「同じスポーツだけど別物」 千賀滉大がWBCで痛感した「世界との違い」

2017.6.12

3月に開催された第4回ワールド・ベースボール・クラシック™(WBC)で、野球日本代表「侍ジャパン」は2大会連続ベスト4という成績に終わった。再び日本が世界の頂点に返り咲くために、何が必要なのか――。今回、侍ジャパンで唯一、大会ベストナインに輝いた福岡ソフトバンクの千賀滉大投手に世界との違いや今後必要となる取り組みなどについて語ってもらった。

写真提供=Getty Images

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侍ジャパンで唯一WBCベストナイン選出、千賀が語る「世界との違い」

 3月に開催された第4回ワールド・ベースボール・クラシック™(WBC)で、野球日本代表「侍ジャパン」は2大会連続ベスト4という成績に終わった。世界一奪還を期待されたが、初優勝したアメリカ代表に準決勝で惜敗し、世界一の夢は叶わなかった。

 第1回、第2回大会と連覇しながらも、その後は2大会連続ベスト4で敗退。再び日本が世界の頂点に返り咲くために、何が必要なのか――。今回、侍ジャパンで唯一、大会ベストナインに輝いた福岡ソフトバンクの千賀滉大投手に世界との違いや今後必要となる取り組みなどについて語ってもらった。

――WBCで、アメリカや他国と、日本の野球に違いは感じましたか。

「期間中、“野球”と“ベースボール”は本当に違うなと思いましたね。同じスポーツの区切りではありますけど、別物だなと思うほど、感じました」

――具体的に、その違いを教えていただけますか。

「ボールの違いがあるんですけど、そのボールの違いによって、野球の仕方が全然違います。日本のボールも、アメリカのようなボールなら、4シームを投げるピッチャーではなく、2シームを投げるピッチャーが増えていたかもしれない。打者も日本の打者は足を上げて前で打ちますけど、向こうの打者はその場で、体の近くで捉える。投げていて、全然違うなと思いました。

 フォークも、日本なら前で捌くからファールになったりするんですが、向こうの選手はそれを体の近くでガーンって打っても、あれだけ飛ぶ。凄いな、全然違うな、と思いましたね」

――本質的に違うと?

「本質が違うのはありますね。確かにパワーがあるからこそ、打者はそういうことが出来るのかもしれないですけどね。日本も、昔から手元で動くボールを投げていたら、今の打撃技術には辿り着いてないかもしれない。凄い違う道を歩んでいるものなんだな、と実感しました」

得意のフォークにも影響、「縫い目が“低くて”滑る」

――メジャーでは、フォークやスプリットが高い効果を発揮すると言われますが、やはりフォークは通用すると感じましたか。

「そうですね。4シームとフォークが効きますね。向こうの打者は動く球を近いところで捉えるので、4シームのように手元でピュッて来る球は結構ファールになることが多いですね。もちろん甘いところに行ったら打たれますけど、向こうで活躍している日本人投手は、みんな4シームをちゃんと投げられる投手ですし。

 ポイントを後ろにして打つ分、フォーク系はちゃんと投げられたら、日本みたいに崩れて前では打たないので、その分、低めのケアは出来ないのかな、と。ちゃんと投げられたら、通用するボールかなと感じました」

――ボールの違いで、フォークの変化は変わりましたか?

「変わりましたね。ボールの違いで、滑ったら怖いので、フォーム的にも余計に力が入っていました。なので、すごい手前でワンバンしたり、逆に変なところに抜けたりもしましたし。だから、フォークを投げる投手が(アメリカには)あまりいないんだろうな、とも思いました」

――やはり、WBC球は相当投げにくいのですか。

「縫い目が“低くて”滑るので。向こうのボールは縫い目が高くて滑るって世間ではよく言われているじゃないですか。全然高くないですからね。日本のボールの方が倍くらい高いですよ。めちゃめちゃ縫い目が低い。テレビ中継とかでも言われているじゃないですか。全然真逆なんだけどな、と思いましたね。もっと恐ろしいボールなんですけど。引っかかるところがないんですよね。ロジンも違うので、ロジンでやっていくしかなかった」

――将来に向けての話も聞かせていただけますか。この先、日本が世界一になるために必要なものがあるとしたら、何か思い当たるものはあるでしょうか。

「どの口が言うんだって話ですよね、僕なんかが言ったら(笑)。本当に、絶対に世界一を取るためにやると言うのであれば、日本のボールを変えてしまう。日本のプロ野球でも、アメリカと同じようなボールにするくらいまで、やってしまってもいいかもしれません。それか、準備期間をもっと長く取れるようにすることですかね。今回は11月くらいから触り始めて、5、6か月くらい触ったわけですけど、あのボールに馴染むためには、もっと準備期間が必要なのかなと思いましたね。打者の方も打撃練習していて、ボールが飛ばないと言っていました。大きくて、ちょっと重いので。対応に苦しんだのかな、と思いますね。難しいですよね、向こうのベースボールがベースになっているので」

適応に苦心、「完全にアジャストしたかと言えば、今でもその自信はない」

――そのボールですが、投手の中でもアジャスト出来た人、最後までアジャストに苦労した人がいました。それぞれの感覚の問題なのでしょうか。

「感覚もあると思いますね。ボールの違いは、指先が繊細な人ほど『何だこれ』って思うと思いますね。僕も苦しんでいたほうなので。僕は何とか誤魔化し切れたというだけで、完全にアジャストしたかと言えば、今でもその自信はないです。やっぱり準備期間の話になるのかな、と。誰もが、そう言うと思います」

――東京ヤクルトの秋吉亮投手のように、全く苦労しない投手もいましたよね。

「それは、本当に不思議です。平野(佳寿)さんは、ちょっと最初はフォークは難しいとは言っていましたけど、秋吉さんとか、牧田(和久)さんのように、いきなり投げて、いきなり対応出来た人もいたので。それは凄いですね。上投げはダメなんですかね」

――WBC本大会を戦う中で、感じた日本の強み、武器もあると思います。

「日本の野球の精密さ、丁寧さ、緻密さは凄いなと思いましたね。チームプレーは日本人は放っておいても出来ること。ピッチングに関しては、ちゃんとコースに投げ切るところは投げ切るとか、ですね。

 アメリカの凄い投手は、球が速くて、真ん中に投げても2シームが凄い動いて打ち取れるとかですけど、菅野(智之)さんとかはこのコースにこうやって投げるから抑えられる、とかの計算が出来るので凄い。ピッチングで言えば、そういうところですね。打者のことはちょっと分からないですけど、日本のレベルは世界の中でもやっぱり高いと思いました」

【了】

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