侍ジャパンU-12代表、韓国に劇的勝利 3位決定戦進出に仁志監督「この子たちは目に見えて成長した」

2017.8.6

台湾・台南市で行われている「第4回 WBSC U-12ワールドカップ」は5日、大会9日目が行われ、スーパーラウンドの最終戦3試合が行われた。ここまでスーパーラウンド2勝2敗の侍ジャパンU-12代表は、韓国と対戦。終盤になって5点のビハインドを背負う崖っぷちの状況となったが、そこから奇跡の大逆転でサヨナラ勝ちを飾り、3位決定戦への進出を決めた。

写真提供=Getty Images

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5点ビハインドから2イニングで逆転、山口が「自分が決めてやる」とサヨナラ打

 台湾・台南市で行われている「第4回 WBSC U-12ワールドカップ」は5日、大会9日目が行われ、スーパーラウンドの最終戦3試合が行われた。ここまでスーパーラウンド2勝2敗の侍ジャパンU-12代表は、韓国と対戦。終盤になって5点のビハインドを背負う崖っぷちの状況となったが、そこから奇跡の大逆転でサヨナラ勝ちを飾り、3位決定戦への進出を決めた。

 次々と選手たちがベンチから駆け出していった。誰もが諦めかけてもおかしくない絶望的な状況から、奇跡の大逆転勝利。サヨナラ勝ちが決まると、侍ジャパンU-12代表の選手たちの歓喜の輪が広がった。その中心、劇的な幕切れとなった日韓戦に終止符を打った山口滉起(大阪東リトル)がいた。

 1点ビハインドで迎えた最終回の攻撃。先頭の山田脩也(荒町タイガース)が四球で出塁すると、岡田光平(ナガセボーイズ)がプレッシャーのかかる状況で犠打を決め、得点圏に走者を送った。森大輔(中百舌鳥ボーイズ)、戸井零士(松原ボーイズ)が四球で続き、1死満塁とすると、ここで打席に立ったのは、大会途中に4番に座るようになった山口だった。

「自分が決めてやる」

 狙っていた。2球連続ボールとなり、3球目はファール。そして、4球目だった。真ん中付近に来たストレートを逃さなかった。快音を残した打球は中堅の頭上を越えていく。山田が同点のホームを踏む。さらに、森も三塁ベースを蹴って本塁へ。歓喜に沸くチームメートの前で決着を告げるホームを踏んだ。サヨナラの2点適時二塁打となった。

守備でも再三の好プレー、仁志監督「彼らの成長だと思う」

「さすがに5回に5点も取られちゃうと、大人の感情からすると、ちょっとキツイなと、半分諦めかけになっちゃうところなんですけど。そこは子供ならでは、なんでしょうね。何点負けていても、点が入りそうな場面になると、盛り上がってくる傾向があるんです」

 仁志敏久監督も驚いた。奇跡のようなサヨナラ勝ち。侍ジャパンU-12代表は、一度は崖っぷちの状況に追い込まれていた。

 両チーム無得点で迎えた5回に試合が動く。ここまで無失点と好投していた南澤佑音(大東畷ボーイズ)がつかまった。先頭のイ・スンウ、続くチ・ソンウンに連打を浴びるなど、無死満塁とされると、3番チャン・チョング、4番ウ・チョンギュに連続適時打を浴びた。あとを受けた戸沢快生(秋田ファイターズ)も韓国打線の勢いを止めきれず、この回一気に5点を失った。

 敗れれば、決勝進出どころか、3位決定戦にも出場出来ず、大会を終えることになる。若き侍たちは、この窮地から這い上がった。その裏、先頭の岡田の放った飛球を追った遊撃と左翼が激突し、落球(記録は左翼の失策)。そこから怒涛の反撃に転じた。森、戸井、そして山口の3連打で3点差。さらに南澤のゴロを相手の二塁がエラーして2点差とし、戸沢が右犠飛を放って1点差に詰め寄り、最終回の逆転サヨナラ劇への流れを作った。

「この子たちは目に見えて成長したと思いますね。始めに来た時と今では違う子のようになっている」。劇的な逆転サヨナラ勝ちを掴んだ選手たちに、仁志監督は目を細める。技術面、精神面など全ての部分で成長したメンバー。それはプレーにも現れていた。

 2回2死二塁では、中前へ抜けようかというゴロを遊撃の主将・徳永光希(香芝ボーイズ)がダイビングキャッチ。素早く送球し、間一髪のところで打者をアウトにした。4回2死一塁では、イ・カンに右中間を破られたが、打球を処理した戸井、二塁の太田和煌翔(千葉市リトル)が完璧な中継プレー。本塁を狙った一塁走者を、ギリギリのところで刺した。「序盤の緊迫した場面を守りで凌いだというのは彼らの成長だと思う」と仁志監督。度重なる守備のビッグプレーが、最後のサヨナラ勝ちに結びついた。

3位決定戦はメキシコと対戦「後悔のない、達成感を得られて終われれば」

 そして、サヨナラ打を放った山口だ。「最初の打席なんかは力が入り過ぎちゃって、あんなに高いボールを振ってましたけど、最後は、ここは頼むっていうところで打ってくれるという心強さは、山口ならではだと思いますね」と仁志監督。初回の1打席目は内角高めの明らかなボールを2度空振りして三振。2打席目も空振り三振に倒れていた。

「監督から力まずに、軽く、コンパクトに振っていけと言われました」。5回の3打席目は、うって変わって軽打で右中間に運ぶと、最後の最後は中越えのサヨナラ適時二塁打とした。

「このチームに来た時は、申し訳ないですけど、そんな頼れる4番、エースになる雰囲気はなかった」と山口を評した仁志監督。オープニングラウド初戦のチェコ戦はベンチ。2戦目のメキシコ戦もベンチスタートで投手として途中出場だった。

 ただ、このメキシコ戦で「素晴らしい投球、素晴らしいバッティングを見せてくれた」と立ち位置が一変した。エースで4番という中核を任され、チャイニーズ・タイペイ戦で3ランを含む2安打4打点と活躍し、この日はサヨナラ打を含む2安打。「山口が再三チームを救ってくれた。チームの中の立場をすごく分かってくような子になってくれました。最後の打席は『オレのところに回ってきたな』くらいの堂々とした感じでしたよね」と指揮官も驚くほども勝負強さを発揮した。

 この勝利でスーパーラウンド3勝2敗に。午前中にはアメリカがメキシコに12-10で勝利し、夜に行われた試合ではチャイニーズ・タイペイがニカラグアに9-1で勝ったため、両国が4勝1敗で決勝進出。侍ジャパンU-12代表はスーパーラウンド3位が確定し、大会最終日にオープニングラウンドで敗れたメキシコと戦うことが決まった。

「短いようで、今回の子供たちと一緒にいる時間はずごく長く感じました。最後の最後、みんなでまた全員で野球をやって、後悔のない、達成感を得られて終われればと思います。今回も今回で、すごく特徴のあるチームだったので、こちらも非常に思い入れがある。最後にもう1回、僕も監督をやらせてもらえるので、非常に楽しみにしています」と仁志監督。泣いても、笑っても、今大会最後の試合。一丸となって激戦をくぐり抜けて来たチームとしての集大成を見せる時となる。

【了】

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