横浜DeNA入江がU-18代表で学んだこと 「自信を持ってプレーすることは本当に大事」

2022.8.29

2016年8月。栃木・作新学院高の一塁手として第98回全国高等学校野球選手権大会で頂点に立った入江大生投手(現横浜DeNA)はその直後、まさかの知らせに耳を疑った。

写真提供=Full-Count

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2016年夏に作新学院高で甲子園優勝、本来は投手も野手としてU-18代表入り

 2016年8月。栃木・作新学院高の一塁手として第98回全国高等学校野球選手権大会で頂点に立った入江大生投手(現横浜DeNA)はその直後、まさかの知らせに耳を疑った。

「甲子園が終わった時に『U-18代表に選ばれました』と言われました。僕でいいんだって率直にビックリした気持ちでしたね」

 確かに、準決勝前くらいのタイミングで野球部部長を務める先生から書類を渡され、記入した覚えはあったが、それが野球日本代表「侍ジャパン」U-18代表に関するものとはつゆ知らず。さらには、甲子園こそ一塁手で出場していたが、本来は投手。「今、埼玉西武にいる今井(達也)にエースを取られたから野手をやっていたので、日本代表だなんてビックリしました」と振り返る。

 U-18代表に野手で選出されたのには理由がある。投手ながら打撃にも定評があり、高校3年の夏は栃木県大会から甲子園決勝まで全10試合で打率.486、4本塁打、21打点の活躍。甲子園では史上7人目となる3試合連続アーチをかけ、母校の54年ぶり2度目の全国制覇に貢献した。登録選手は18人と限られた「第11回 BFA U18アジア選手権」に、投打での活躍が期待できる入江選手は適任だった。

 代表チームが招集された日。「代表とは無縁だと思っていた」という入江選手の周りには、横浜高の藤平尚真投手(現東北楽天)、履正社高の寺島成輝投手(現東京ヤクルト)、木更津総合高の早川隆久投手(現東北楽天)ら、つい先日まで甲子園を湧かせた世代のトップたちが集まっていた。

「○○高校のあの選手だ、××高校のあの投手だ、と、どちらかというとファン目線で見ていたので、いざ一緒のチームになるとちょっと不思議な気持ちと同時に、一緒に戦うんだったら心強いなという気持ちが沸いてきました」

インドネシア代表が教えてくれた「代表として諦めずに戦う気持ち」

 直前合宿を経て、開催地の台湾・台中市へ出発。「一緒に過ごす時間が増え、試合を重ねるに連れて、どんどん仲良くなりました」の言葉通り、だんだん結束を強めた日本はオープニングラウンド初戦から決勝まで、全6試合に勝利。わずか1失点しか許さない、ほぼパーフェクトな戦績で優勝を飾った。

 左翼、一塁、DHとして全試合スタメン出場を果たした入江選手は、打率.300、1本塁打、3打点をマーク。マウンドに上がる機会はなかったが、初めての国際舞台を心の底から楽しみ、「一挙手一投足に自信とパワーを感じる選手たちと一緒に戦い、自分も自信が持てるようになりました」と話す。

 国際大会に参加したことで得た気付きもあった。オープニングラウンド第3戦のインドネシア戦。野球発展途上国のインドネシアを相手に、日本は無安打無四球のパーフェクトで35-0(5回コールド)と大勝した。

「結果的には大勝した試合でしたが、どれだけ点差が離れてもインドネシアの選手は諦めなかったし、どれだけ打球を遠くに飛ばされても必死にプレーしていた。そういう諦めない姿勢を間近に見て、感じるものがありました。野球が上手いとか下手だとかではなく、国の代表として諦めずに戦う気持ちを学びました」

 野球の競技人口が少なく、普段の練習もままならないインドネシア代表選手たちは、本格的な球場で試合をできることが嬉しくてたまらない様子で、点差が開いても三振しても笑顔が絶えず。入江選手は甲子園とはまた違った野球を見た思いだったという。

U-18代表で学んだ「自信を持ってプレーする」大切さ

 高校卒業後、U-18代表メンバーの多くはプロの道を選んだ一方、入江選手は明治大学に進学。投手に専念し、磨きをかける中でも、U-18代表メンバーから受ける刺激は大きかった。

「U-18の選手はほぼプロに入ったので、大学生の時は『この4年間を無駄にしない』という意味でも当時のメンバーの活躍はチェックしましたし、僕自身の調子が悪い時に『こんなんじゃダメだ』と思わせてくれたのもみんなの活躍。自分がプロ入りした今ももちろん、常に気になる存在ではありますね」

 プロ1年目の昨季は開幕ローテ入りを果たすも、8月に右肘のクリーニング手術を受け、思うような働きができなかった。だが、今季はリリーフとして開幕1軍入りを掴み、5月5日の中日戦でプロ初勝利を記録。今ではセットアッパーの大役を任されるだけの信頼を勝ち取った。

 一つ一つ階段を上がる過程で、ふと思い出すのがU-18代表で得た学びだ。

「年齢を重ねるにつれて、野球自体を難しく考えがちですが、シンプルに考えた時、自信を持ってプレーするということは本当に大事。それを学べたのはU-18代表だったと思います」

最後の夏を終えた高校3年生にエール「まずは支えてくれた方々に感謝を」

 今年もまた夏の甲子園が終わり、多くの高校3年生は部活動に一区切りをつけた。そして、3年ぶりに全国から招集されたU-18代表の精鋭20選手は、9月9日から米国フロリダ州で開催される「第30回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ」で海外の同世代トップと戦ってくる。

 それぞれの夏を過ごした高校3年生に、入江選手はこうエールを送る。

「自分が好きで始めた野球をここまで続けられたのも、周りで支えてくれた方々のおかげだと思います。この先、野球を辞めるにしても続けるにしても一段落つくということで、まずは支えてくれた方々に感謝を伝えてほしいですね。ここから色々な道があると思いますが、この高校3年間で培った経験や体験は間違いなく財産になります。これから先、苦しいことがあっても、高校で頑張った経験を思い出し、感謝を持って歩んでいってほしいと思います」

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