「“なりたい自分”を見つけてほしい」U-12代表・大久保秀昭監督が選手に求めること

2025.7.28

小学生世代の最高峰、野球日本代表「侍ジャパン」U-12代表は、台湾・台南市を舞台とする「ラグザスpresents 第8回 WBSC U-12野球ワールドカップ」(7月25日~8月3日)に出場。指揮を執るのは、今年就任した大久保秀昭監督だ。56歳の新監督の経歴は実に多彩かつユニークで、将来のある小学生にとってはうってつけの指導者と言えそうだ。

写真提供=Full-Count

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7月25日に台湾で開幕「ラグザスpresents 第8回 WBSC U-12野球ワールドカップ」

 小学生世代の最高峰、野球日本代表「侍ジャパン」U-12代表は、台湾・台南市を舞台とする「ラグザスpresents 第8回 WBSC U-12野球ワールドカップ」(7月25日~8月3日)に出場。指揮を執るのは、今年就任した大久保秀昭監督だ。56歳の新監督の経歴は実に多彩かつユニークで、将来のある小学生にとってはうってつけの指導者と言えそうだ。

「子どもたちには“世界”を感じてほしいですよ」

 大久保監督はそう強調する。

 現役時代は強打の捕手として活躍。神奈川・桐蔭学園高から慶應大に進学し、4年時には主将として東京六大学野球リーグで春秋連覇を達成した。日本石油(現ENEOS)に入社後は、在籍5年間で都市対抗野球大会優勝2回。1996年のアトランタでは日本代表の主軸として活躍し、銀メダルを獲得している。

 さらに同年のドラフト会議で近鉄バファローズから6位指名され、27歳でプロ入り。2001年の現役引退後は、監督として古巣・日本石油の系譜を継ぐ新日本石油ENEOS、JX-ENEOS、ENEOSを率い、都市対抗野球大会を4回制覇した。2015年から5年は慶應大の監督となり、リーグ優勝3回を誇る。

ほぼ未知の領域ながらオファー快諾「とても嬉しいこと」

 そんな名将にとっても、小学生世代の指導はほぼ未知の領域だ。それでも昨年限りでENEOSの監督を退任後、U-12代表監督就任のオファーを受けると、「ジャパンのユニホームを着られるのは、どのカテゴリーであれ、とても嬉しいことですから」と快諾した。

 日本代表のユニホームに袖を通すのは、2018年に大学代表監督として「FISU世界大学野球選手権大会」に出場以来だが、初めて“世界”に触れたのは大学4年の時だったという。アジア、オセアニア、ヨーロッパ地区の混成チームと中南米を含むアメリカ大陸チームが対戦する“アマチュアオールスター”がロサンゼルスで開催され、日本代表の1人として参加。アジア地区側を王貞治氏、アメリカ大陸側をメジャー通算755本塁打のハンク・アーロン氏が率いる豪華な試合で、「僕はその時、野球の国際化に尽力された山本英一郎さん(1997年に野球殿堂入り)から『世界で勝負しろ』『世界を見ろ』という言葉をいただき、その後の人生のヒントになりました」と感慨深げに振り返る。


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名将が感じる“今どきの子ども”の傾向とは

 現役時代はまだ、今のように日本人選手がメジャーリーグで活躍する時代ではなかった。「もし自分が選べる立場であったなら、間違いなく(海を渡ることを)選択したはずです。中学から海を渡ったっていいと思いますよ」と言い切る。

 1995年に野茂英雄氏、2001年にイチロー氏が海を渡って活躍して以来、メジャーリーグはより身近な存在となった。今では憧れの野球選手としてメジャー選手の名前を挙げる子どもも多く、進路の1つとしてメジャーリーグが選択肢に入る時代だ。世界を視野に入れながら目標を掲げてほしいという思いは。U-12代表の精鋭たちはもちろん、小学生世代の子どもたちに広く訴えたい思いでもある。

“今どきの子ども”の傾向については、「ギラギラしていない。まるでオンラインゲームに没頭しているような雰囲気で、こちらの問いかけに対して反応が薄い」と感じている。

 だが、そこでイライラして「おまえ、聞いているのか!?」と頭ごなしにどやしつけるようなことは禁物。「あれ?返事は?」「ちゃんと分かってる?」と穏やかに問うことにしているという。「声を出せ!」などの命令形を避け、「指導者はどうやったら理解してもらえるかを考え抜くことが必要」と心掛けている。

目指すは優勝も…大久保監督が選手たちに期待する成長

 ちなみに、過去7回のU-12野球ワールドカップで優勝したことがあるのは、米国(5回)とチャイニーズ・タイペイ(2回)のみ。「その2チームの子どもは早熟で、日本より体が大きく有利と聞いています」と大久保監督は表情を引き締める。ただ、「全ての世代で“世界最強”となることが侍ジャパンの理念ですから、当然優勝を目指します」とした上で、「勝てば何をしてもいいという考え方を、僕はしたくない。正々堂々フェアプレーで戦いながら、人として成長してほしいですし、将来へ向けて“なりたい自分”の姿を見つけてほしい。ワールドカップがヒント、きっかけになればいいと思います」と成長を期待する。

 今大会の結団式の際、代表選手の保護者たちに「お子様たちを少しでも成長した姿でお返しします」と約束したという大久保監督。単なる“指揮官”ではない。様々な経験に裏打ちされた“教育者”としての顔が、そこにある。

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