世界はWBCで「侍ジャパン」をどう見たか 各国指揮官の言葉から日本の現在地を探る

2017.4.10

野球日本代表「侍ジャパン」は、3月の第4回ワールド・ベースボール・クラシック™(WBC)で2大会連続ベスト4という成績に終わった。惜しくも王座奪還はならなかったが、日本が世界トップクラスであることを改めて証明した今大会。世界は「侍ジャパン」の野球をどう見たのか。全対戦相手の指揮官のコメントから、探っていきたい。

写真提供=Getty Images

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全対戦相手の監督による「評価」を紹介、「日本は世界トップレベルのチーム」か

 野球日本代表「侍ジャパン」は、3月の第4回ワールド・ベースボール・クラシック™(WBC)で2大会連続ベスト4という成績に終わった。準決勝では、優勝した米国に1-2で惜敗。しかし、小久保裕紀監督の元、最大の強みである「投手力」「小技」を生かした緻密な野球に長打力を加えた新たなスタイルで1、2次ラウンドは6連勝を飾り、準決勝もメジャーリーガー揃いの米国と互角に渡り合った。

 惜しくも王座奪還はならなかったが、日本が世界トップクラスであることを改めて証明した今大会。世界は「侍ジャパン」の野球をどう見たのか。全対戦相手の指揮官のコメントから、探っていきたい。

 まずは、キューバのカルロス・マルティ監督。日本はキューバを1次ラウンド初戦で打ち合いの末に11-6で破り、2次ラウンド第2戦でも8-5と点の取り合いで勝利した。日本の投手陣から4点以上を奪ったのは、キューバとオランダだけだった。それでも、相手指揮官は「侍ジャパン」を手放しで称えている。

「我々は日本の投手陣から6点を奪えたことを満足している。日本の投手陣はとても堅実でレベルが高い。打者も全員が素晴らしい。彼らのスイングスピードはとても速い。チーム全体のレベルが高い。これまで何度も言っているが、日本は世界トップレベルのチームの1つ。これは疑いようがない」

 初戦の試合後には、このように話していたマルティ監督。2次ラウンド第2戦で再戦したときも、日本の強さに脱帽していた。この試合では、打線がエース右腕の菅野智之投手(読売)を攻略しているが、評価は変わらなかった。

「この大会で2度、日本と対戦したが、攻撃陣は本当によくやった。日本は高いレベルの選手を揃えるが、彼らとよく戦った。日本は菅野だけでなく、他の投手も素晴らしいが、攻撃陣はよくやったと思う。何度も言っているが、日本は今回のWBCでベストのチームの1つ。守備は素晴らしく、ピッチャー陣もとてもいい。(打線も)何人かのプレーヤーはとても、とても良く、ボールを強く叩くことが出来る」

 野球大国キューバの指揮官は、大会中に何度も「侍ジャパン」の素晴らしさを「世界トップクラス」と強調していた。

今大会で高い評価を得た日本のエース菅野「脱帽という表現が当てはまる」

 1次ラウンド第2戦で対戦し、4-1で勝利したオーストラリアは、ボストン・レッドソックスで長年に渡って環太平洋地区担当スカウトを務め、現在はロサンゼルス・ドジャースの極東担当スカウトを任されているジョン・ディーブル氏が指揮官を務める。日本の選手にも詳しいディーブル監督は、この試合で好投したエース菅野、本塁打を放った中田翔内野手(北海道日本ハム)、筒香嘉智外野手(横浜DeNA)に脱帽した。

「日本のピッチャーは非常によかった。菅野は日本で一番いいピッチャー。ああいう投球をされたらお手上げです。菅野は、たとえ大谷翔平(投手、北海道日本ハム)が(WBC日本代表に)いたとしても非常にいいピッチャー。インパクトを受けました。あとは、中田と筒香。我々は彼ら2人に痛めつけられた。勝てたと思った展開でしたが、野手2人にやられました。菅野のようなスピードのボールを投げるピッチャーは(オーストラリアには)いない。96、97マイル(約155キロ、157キロ)はメジャーレベルです。フルカウントまで粘るのも手でしたが、脱帽という表現が当てはまる」

 1次ラウンド第3戦で、7-1で快勝した中国は、かつてシアトル・マリナーズで監督を務め、現在はフィラデルフィア・フィリーズのバッテリーコーチのジョン・マクラーレン氏が指揮官。メジャーのチームを指揮した経験を持つ同監督の目に、今大会の日本はどう映ったのか。

「日本はこのトーナメントで強いチームの1つです。とてもいい印象を受けた。私は(小久保)監督が好きですね。ベンチでの熱意も好きです。彼らはお互いの力を引き出している。(チームとして)素晴らしい化学反応を起こし、力を生み出している。本当にいい投手を何人か揃えている。ブルペンの投手は、メジャーのいい打者にも渡り合える。私は二塁手(菊池涼介内野手=広島東洋)と左翼手(筒香)が気に入りました。いいピッチャーも何人かいました。とても感銘を受けました」

 また、昨年11月に強化試合で日本と対戦したオランダは、内野にメジャーリーガーの一流選手を加えて、今大会に臨んできた。2次ラウンド初戦で、日本は4時間46分の大熱戦を演じたが、最後は中田の決勝打が延長11回に飛び出して勝利。ヘンスリー・ミューレンス監督は元ヤクルトの強打者で、現在はサンフランシスコ・ジャイアンツで打撃コーチを務める。日本戦の後は激戦の末の敗戦にショックを見せながらも、素直に勝者を称えた。

「日本は非常にいいチーム。ミスをしないし、ディフェンスも素晴らしい。今日は(守備で)いくつか非常にいいプレーがあった。彼らの打線は、いいバッターが次々と出てくる。そして、いい打席を重ねる。ピッチャーもいいところに投げてくる。(最後は)中田との勝負を決断したが、悔やむべきは投球が高めに浮き、捉えられてしまったこと」

優勝した米国の名将も称賛「本当に感銘を受けた」

 日本が堅実な野球をするという評価は、どの監督も同じようだ。準決勝進出をかけて2次ラウンド第3戦で対戦し、日本が8-3で下したイスラエルのジェリー・ウェインスタイン監督も「隙がない」と高く評価している。知的な采配でイスラエルの快進撃を演出した指揮官は、2次ラウンド敗退が決まった後にこう振り返った。

「負けたことは残念だが、素晴らしい2チーム(日本とオランダ)に負けてしまった。日本は卓越した投手力があるし、素晴らしい隙のない野球をプレーした。さすがとしか言いようがなかった。野球は試合の流れが重要。日本は素晴らしい投球、タイムリーな打撃で流れを引き寄せた」

 そして、準決勝で日本を下した米国は、ジム・リーランド監督が率いた。フロリダ・マーリンズでワールドシリーズ制覇を果たし、ピッツバーグ・パイレーツやデトロイト・タイガースを地区優勝の常連に押し上げてきた名将は、米国を初のWBC制覇に牽引。スーパースターの選手たちを、1つのチームとしてまとめ上げる手腕に優れたリーランド監督の目に、力を合わせることで強大な力を発揮する「侍ジャパン」の野球は新鮮に映ったようだ。

「彼らは基礎に忠実な、しっかりしたチームだ。それは知っていた。でも、彼らの投手にどれだけ感銘を受けたかは伝えられない。本当に良かったと思う。外角いっぱいに速球をコントロールしていた。彼らは3ボールからスライダーを投げてきた。かなり印象的だった。今夜の日本の先発投手(菅野)、彼はメジャーリーグ級の投手だ。彼はいいね。とても感銘を受けた」

 まずは、菅野を初めとした投手陣を絶賛。その上で、日本の野球について分析している。「侍ジャパン」はこの試合でくしくも、他国の監督たちが絶賛した「堅実さ」に綻びが出て、守備のミスから2点を失った。リーランド監督はそれに言及した上で、今回の日本の野球はただの「スモール・ベースボール」ではなかったと評価している。

「本当に感銘を受けた。前もって知っていたけどね。今日彼らはいくつかエラーを犯したとは思うが、試合を正しく行った。スモール・ベースボールとリトル・ビッグボールの合いの子をやっていた。我々がするようなビッグ・ベースボールとまではいかないけれどね。バントをして、走者を動かし、盗塁もしてきた」

 堅い守備、投手力を生かしつつ、筒香や中田、山田のような一発で試合を決められる強打者も揃える。従来の「スモール・ベースボール」に長打力を加えた小久保ジャパンの野球で、世界が日本に抱く印象は少し変わったと言える。中心選手はまだ若く、全盛期をこれから迎えるだけに、今後も日本にしか出来ない野球で“進化”を続けていきたいところだ。

【了】

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