世界が見た日本 強化試合で変わった認識「思っていた以上にパワーがある」

2016.11.21

世界一を決める大一番を約4か月後に控えた今、かつて2度頂点に輝いた侍ジャパンと強化試合に臨んだメキシコ代表とオランダ代表も、これまで日本に対して抱いていたイメージを軌道修正しなければならない戦いになったようだ。両軍が異口同音に言うのは「日本の打線は思っていた以上にパワーがある」ということだった。

写真提供=Getty Images

写真提供=Getty Images

日本の野球といえば「スモール・ベースボール」が典型だったが…

 野球日本代表「侍ジャパン」は10日から4日間にわたり、メキシコ代表とオランダ代表との強化試合を行った。初戦こそメキシコ代表に黒星を喫したが、その後は2つの逆転勝利を含む3連勝。戦前、今回の強化試合の目的として、新たに招聘した戦力の見極めと、勝利にこだわる姿勢の両立を掲げた小久保裕紀監督は、何とか目的を果たしたが、世界各チームの実力が拮抗しつつあることを感じずにはいられない内容となった。

 一方、世界一を決める大一番を約4か月後に控えた今、かつて2度頂点に輝いた侍ジャパンと強化試合に臨んだメキシコ代表とオランダ代表も、これまで日本に対して抱いていたイメージを軌道修正しなければならない戦いになったようだ。両軍が異口同音に言うのは「日本の打線は思っていた以上にパワーがある」ということだった。

 日本の野球といえば、いわゆる「スモール・ベースボール」が典型とされている。諸外国と比べると体格的に劣るため、機動力や小技を生かした戦略で足りないパワーを補おうというもの。長打に頼らず、盗塁やバント、ヒットエンドランといったスピードや技術で確実に進塁、得点し、堅実な守備と投手力で失点を最小限に抑えようという戦略だ。

 だが、昨年11月の「世界野球WBSCプレミア12」にはじまり、今回の侍ジャパンのメンバーを見てみると、かつてよりも諸外国に体格やパワーで見劣りしなくなってきた。例えば、大谷翔平(北海道日本ハム)は身長193センチ、体重92キロの堂々たる体躯。メキシコ代表との初戦で代打出場した大谷を3球三振に斬って取ったナショナルズのベテラン左腕オリバー・ペレスは「オオタニという存在は知っていたが、あそこまでいい体格をしているとは思わなかった」と驚きを隠せなかった。

大谷や筒香の見せたパワーに驚嘆「着実にパワーも備わってきた」

 また、メジャー通算515試合に登板し、84セーブ、防御率2.58と信頼おけるセットアッパーとして活躍する右腕セルジオ・ロモは、メキシコとの第2戦の第1打席で大谷が放った左翼への二塁打に仰天し、「トップ中のトップに属する選手だ」と絶賛。同時に、第1戦で左中間に大きな同点二塁打を放った筒香嘉智(横浜DeNA)も例に挙げ、「あの左翼手(筒香)が秘めるパワーにも驚いた。聞いてみれば、今年は44本塁打も記録しているらしいじゃないか」と驚きを隠せない様子だった。さらに、「第1戦の1番打者(坂本勇人・読売)もいいスイングをしていたが、彼も今季は20本塁打以上だって? 今まで日本はスピードと基本的な技術が秀でたチームだと思っていたけど、着実にパワーも備わってきた。そこは注意しないといけないね」と、日本選手の変化を指摘した。

 実は、この点に関しては、オランダ代表のヘンスリー・ミューレンス監督も同意見だ。サンフランシスコ・ジャイアンツで打撃コーチを務める指揮官は、今回の来日に際し、“ジャイアンツのスカウト”という密使も任されてきた。オランダ代表との2戦に先駆け、メキシコ代表と戦った2試合もじっくりと観戦。「日本は最後まで諦めずに戦う姿勢を持っている」と分析すると同時に、「失投を単打ではなく長打にする能力も持っている」と見ている。奇しくもオランダ代表と戦った2戦は乱打戦となり、オランダ代表が18得点したのに対して、侍ジャパンは20得点を記録。メジャーリーガーが揃わない戦力だったオランダ代表ではあったが、日本がそのパワーに打ち負けることはなかった。

 お家芸として守ってきた緻密な戦術に加え、大谷、筒香、坂本、山田哲人(東京ヤクルト)ら「パワー+ヒット」を打つ技術を持った新世代のラインナップ。今回の強化試合で日本に対する認識を軌道修正した世界の強豪たちが、世界の頂点を目指して今後どんなチームを組んでくるのか、楽しみだ。

記事提供=Full-Count
写真提供=Getty Images

NEWS新着記事