「気持ちで負けずに圧倒したい」 侍ジャパン初選出・戸郷が寄せる大きな決意

2022.11.7

野球日本代表「侍ジャパン」は11月9、10日、札幌ドームで「侍ジャパンシリーズ2022 日本vsオーストラリア」を戦う。栗山英樹監督を迎え、初めて行う国際試合。代表メンバー28選手のうち16選手がトップチーム初選出という新鮮な顔ぶれとなった。

写真提供=Full-Count

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栗山監督が選出した28選手のうち16選手がトップチーム初選出

 野球日本代表「侍ジャパン」は11月9、10日、札幌ドームで「侍ジャパンシリーズ2022 日本vsオーストラリア」を戦う。栗山英樹監督を迎え、初めて行う国際試合。代表メンバー28選手のうち16選手がトップチーム初選出という新鮮な顔ぶれとなった。

 初選出されたメンバーの1人、読売の4年目・戸郷翔征投手は「楽しみしかないですね」と声を弾ませる。10月4日のメンバー発表記者会見にサプライズ登場した右腕は、侍ジャパンとは不思議な縁で繋がっていた。

 宮崎・聖心ウルスラ学園高の3年生だった2018年夏。甲子園出場を逃した戸郷投手は、宮崎県選抜チームの一員として侍ジャパンU-18代表と対戦した。報徳学園高の小園海斗内野手(現広島東洋)や大阪桐蔭高の藤原恭大外野手(現千葉ロッテ)ら甲子園を沸かせた同世代スターたちは、宮崎が舞台となった「第12回 BFA U18アジア選手権」を戦うためにU-18代表として集結。その壮行試合で1回途中からマウンドに上がると、5回1/3を投げて5安打9奪三振2失点と力投した。

 甲子園出場が叶わなかった悔しさ、U-18代表に入れなかった悔しさを振り払うような、思いきりのいいピッチングにNPB球団のスカウトたちが注目。その年の10月、読売からドラフト6位指名を受けてプロの門を叩いた。

「あの試合でプロ入りが決まったと言っても過言ではないと思います。高校生ラストの試合だったので、悔しさも嬉しさも、いろいろな想いが入り混じりながら、それでも楽しみながら投げられたので良かった。僕にとっては人生の分かれ道というくらい大きなポイントになった試合でした」

3年の経験と仲間からのヒントで飛躍、栗山監督「攻めきれる魂を持った投手」

 プロ1年目はシーズン最終盤で1軍デビューを果たすと、クライマックスシリーズや日本シリーズでも登板。貴重な経験を積んで臨んだ2年目は開幕ローテーション入りに成功し、9勝6敗、防御率2.76の成績で、セ・リーグ新人特別賞を受賞した。3年目となる2021年は、前半に8勝を挙げてオールスターに出場したが、後半に苦戦。9勝8敗と2桁勝利に一歩及ばず、防御率も4.27と低迷。だが、この経験が今季の飛躍を促した。

「ピンチを迎えた時に気持ちがアップアップしてしまうと肩に力が入って、ボールにも力が入ってしまう。これはプロとして過ごした3年で分かったことなので、逆にピンチの状況ではリラックスするくらいの気持ちで臨むことにしました」

 尊敬する菅野智之投手ら歴戦の先輩投手たちはもちろん、自身より若い投手たちにも「ピンチを迎えた時はどうに対処していますか?」と聞き、ヒントを求めた。いろいろな意見を参考にしながら、過去3年の経験やパフォーマンスと照らし合わせ、どんな状況でもできる限り平常心を保てる方法を考えた。

「変に力まず、冷静にピンチを乗り越えられるようになったのは大きかったと思います」と振り返る通り、2022年は25試合に先発し、1完封を含む3試合に完投。12勝8敗と初の2桁勝利を飾り、防御率も2点台(2.62)に戻した。さらには、投げっぷりのいいスリークォーターのフォームから繰り出される投球で打者を翻弄。154奪三振をマークして最多奪三振のタイトルも手に入れた。

 この活躍に栗山監督は注目。会見では「攻めきれる魂を持った投手なので、その良さを出してくれると思って選びました」と選考理由について明かし、大きな期待を寄せる。

初の国際試合に向け「楽しみながらいい緊張感を持ってできたら」

 戸郷投手にとって、これが初めての国際試合。レギュラーシーズンで外国人選手と対戦したことはあっても、打順の1番から9番まで外国人が並ぶ打線とは初対戦だ。だが、「プレッシャーはあまり感じていなくて、楽しみながらいい緊張感を持ってできたらと思います。新たな挑戦というか、楽しみしかないですね」と頼もしい。

 対戦相手のオーストラリアは、3月の「ワールド・ベースボール・クラシック™」(以下WBC)1次ラウンドでも同組となる。「これからメジャーで活躍する選手がいるかもしれないですし、すごく楽しみ。光栄ですね」と話すが、抑えるべきポイントは心得ている。

「外国人選手は日本人に比べてパワーが人一倍ある。やっぱりボールが真ん中にいかないことを一番気を付けていますし、日本人よりリーチが長い選手が多く、空振りを狙ったボール球にバットが届くこともあるので、ボールの高さにはより気を付けて神経を使います。バットにボールが当たると何が起こるか分からない怖さはありますね」

第4回大会準決勝の菅野の力投に感銘「あの気迫の投球は…」

 来年のWBC出場に向けて、今回の強化試合は絶好のアピール機会となる。過去のWBC4大会で、何度も何度も繰り返し見ている試合がある。第4回大会の準決勝、ドジャースタジアムが舞台となった米国戦だ。大先輩の菅野投手が小林誠司捕手とバッテリーを組み、メジャーで活躍する強打者たちを6回3安打1失点(自責0)に抑え込んだ。

「菅野さんが小林さんとバッテリーを組んで、有名な打者を相手に圧倒していたのが印象に残っています。よく映像を見返していますが、あの気迫の投球はとにかく印象深いですね」

 今回の侍ジャパン選手にあたり、菅野投手から「頑張ってこいよ」と声を掛けられたという。「素直に嬉しかったです」という右腕は、WBCの舞台で投げる自分の姿をイメージしつつ、「気持ちで負けずに圧倒したい」と決意を語る。

「僕が必死に投げている姿を見る方に、元気や感動を感じてもらえたら、と思います」

 縦縞のユニホームに身を包んだ戸郷投手の気迫の投球が、今から楽しみだ。

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