侍ジャパンU-12代表がスーパーラウンド進出決定、前回準Vの強敵に大逆転勝利

2017.8.3

台湾・台南市で行われている「第4回 WBSC U-12ワールドカップ」は2日、大会6日目が行われ、侍ジャパンU-12代表はダブルヘッダーの2試合目で、オープニングラウンド・グループAで最も強敵とされていた開催国チャイニーズ・タイペイに劇的な逆転勝ちを収めた。4点ビハインドの状況から、5、6回に7点を奪い取って、7-5の大逆転勝利を収めた。

写真提供=Getty Images

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終盤5、6回に大量7点を奪って、4点ビハインドを返す

 台湾・台南市で行われている「第4回 WBSC U-12ワールドカップ」は2日、大会6日目が行われ、侍ジャパンU-12代表はダブルヘッダーの2試合目で、オープニングラウンド・グループAで最も強敵とされていた開催国チャイニーズ・タイペイに劇的な逆転勝ちを収めた。4点ビハインドの状況から、5、6回に7点を奪い取って、7-5の大逆転勝利を収めた。

 初回にいきなり先制点を許すと、3回、4回にも点を加えられ、じわじわとリードを広げられていった侍ジャパンU-12代表。打線もチャイニーズ・タイペイの先発で、U-12世代にしてフォークを操るスン・イーレイ、そして、この日最速130キロをマークした2番手クオ・シュウェイの前に、走者は出せどもなかなか得点が奪えず、劣勢に立たされた。

「正直、タイペイを相手に4点差はキツイなと思いました」と仁志敏久監督も感じた重苦しい空気。これを一振りで振り払ったのは、この日4番に入った山口滉起(大阪東リトル)だった。5回。森大輔(中百舌鳥ボーイズ)、戸井零士(松原ボーイズ)が郭から連続四球を選び、1死一、二塁のチャンスを作った。

 この場面でチャイニーズ・タイペイは3番手チェン・ユーエンへとスイッチ。ここで仁志監督は打席に入る前の山口に耳打ちした。

「必ず外寄りのボールが来るから、入ってくるボールを思い切り引っ叩け」

 左腕が投じた3球目は、まさに指揮官の指示通り。外角のボールからストライクへと入ってくるスライダーを、山口が完璧に捉えた。打球は台南の夜空へと舞い上がり、右中間フェンスを越えた。1点差に迫る3ラン。値千金の一発は、ベンチの空気を一気に明るくさせた。

投打で活躍の山口、4回失点危機に「絶対にオレが抑えてやる」

 この一発で勢い付いた侍ジャパンU-12代表打線は、最終回の6回、ついに試合をひっくり返す。先頭の主将・徳永光希(香芝ボーイズ)が四球で出塁し、山田脩也(荒町タイガース)が犠打。岡田光平(ナガセボーイズ)が四球、森が右前安打で続いて1死満塁とすると、「緊張しました。とにかくランナーを返したいと思って、強い気持ちで打ちました」と戸井が土壇場で同点に追いつく右前適時打。この起死回生の一打で出来た“押せ押せムード”は、一気にチャイニーズ・タイペイを飲み込んだ。

 続く山口の打席で、初球に相手バッテリーが暴投。岡田が生還し、ついに勝ち越した。さらに、山口も右前適時打を放って加点。南澤佑音(大東畷ボーイズ)の内野ゴロの間にも1点を追加した。この回一挙4得点。1点のビハインドから、逆に3点のリードを奪った。

 山口は投げても、奮闘した。4回2死一、三塁でマウンドに上がると、「絶対にオレが抑えてやると思っていました」と120キロを超える力強い真っ直ぐで、チャイニーズ・タイペイ打線をねじ伏せた。3点リードの最終回は、力みから2つの四球を与えて1点を許したが、何とかしのいだ。1死一、三塁のピンチでは仕掛けてきた二盗に対し、捕手の森が投げた送球を右腕がカット。飛び出した三塁走者を挟殺し、窮地を脱した。

「ピッチャーカットなんて、実は練習時間が短くてやってなかったんですけど、子供たちが考えてやった」と仁志監督。江尻慎太郎コーチ曰く「僕らは二塁には投げるなと指示していただけ。子供たちが考えてやったことでしょうけど、あれはミラクルでしたね」。首脳陣も予想だにしなかったプレーも飛び出し、チャイニーズ・タイペイの反撃を断ち切って勝利をもぎ取った。

 前回大会準優勝の強敵を倒す大きな1勝。この勝利には、先の挟殺が示すように、子供たちの成長の跡が確かにあった。「こんなに打線が繋がると思ってなかった。こっちに来て、技術的にも変わってくれた子が何人もいてくれて。打撃が小さかったんですね、集まった時には」と仁志監督。選手たちは夜間の素振りを自発的に希望して、毎晩バットを振ってきた。

大会を経ながら成長する選手達、仁志監督「最初に集まった時よりは雲泥の差」

「こっちもアドバイスしながら、強く振るコツを伝えたんですけど、彼らはそれを習得しようと、本当に一生懸命、ずっと練習している。その結果がすごく出ている」

 小さい体に秘める高い向上心が、短期間での成長に繋がっている。

「最初に集まった時よりは雲泥の差だと思いますね。こちらに来て、精神的にも成長してくれている。この大会が終わった頃にはかなり変わっていると思いますね」と、仁志監督は子供たちの成長ぶりに目を細め、「幼いところもたくさんあるけど、試合をするごとに成長してくれている。今日の試合をまた起点にして、また変わってくれると思います」と、更なる成長に期待した。

 グループAで最大の敵と見ていたチャイニーズ・タイペイを下して3勝1敗とし、スーパーラウンド進出が決まった侍ジャパンU-12代表。スーパーラウンドが始まる3日は、まず午前9時から、1日に降雨サスペンディッドゲームとなっていたブラジル戦の続きを戦う。これに勝てば、グループAを1位で通過することが出来る。

「今日すごい試合をやってしまったので、気が抜けないように。今日以上に気が抜けない試合が(スーパーラウンドで)3試合続く。また同じ気持ちで出来るように子供達にも話をしたいと思います」と仁志監督は言う。日に日に逞しくなる侍ジャパンU-12代表。悲願の世界一に向け、この白星は大きな1勝となりそうだ。

【了】

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