世界でも十分勝てる― 守備のスペシャリストが見る侍ジャパン内野陣の実力

2016.8.8

侍ジャパンの現時点での実力はどの程度なのか。今回は内野陣の守備について元オリックス監督の森脇浩司氏に分析してもらった。その目に、現在の侍ジャパン内野陣はどう映っているのか――。

写真提供=Getty Images

写真提供=Getty Images

森脇浩司が見る侍ジャパン内野陣の実力とは

 野球日本代表「侍ジャパン」は小久保裕紀監督のもと、世界一奪還に向けてチーム強化を推し進めている。選手たちも国際大会や強化試合を経て着実に成長。チーム力は順調に増しているように見える。

 それでは侍ジャパンの現時点での実力はどの程度なのか。今回は内野陣の守備について元オリックス監督の森脇浩司氏に分析してもらった。現役時代、内野手として複数のポジションをこなし、際立った守備を見せた同氏は守備のスペシャリストとしても知られ、指導者としても数々の名選手を育ててきた。その目に、現在の侍ジャパン内野陣はどう映っているのか――。

————————————————————-

 どの選手も各球団を代表する存在であり、個々のポテンシャルもずば抜けている。代表戦は「負ければ終わり」という緊張感の中で堅実で判断力に優れた、大胆かつ繊細なプレーが求められる。確実に目の前のアウトを取る作業というのは日の丸を背負っている全てのプレーヤーなら当然のごとくこなすだろう。

 その中でも日本球界トップの守備力を備えている選手を挙げていきたい。今年3月の強化試合でトップチームに選出されている内野手は、福岡ソフトバンク・松田宣浩、今宮健太、東北楽天の銀次、読売・坂本勇人、広島・菊池涼介、東京ヤクルト・山田哲人、北海道日本ハム・中田翔の7名。守備範囲の広さ、球際の強さ、そして打者によって対応するポジショニング。現段階でこれら、すべての要素を備えているのは菊池だ。2013年に528捕殺、14年にも535補殺と歴代1、2位の記録を作ったのは記憶に新しいのではないか。

世界を代表する二塁手を目指せる菊池

 これまで補殺という記録は菊池が現れるまで、ここまでの注目を浴びることはなかった。全身をバネのように使い、重心を低く保ち、ボールの下から打球を捕らえ、的確に処理する。正確なスローイングも特長だ。

 二塁手にとって二塁、一塁への送球はショートスローがメインになる。手首、肘先をしなやかに使うことで、捕球後、どんな体勢、状態からでも的を外すことはない。スローイングは短い距離ほど難しいが、菊池は距離によって強弱をつける上手さを持っている。ゲッツー時のベースワークも見逃せない。サード、ショートからの送球の読みが的確であること、それでいて決して決めつけることなく幅広く対応出来る体勢が作れている。それが素早く強い送球に繋がっているのだ。

 基本の上にアグレッシブさがある彼の守備はチームに勇気を与えるだろう。今後の伸びしろも十分ある。現状維持ではなく世界を代表する二塁手を目指して欲しい。

 そして菊池と二遊間を組むことが予想される今宮。何と言っても守備範囲の広さと肩の強さが魅力的な選手だ。

 三遊間への深い当たりでもロスなく矢のような送球を見せる。二遊間への当たりも俊敏さを生かして処理する姿を見ると、守備だけで言えばNO1の遊撃手と言えるだろう。身長は171センチと決して恵まれている体ではないが、ハンドリングの柔らかさ、体の強さ、俊敏で小回りのきく動きで逆に小兵を武器にしている。

攻守でチームの軸となる中田、その伸びしろは?

 今季は菊池、今宮ともに打撃面でも非常に成長した姿を見せている。将来のNPBを背負う選手になっていくのではないか。いずれにせよこの2人に共通しているのは「俺のところに打たせろ、俺がアウトを取ってやる」という強い責任感だ。ビックゲームでこそ日頃の習慣が出るもの。この二遊間はゲームの流れを作り、チームの危機を確実に救うだろう。松田の守備も同様である。

 また、中田の一塁手としての能力は彼らを超えるくらい高く、チームにとって大きな武器だ。一つ注文を付けるならアンツーカー越し、また天然のグラウンドでの打球処理では緩いゴロほどイレギュラーが起こるという認識を持つこと。そうすることで構えが変わりスタートがよくなる。送球の精度はプロ野球界屈指。彼こそが侍ジャパンの攻守の中心であり、キーマンなのだ。

 最後に直近では選出されてはいないが守備だけで小久保監督を支えることが出来る選手を紹介したい。

 東北楽天の藤田一也、北海道日本ハムの中島卓也である。

 両者には多くの共通点がある。練習の時からボールの扱いが丁寧で、打球処理にいつも目的を感じる。試合ではいかなる展開でも高い集中力を持続し、決して打撃の調子、気分に左右されたプレーを見せたことがない。

 捕球、送球の精度の高さは勿論のこと、状況判断が優れていること、日頃の素晴らしい習慣を持っていることで大舞台でこそ彼らの長所が存分に発揮されるだろう。

“勝てる内野陣”を擁する侍ジャパンに大いに期待したい。

◇森脇浩司(もりわき・ひろし)

1960年8月6日、兵庫・西脇市出身。56歳。現役時代は近鉄、広島、南海でプレー。ダイエー、ソフトバンクでコーチや2軍監督を歴任し、06年には胃がんの手術を受けた王監督の代行を務めた。11年に巨人の2軍内野守備走塁コーチ。12年からオリックスでチーフ野手兼内野守備走塁コーチを務め、同年9月に岡田監督の休養に伴い代行監督として指揮し、翌年に監督就任。178センチ、78キロ。右投右打。

記事提供=Full-Count
写真提供=Getty Images

NEWS新着記事