侍ジャパン・吉井コーチが選ぶ“史上最強3投手” 佐々木朗希に期待する国際大会での成長

2022.5.23

野球日本代表「侍ジャパン」の吉井理人投手コーチは現役時代、近鉄とヤクルトで活躍したのち、1998年に日本人で初めてメジャーへFA移籍した。ニューヨーク・メッツなど3球団で通算32勝を挙げ、2003年にオリックスで日本球界復帰を果たすと、最後は千葉ロッテで42歳まで現役を続行。引退後はパ・リーグ3球団で投手コーチを務め、ダルビッシュ有投手や大谷翔平投手の成長に力を貸している。今年はロサンゼルス・ドジャースにコーチ留学をするなど世界の野球を肌で知る吉井コーチが、来年3月に予定される「第5回ワールド・ベースボール・クラシック™(WBC)」にどんな投手陣を組むかは興味深いところ。だがその前に、全OB・現役投手の中から「最強の侍ジャパン投手陣」に選出したい3人を挙げてもらった。

写真提供=Full-Count

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吉井理人コーチが選ぶ日本ナンバーワンの投手は…野茂英雄!

 野球日本代表「侍ジャパン」の吉井理人投手コーチは現役時代、近鉄とヤクルトで活躍したのち、1998年に日本人で初めてメジャーへFA移籍した。ニューヨーク・メッツなど3球団で通算32勝を挙げ、2003年にオリックスで日本球界復帰を果たすと、最後は千葉ロッテで42歳まで現役を続行。引退後はパ・リーグ3球団で投手コーチを務め、ダルビッシュ有投手や大谷翔平投手の成長に力を貸している。

 今年はロサンゼルス・ドジャースにコーチ留学をするなど世界の野球を肌で知る吉井コーチが、来年3月に予定される「第5回ワールド・ベースボール・クラシック™(WBC)」にどんな投手陣を組むかは興味深いところ。だがその前に、全OB・現役投手の中から「最強の侍ジャパン投手陣」に選出したい3人を挙げてもらった。

 星の数ほどいる候補者の中から、まず即答したのはこの投手だ。

「自分の中では、やっぱり野茂がナンバーワンなんですよ」

奪三振王ながら四球王でもあった野茂「自滅というタイプではない」

 1995年に近鉄からドジャース入りし、全米にトルネード旋風を巻き起こした野茂英雄投手(現サンディエゴ・パドレス・アドバイザー)。吉井コーチは近鉄、そしてメッツでもチームメートだった。決め球のフォークボールを伝授されたこともあるという。

 思い出が尽きない中でも、新人ながら投手3冠、1試合17奪三振、パ・リーグ新人記録のシーズン287奪三振など数々の記録を塗り替えた、1990年の姿が強烈な印象として残っている。「ルーキーの年は、とにかく凄いとしか言いようがなかった。体もキレキレで、ボールに威圧感があって前に飛ばなかった。そこからだんだんトトロみたいな体形になって、違った味が出るんですけどね」と親しみを持って振り返る。

 奪三振を積み重ねる一方、野茂投手は与四球も多かった。入団から4年連続でパ・リーグの四球王となり、1993年にはリーグ記録のシーズン148四球を与えたほどだ。「でも、ノーコンというイメージは全くなかった。自滅というタイプではない。走者を出しても抑えていくんです」。実際に、防御率は2点台後半から3点台前半に収めている。不要な四球で自滅していたら、日本プロ野球の5年間で78勝を挙げることは不可能だ。吉井コーチは「セットポジションからの投球も上手だったので、そういうことができたんだと思う」と意外な一面を披露する。

ヤクルトで出会った伊藤智仁の衝撃「遠投がえげつなかった」

 次いで挙げたのが、ヤクルトでチームメートだった伊藤智仁投手(現東京ヤクルト1軍投手コーチ)だ。1993年に三菱自動車京都からプロ入りし、7勝2敗、防御率0.91という素晴らしい成績で新人王に輝いた。抜群にキレのいいスライダーは今も語り草になっている。2年目に肩の故障で戦線離脱。1995年にヤクルトへトレードされた吉井コーチと出会ったのは、「ずっと戸田を走っていた」という2軍施設でのリハビリ時代だった。

 ただ、翌年に米アリゾナ州ユマで行われた春季キャンプでキャッチボールをしてみると、まさに衝撃的だった。「遠投がえげつなかった。ライナーでずっと伸びて、いつまでも落ちてこないようなボールを投げていた」。伊藤投手は1997年にクローザーとして復活を果たし、7勝2敗19セーブの好成績でカムバック賞を受賞。だが、その後も肩や肘の故障が続き、長く活躍することはできなかった。

「野茂も遠投は凄かった。『グワッ』と来るようなボール。一方でトモ(伊藤投手)は浮力があるというのかな。今思うと、2人とも下(半身)からの力を指先に伝えるのが凄く上手かった」と振り返る。つまり、2人は揃って運動連鎖をしっかり体現できていたのだ。

 最後にクローザーとして挙げたのは、横浜とシアトル・マリナーズで日米通算381セーブを記録した佐々木主浩投手だ。「野茂から伊藤智、大魔神(佐々木)へのリレー。決め球はフォークの縦、スライダーの横、またフォークの縦という順番になりますね。この組み合わせならアジャストが難しい。メジャーリーグの打者もなかなか打てないでしょう」と夢のリレーを思い描く。

「いずれ日本のエースになるでしょう」佐々木朗希に侍ジャパン入りの期待

 2019年から3シーズンにわたって1軍投手コーチを、今季からはピッチング・コーディネーターを務める千葉ロッテで、3人のような衝撃を与えてくれる若き才能と出会った。球速160キロを超えるボールを連発し、プロ3年目ながら4月10日のオリックス戦では28年ぶりの完全試合、プロ野球記録の13者連続奪三振を成し遂げた佐々木朗希投手だ。吉井コーチは来春開催予定のWBCに向けた侍ジャパンに選出する可能性を隠そうとはしない。

「そりゃ呼びたいですよ。いずれ日本のエースになるでしょう。今年の後半にはそこまで行くかもしれないですし」

 夢のリレーを繋ぐ3投手には、世界の野球に触れたという共通点がある。メジャーで投げた野茂投手、佐々木主浩投手はもちろん、伊藤投手もプロ入り前年の1992年に日本代表としてバルセロナでの銅メダルに貢献。この時、ジェイソン・ジアンビ内野手やノマー・ガルシアパーラ内野手らのちにメジャーで活躍する打者が並んだ米国代表、世界最強と言われたキューバ代表などの強敵と鎬(しのぎ)を削りながら、投手として成長した。佐々木朗希投手も国際大会を経験し、広い世界を知ることで、さらに成長が促される可能性があるだろう。

「どの投手もそうですけど、世界の野球を知ることは絶対に自分のためになる。朗希も高校代表に入っていたので全日本の雰囲気は知っているでしょうけど、『一番レベルの高いチームに入った時にどうなるか』という楽しみはありますね」

 来春のWBCで吉井コーチが預かる投手陣が最高のパフォーマンスを発揮すれば、“夢のリレー”もまた、バリエーションを増していくのかもしれない。

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