元野球日本代表・岩村明憲氏が考える世界で活躍する条件 「日本人にしかできないことがある」

2016.5.9

近年、日本人内野手の評価は決して高いものとは言えない。こういった現状を、2007年から4シーズン、アメリカでプレーした現BCリーグ福島ホープス監督兼選手の岩村明憲氏はどう見るのか。野球日本代表として2度の世界一に輝き、国際大会でのプレー経験も豊富な名手に、熱く語ってもらった。

岩村氏が米国で感じた外国人選手の“凄さ”とは

 海を越えたメジャーの舞台で投手陣が目覚ましい活躍を見せる一方、現在はイチロー(マーリンズ)、青木宣親(マリナーズ)、川崎宗則(カブス)の3人だけになってしまった日本人野手。とりわけ、近年、日本人内野手の評価は決して高いものとは言えない。

 こういった現状を、2007年から4シーズン、アメリカでプレーした現BCリーグ福島ホープス監督兼選手の岩村明憲氏はどう見るのか。野球日本代表として2度の世界一に輝き、国際大会でのプレー経験も豊富な名手に、熱く語ってもらった。

――日米両球界を経験され、「野球」と「ベースボール」には違いがあると感じましたか?

「もちろん、国が違えば文化の違いはある。その中で、『野球』と『ベースボール』の違いはあるもんだ、と思って(アメリカに)行ったから、その差にはビックリしなかった。いろんなものを吸収しようと思って行ったからね」

――具体的には、どんな違いがありましたか?

「俺がメジャーリーガーを見て『何がスゴイ』って感じたかっていうと『集中力が違う』って感じた。人間って集中力が2時間も3時間も持つわけがない。1球の練習にしても、1本打つにしても、いかに集中してするか。本数が少なくてもいいから、まず5本なら5本、しっかりやろう。やったら終わりでいい。体を休めるのも練習の1つ。そういう集中力があるのが、メジャーリーガーだなって感じたね」

――最近は日本人内野手はメジャーでは通用しない、と言われていますが、実際プレーをして、実力の差を感じたことはありますか?

「なんて言うのかな。ワールドシリーズに(日本人内野手は)3人行ってますからね。井口(資仁)さん(現千葉ロッテ)にしても、(松井)稼頭央さん(現東北楽天)にしても、俺にしても、ワールドシリーズに出ているのに日本人内野手が通用しないって言われたら、何が通用するのっていう話でしょ(笑)。野球ってやっぱりみんなでやるスポーツ。そのチームにとって、どういう選手が必要とされているか。餅は餅屋で日本人にしかできないことがある。ホームランはホームランを打てるバッターに任せればいい。日本人にしかできないことは必ずあること。それが適材適所でピッタリはまれば、そのチームはワールドシリーズに行ける。結果として、勝てるチームのピースでいることが成功だと思う」

日本人選手の“売り”は? 岩村氏が考える「求められていること」

――日本人内野手のよさが生かせるチームに入ればいい。

「野球選手だから数字を残すことは大事かもしれないけど、チームとして勝つためのピースとして求められるかどうか。俺はアメリカに行く時、メジャーの勝つ野球をどういうものか勉強したいとも思っていた。結局行くことになったのは、すごく弱いタンパベイ・デビルレイズ(当時)。それがシンデレラストーリーではないけど、2008年にワールドシリーズに行った。その過程はすごく勉強になった。ジョー(・マドン監督)はよく言ってたんだよ。みんな誰が欠けても、このチームは成り立たないんだよって。1つの大事なピースが集まってチームを作る。

 今、川崎は人数の枠の問題があってマイナーかもしれないけど、結局ジョー(・マドン監督)が気に入っているのは、他の選手ができないような細かな仕事ができるから。俺もそういう立場だったから重宝してもらった。 向こう(アメリカ)で生活して思ったのは、日本人ってすごく真面目だし、勤勉さが売りだということ。それを売りにすればいい。そういうピースもあってもいいし、それが日本人に求められていることだと思うんだよね」

――日本人らしさを貫いて、スタイルを変えたり合わせたりする必要はないということですか?

「いや、マッチさせる努力はあった方がいいと思う。通訳に頼り過ぎるのはよくない。自分の口でコミュニケーションを取ろうと努力することが大事。拙い英語でも聞く耳は持ってくれるから。コミュニケーションを取る努力さえすれば、調子が悪い時に周りが『1人じゃないよ』って声を掛けてくれる。自分1人でチームを勝たそうなんて考えは大きな間違い。グランドにいる9人だけじゃなくて、ベンチの人間も含めてみんながいたから、2008年レイズの奇跡が起きた。みんなの努力。これはチームが国に変わっても一緒だと思うよ」

メジャーで通用する日本人選手は?

――日本人選手がメジャーでプレーするにあたり、必ず直面するのは身体能力の違いです。

「これは避けられないと思う。もちろん、(トレーニングで)大きくできる部分もある。でも、体のことだから。だから、日本人は小さい体で遠くへ飛ばす練習をするわけでしょ。俺は外国人に日本人のような打ち方を教えてあげれば、もっと遠くへ飛ぶような気がする。『打つ技術』というより『体の使い方』だね。 俺は中西太さんの教えを受けているから、下半身が基本でそこからすべて連動させるというイメージ。下半身からジョイントを上手く使って、連動させて、最後にバットの芯がある。バットを巻き付けて打つことで、ヘッドスピードが上がってボールは遠くへ飛んでいく。

 自分はホームランは少なかったけど、左打者でありながらフェンウェイフィールドでレフトに2発打てたのも、反対方向に角度を上げて遠くに飛ばすことを、ヤクルト時代に教えてもらったから。190センチとか2メートルとかあるヤツらばかりの中で、俺なんか175センチしか身長がない。背が小さいから95メートルでホームランとか、背が大きいから150メートルでホームランとかはない。160メートル飛ばしても、101メートルでもホームランはホームラン。無差別級で同じ球場を使うわけだから、うまく体を使うことだよね」

――アメリカ人選手でも体の小さい選手はいます。

「俺がいた頃はデービッド・エクスタイン(元エンゼルス、約170センチ)とかペドロイア(レッドソックス、約175センチ)とか、同じような身長の選手はいくらでもいた。そういう選手を見て、こうやって打つんだなとか、ああやって振ってくるんだなとか、そういう振り方もあるのかって、すごく勉強になりましたね」

――彼らも体の使い方が上手いんですか?

「ペドロイアの場合、使い方というより思い切りがいい。低めの球はヒザをついて打ったりとかね。ああいう思い切りのよさは日本人にはないね」

――現在、NPBで活躍する日本人選手で、メジャーに渡ったら面白いと思う選手は誰でしょう?

「柳田選手(福岡ソフトバンク)とかね。バッティングもいいし、普通に足も速いし、肩もいい。ちょっと前の糸井選手(オリックス)もそうだね。ああいう選手らは面白いだろうなって見ているよ。180~185センチあれば体格的にも劣らない。うらやましいよね。 ただ、一番大切なのは、前にも言った通り、そのチームが選手に何を求めるのか。適材適所で自分を生かせるか、だよね」

 岩村明憲氏インタビュー第2弾の『侍Jが世界で勝つために―岩村明憲氏が明かすヒント、鍵は「情報」と「声掛け」』に続く。

記事提供=Full-Count

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