2大会連続のベスト4の侍ジャパン、第4回WBCで得た収穫と課題

2017.3.27

野球日本代表「侍ジャパン」は、第4回ワールド・ベースボール・クラシック™(WBC)の準決勝で米国に敗れ、2大会ぶりの世界一はならなかった。米国は決勝でプエルトリコに8-0で快勝し、4大会目にして初の世界一に輝いた。わずかな差で頂点に届かなかった侍ジャパンだが、今大会で手にした収穫、そして課題とはいったい何だったのか。小久保裕紀監督の言葉から探る。

写真提供=Getty Images

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指揮官が胸を張った「打力アップ」、「今後も伸ばしていけばいい」

 野球日本代表「侍ジャパン」は、第4回ワールド・ベースボール・クラシック™(WBC)の準決勝で米国に敗れ、2大会ぶりの世界一はならなかった。東京ドームで行われた1、2次ラウンドは6戦全勝で突破。しかし、米カリフォルニア州ロサンゼルスのドジャースタジアムに舞台を移した決勝ラウンドでは、初戦で1-2の惜敗という結果に終わった。

 米国は決勝でプエルトリコに8-0で快勝し、4大会目にして初の世界一に輝いた。わずかな差で頂点に届かなかった侍ジャパンだが、今大会で手にした収穫、そして課題とはいったい何だったのか。小久保裕紀監督の言葉から探る。

 第1、2回大会と小技を絡めた緻密な野球で2度の世界一に輝いた侍ジャパンだが、今大会の東京ラウンドでは打力が光った。4番の筒香嘉智外野手(横浜DeNA)、5番の中田翔内野手(北海道日本ハム)がともに3本塁打、8打点をマーク。さらに、山田哲人内野手(東京ヤクルト)が2本塁打、松田宣浩内野手(福岡ソフトバンク)、小林誠司捕手(読売)が1本塁打と、NPB公式球よりも飛距離が出ないとされているWBC公式球で、6試合で計10本塁打が飛び出した。東京ドームでは実に計46点を奪っている。

「今回、あれだけホームランが出たのは以前よりトレーニングが発達してきて、向こうのメジャーのボールにも負けないくらいの筋力アップが出来ていた証。そこは今後も伸ばしていけばいい。今回、対戦した選手が世界のトップ(投手)のピッチャーのボールを経験できたことも1つの財産になると思います」

 小久保監督は帰国直後の記者会見で日本の「打力アップ」に確かな手応えを示した。

 ただ、準決勝では米国投手陣が投げるツーシーム、カットボールといった、打者の手元で動くボールに苦戦。4安打に抑え込まれ、得点は菊池涼介内野手(広島東洋)のソロ本塁打による1点のみに終わった。同じ準決勝でプエルトリコに敗れた前回大会から続く課題を解決することはできなかった。

「東京(1、2次ラウンド)のときに対戦していた投手とは正直、ランクがちょっと上回ってましたね。当然、外国人なので動くボール主体で投げてくるんですけど、そのスピードであったり、動き幅であったり。打線の状態はよかったと思いますけど、それでもほとんど芯に当てることが出来ないまま試合が終わったので。正直、1点差以上のものを、打線に関しては感じました。

 出てくる投手は全部ツーシーム系のボールを投げるので、それを強引に打ちに行ったら(相手の)術中(にはまる)ということで、できるだけコンパクトにセンターへ(打つ)と試合前に話しましたが、それすらさせてもらえなかったという感じでした。(メジャーリーグは)動くボールが主体ですけど、日本球界はフォーシーム主体なので。そこを改善していくのは難しいと思います」

日本が誇る投手陣には「トップ選手は十分に通用すると証明してくれた」

 世界一奪還へ向けて引き続き突きつけられた課題を乗り越えていくことは出来るのか。「当然そういう風にしていかないといけないと思いますし、今回選出した選手はまだ若い。これから数年、日本球界を牽引できる選手たちだと思う。そこに向かって目標を高く持ってやってほしい」。指揮官は、今大会で侍ジャパンの中軸を担った若き選手たちに期待を寄せた。

 一方で、確かな手応えを示したのが、開幕前から日本の「強み」と表現していた投手陣。1次ラウンドでは石川歩投手(千葉ロッテ)、菅野智之投手(読売)と先発陣がしっかり試合を作り、2次ラウンドでは先発が崩れても救援陣が立て直した。

 米国戦ではスター選手を揃えた相手打線に対して菅野が6回3安打1失点(自責0)の快投。救援陣も渡り合った。2番手の千賀滉大投手(福岡ソフトバンク)は守備陣のミスもあって2イニング目の8回に失点し、敗戦投手となったものの、7回の先頭打者から4連続三振を奪うなど鮮烈な投球を披露。4度の登板で大会トップの計16奪三振をマークし、日本から唯一、大会ベストナインに選出された。

「菅野はキューバ戦(2次ラウンド第2戦、4回7安打4失点)での登板が自分の中で納得いかなかったと思うが、見事に修正して、あの全員メジャーの、しかも(メジャー球団の)中心選手たちの(米国)打線をしっかり抑えた。日本の投手陣、トップの選手は十分に通用すると証明してくれた。大会通じて中継ぎ、抑えのところで日本の投手陣がゲーム作ってくれた。縦に落ちる変化があるピッチャーは有効なんだと再認識しました。

 千賀は最初は構想的には第2先発、中継ぎでとホークスには話していたが、(先発した2次ラウンド第3戦の)イスラエルに投げてもらったところも含めて、奪三振率とか、世界に衝撃を与えたというところでの選出じゃないかと思います」

 次大会以降も投手力が日本の生命線になっていくことになりそうだ。

信頼関係で結ばれた監督と選手、小久保監督は「一緒に戦えたことは私自身の人生の宝物」

 そして、最大の強みとなったのが、日本のチーム力。監督、選手が強固な絆で結ばれたチームは試合を重ねるごとに強くなり、激戦を次々とものにしていった。筒香、中田といった主砲は小久保監督への絶大な信頼を明かし、唯一のメジャーリーガーとして精神的支柱の役割を果たした青木宣親外野手(アストロズ)は大会中から指揮官の存在の大きさを力説。東京ラウンドでの快進撃の理由を聞かれたときには、こう話していた。

「小久保監督が選手を信頼したことじゃないでしょうか。トップの人がみんなを信頼して使ってくれたり、声をかけたりするのを見ることで、選手もやらないといけないと感じるし、責任を持つと思います」

 一方の小久保監督も帰国後会見では「素晴らしい選手たちに囲まれ、恵まれ、一緒に戦えたことは、私自身の人生の宝物です」と爽やかな表情で話し、最後まで選手たちを気遣った。

「ファンの皆さんが期待する世界一は取れなかったんですけど、選手たちはよくやったと思います。もちろん、負けの責任はすべて監督の私にある。頑張った選手たちのシーズンがこれから始まります。WBCを通して成長した選手たちの活躍を楽しみにしてほしい。

 代表監督は易しいものではなかった。まず最初に選手たちを集める中で、日の丸を背負って戦うのはリスクも高い。選手たちの負担は大きいと思うが、彼らが使命感をもって日本球界を引っ張っていくんだと、そういうものを持った選手をまず集めないといけないというところからスタートして。その中で勝ちにこだわるんですけど、勝ちだけにこだわっていると選手起用が偏ってしまう。ある程度はみんなにチャンスを与えないといけない。

(小久保監督にとって)WBCは最後(の大会)だったので、勝つためにやって、打席にほとんど立てなかった選手、登板出来なかった選手が出てきてしまった。各球団のトップを集めた中で、そういう決断をしなければいけなかったのが一番つらかったと思います」

 指揮官は、選手、監督に続く「第3の人生」を歩んでいくと明かした。一方で、侍ジャパンは世界一奪還への戦いをこれからも続けていく。今回の「経験」を選手が生かし、再び世界の頂点に立てる日がやってくるはずだ。

【了】

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