守。6回1死一、三塁から味方失策で追いつかれて降板するも、直後の攻撃で3点を勝ち越し、白星スタートを飾った。
続く第2戦は韓国と対戦。日本は初回に阿部葉太外野手(横浜高)の遊撃内野安打で1点先制に成功する。2回に2点を返されるも、直後に岡部飛雄馬内野手(敦賀気比高)のタイムリーなどで2点を奪って再逆転。3回にも高畑知季内野手(東洋大姫路高)の左翼へのタイムリーで1点を加えてリードを広げた。投げては、地元・沖縄尚学高の末吉良丞投手が4回2失点とすると、バトンを受けた石垣元気投手(健大高崎高)が3回無失点に抑えて勝利を収めた。
その後は、キューバ戦に3-0、南アフリカ戦は10-0、プエルトリコ戦は3-0と、3戦連続完封勝利とした日本は、オープニングラウンドを無傷の5勝で1位通過。韓国、プエルトリコと共にスーパーラウンドへと駒を進め、グループBから勝ち上がった米国、チャイニーズ・タイペイ、パナマと対峙することになった。
スーパーラウンドは2度の延長タイブレークにもつれる接戦
スーパーラウンドでは、オープニングラウンドで同組だった2チームとの対戦成績が持ち越され、グループBを勝ち抜いた3チームと対戦。初戦は同じくオープニングラウンドを全勝で勝ち上がった米国との対戦となった。
大会2連覇に向けてカギとなる米国戦。オープニングラウンドでのチーム防御率は、日本の0.64に対して米国は0.44という高さ。締まった投手戦が予想される中、小倉監督が先発に指名したのは末吉投手だった。初回こそ2四球を与えたが、1回2死から12者連続凡退。5回1死から初安打を許して降板したが、見事な快投劇を披露した。その回、日本は守備の乱れから1点を失ったものの、早瀬朔投手(神村学園高)が粘投。打線は相手先発左腕のジェームズ・ボールモン投手の150キロを超えるストレートの前に打ちあぐねていたが、7回に中継ぎ陣を捉えて横山悠捕手(山梨学院高)の右翼タイムリーで同点とする。
延長タイブレークとなった8回、日本は岡部選手のタイムリーで1点を勝ち越すと、相手のミスも手伝って一挙5得点。その裏に1点を返されたが、逃げ切り勝利を収めた。
続くパナマ戦は、勝てば2大会連続決勝進出が決まるという大事な試合。日本は初回に1点先制を許したが、パナマ先発のロデリック・メディナ投手が投じる150キロに迫る剛速球を打ち返せず、5回までスコアボードに「0」が並んだ。チャンスは6回にやってきた。1死から阿部選手の中前打と盗塁などで2死三塁の好機を作ると、為永皓内野手(横浜高)が中堅へ値千金の同点打。2試合連続で延長タイブレークへもつれ込んだ。
初回に1点を失った先発の森下投手は、そこから8回2死まで無失点とする力投。ここで小倉監督は奥村頼人投手(横浜高)を起用したが、続く辻琉沙投手(履正社高)と合わせて4四死球と乱れて4点を失った。だが、日本も諦めない。先頭の藤森海斗外野手(明徳義塾高)が中前打で出塁すると、1死から阿部選手、奥村凌大内野手、為永選手の横浜高トリオが3連続タイムリーで同点。9回には1死満塁から岡部選手が技ありのスクイズを決めて接戦を制した。
全勝で進んだ決勝では米国代表と対戦…全力尽くすも一歩及ばず
スーパーラウンド最終戦ではチャイニーズ・タイペイに9-1と圧勝した日本は、全勝で2大会連続の決勝進出となった。決勝での対戦相手は、難敵の米国だ。最終決戦に際し、小倉監督が先発に指名したのは末吉投手。今大会3戦目の先発となった末吉投手は、初回から走者を背負うも無失点で切り抜ける粘投。だが、4回1死から3連打で1点を失い、マウンドを石垣投手に託した。石垣投手は5回に3四死球から犠飛を許して1点を追加されるも、その後は無失点。だが、米国先発の198センチ右腕コールマン・ボスウィック投手が3安打1四球の完封投球を披露し、日本の2連覇はならなかった。
10日間9試合に及ぶ熱戦を戦い終えた日本は、目標の優勝こそ達成はできなかったが、それに次ぐ準優勝という立派な成績を残した。試合後、小倉監督は「各校の中心選手が集まる中でも、チームの中の1人ということで、みんなしっかり役割を果たしてくれました。アメリカ戦やパナマ戦の勝利はその表れだと思います」と選手たちを称えた。また、連日スタジアムを埋め尽くす満員の応援に「これだけの応援、嬉しかったですね。選手のみんなもその幸せを感じてくれていると思います」と感謝した。
解団式で小倉監督は「負けた悔しさ、これを自分の力にして、これから自分の人生の中で、これからみんな野球やる中でもっと強くなってもらいたいし、人として立派な人間になってもらいたい」「人として絶対に裏表のない、どこ見られてもかっこいい男でいてもらいたい」と呼びかけた。
様々な経験と思いがギュッと詰まった10日間のアツい夏。U-18代表20選手が見せるであろう今後の飛躍に期待したい。
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