侍ジャパン、2016年アンダー世代の躍進を振り返る

2016.12.26

2016年、野球日本代表「侍ジャパン」のアンダー世代は大きな躍進を遂げる1年となった。国際大会の5つのカテゴリーで金メダル、1つのカテゴリーで銀メダルを獲得し、「野球大国」日本の姿を世界に知らしめた今年。侍ジャパンU-15代表監督であり、侍ジャパンのテクニカル・ディレクターを務める鹿取義隆氏に、2016年のアンダー世代の活躍を振り返ってもらった。

写真提供=Full-Count

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侍ジャパンU-15代表監督/テクニカル・ディレクター鹿取義隆氏が総括

 2016年、野球日本代表「侍ジャパン」のアンダー世代は大きな躍進を遂げる1年となった。まず7月に「第40回日米大学野球選手権大会」で優勝すると、7月末からいわき市で行われた「第3回 WBSC U-15 ワールドカップ」では準優勝を収めた。さらに、8月末から台中が舞台となった「第11回 BFA U-18アジア選手権」、続いて9月の釜山で行われた「第7回 WBSC 女子ベースボールワールドカップ」、10月末にメキシコで開催された「第1回 WBSC U-23ワールドカップ」、今月中国で行われた「第9回 BFA U-12アジア選手権」の4大会では、すべて優勝を果たした。

 国際大会の5つのカテゴリーで金メダル、1つのカテゴリーで銀メダルを獲得し、「野球大国」日本の姿を世界に知らしめた今年。侍ジャパンU-15代表監督であり、侍ジャパンのテクニカル・ディレクターを務める鹿取義隆氏に、2016年のアンダー世代の活躍を振り返ってもらった。

――今年「侍ジャパン」は、強化試合の開催だけだったトップチームを除く全カテゴリーが、国際大会で好成績を収めました。「侍ジャパン」にとっては大成功の1年だったのではないでしょうか。

「今年の漢字ではないですが『金』ですよ。ワールドカップではU-23代表と女子代表が優勝、U-12代表とU-18代表はアジア選手権で優勝し、大学代表も日米大学野球で優勝しました。優勝できなかったのは、私が監督を務めたU-15代表だけだったという……(苦笑)。それも自国開催で、ホスト国だったのに負けてしまった。責任を感じていますね」

――侍ジャパンU-15代表は優勝できなかったとはいえ準優勝。立派な成績です。

「間違いなく全力は出したし、選手はよくやったと思うんだけど、他が優勝続きだと『あぁ……何が足りなかったのかな』と。やっぱり指導者、監督かな(苦笑)。とはいえ、すごいですよ。どのカテゴリーも本当に頑張りました」

――鹿取さんは侍ジャパンU-15代表の監督の他にも、同U-12代表と同U-23代表の選手選考や世代を通じて育成に関わるテクニカル・ディレクターを兼任されています。

「はい。先日は中国遠征に出掛ける前のU-12代表の投手の指導をしましたが、みんないいピッチャーでしたね。野手もなかなかいいメンバーが揃っていた。中でも、キャプテンを務めた星子(天真)選手はよかったですね。実は、U-15代表にはお兄ちゃん(星子海勢捕手)が選ばれていたんですよ。右投げ左打ちのショートで投手もやる。仁志(敏久)監督も『いいですよ』って言っていました。こんな小学生がいるのかっていうような守備を見せる。

 U-12代表っていうのは、一番体格差にばらつきのある年代かもしれません。大きい子もいれば小さい子もいる。同じ6年生でも大分違います。それでも、どのカテゴリーにも身のこなしのうまい子はいるんだな、と思いました。投げるにしても、守るにしても、打つにしてもかっこいい。様になる。形のいい子はいますね」

浸透する「侍ジャパン」、「子供たちも気付いてくれるようになった」

――またトップチームと同じユニフォームを着ていると、一際かっこよく見えますね。

「そうなんですよ。U-12代表だったら小学生、U-15代表だったら中学生なんだけど、あのユニフォームを着てプレーしていると、だんだん『侍』に見えてくる。そのまま、トップチームに入るような選手に成長してくれるといいですね」

――侍ジャパンU-12代表と同U-15代表はトライアウトを経て、選手選考が行われました。相当数の選手がトライアウトを受験したようです。

「トライアウトで選考するのは大変でした。小学生は全国で約26万人が野球をしているから、その中から15人を選ぶのは大変。U-15世代も大変ですよ。この世代は、特にどの連盟からもいい選手が集まる。その世代は全国で約5万人いる。その中から、今回トライアウトに参加したのは116人だったけど、そこから20名に絞るのは、すごく難しかった。どうしても、その日パフォーマンスのいい選手を選ぶことになってしまうんですね。選ばれなかった96名の中にも、少しコツを教えたら、この後で必ずよくなると思う選手がたくさんいました。侍ジャパンのトライアウトを受けただけでも、それを誇りに思って、次のU-18代表を目指してほしいと思います」

――たくさんの野球少年がトライアウトに応募するということは、アンダー世代の「侍ジャパン」もかなり浸透してきたと言えそうです。

「プロ野球選手がトップチームで出たいと言ってくれるので、それが大きいですね。国際大会がなくても、毎年『侍ジャパン』として試合をしているので、『侍』のイメージが広く浸透した。その延長で『U-15代表、U-12代表も大会があるんだ』って、子供たちも気付いてくれるようになった。やっぱり、トップがしっかりやってくれているからだと思います」

――今年のアンダー世代の活躍をきっかけに、トライアウトの受験者のレベルが、さらに上がるかもしれません。

「そうなるといいですね。高校生には甲子園っていう目標があるけど、中学生や小学生にはそういう目標がない。だから、侍ジャパンに入ることが1つの目標になってくれるといいですね」

育成世代からトップへ、「この流れをこれからもつなげていきたい」

――8月に開催された「第3回 WBSC U-15 ワールドカップ」では監督としてチームを率いられましたが、世界と比較した場合、日本の野球のレベルはどのように映りましたか。

「やっぱり日本はうまいですよ。守備だとか、声を出してやるプレーとか、牽制プレーとか、細かいところがうまい。基本ができていなければできません。身体能力だけでプレーするのではなく、テクニックも覚えているのが日本の野球。試合前のノックだけを見ても、日本は断然うまいですよ。試合が始まってみると、他国の選手の打球の速さに驚かされることもあるけど(笑)」

――そういう点から考えると、子供たちに対する日本での育成方法は間違ってはいないようです。

「間違っていないと思います。育った環境やチームの環境によって、多少野球にばらつきがあるんですよ。それでも、U-12代表のように全国から15人、U-15代表のように全国から20人集まると、数日の練習期間を経れば、チームとしてまとまるだけの技術は持っている。子供たちは順応性も適応性も早いんでしょうね。柔軟な頭や素直に聞く耳を持っているんですね」

――男子に負けず、侍ジャパン女子代表もワールドカップで優勝しましたが、例えば同U-12代表や同U-15代表に女子が参加することも可能ですか。

「大会によっては可能ですよ。侍ジャパンにはまだいませんが、以前対戦したインド代表に女子のピッチャーがいました。球速がそれほど速くなかったんだけど、投手交代をしたら2番手の男の子の方が遅い球を投げたということがありました(笑)。

 小学生は特に女子で上手な子が多いですよね。これまでも言ってきましたが、女の子でも積極的にトライアウトに参加して欲しいですね。」

――育成という観点から見ると、カテゴリーが変わっても代表に選ばれ続ける選手もいます。

「U-23代表にいましたね。田嶋大樹(JR東日本)、永谷暢章(JR東日本)、廣岡大志(ヤクルト)はU-15代表でした。歳内宏明(阪神)や安樂智大(楽天)は高校で選ばれていますし、三好匠(楽天)や武田健吾(オリックス)はU-21代表でした。いい流れではありますね。

 U-21代表だった田口麗斗(巨人)と鈴木誠也(広島)が11月の強化試合ではトップチームに選ばれた。これは大きいですね。こうやって流れができてくれば一番いい。この流れを、これからもつなげていきたいですね」

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