高校時代は無名も大学代表では4番 ドラフト候補スラッガーが侍ジャパンで得た学び

2020.10.19

2019年の第43回日米大学野球選手権大会で、3年生ながら4番を務めた中央大学の牧秀悟内野手。今年のプロ野球ドラフト会議では上位指名が期待され、昨年11月30日から3日間行われた侍ジャパン大学代表候補選手選考合宿では主将役も務めた。だが、今年はあいにく新型コロナウイルス感染拡大の影響で、第30回ハーレムベースボールウィーク、第1回アジア大学野球選手権大会、第44回日米大学野球選手権大会などの国際大会が開催延期、または中止となってしまった。

写真提供=Full-Count

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中央大・牧秀悟が振り返る大学代表の経験「初めての代表入りには重圧もありました」

 2019年の第43回日米大学野球選手権大会で、3年生ながら4番を務めた中央大学の牧秀悟内野手。今年のプロ野球ドラフト会議では上位指名が期待され、昨年11月30日から3日間行われた侍ジャパン大学代表候補選手選考合宿では主将役も務めた。だが、今年はあいにく新型コロナウイルス感染拡大の影響で、第30回ハーレムベースボールウィーク、第1回アジア大学野球選手権大会、第44回日米大学野球選手権大会などの国際大会が開催延期、または中止となってしまった。

 それだけに、牧選手にとって代表初選出となった昨年の「第43回日米大学野球選手権大会」は貴重な体験となった。

「自分自身、初めての代表入りには重圧もありました。(現福岡ソフトバンクの)柳町(達)さんから初球の待ち方を聞いたり、追い込まれてからも当てにいくのではなく、まずは自分のスイングをすることの大事さを教わりました」

 牧選手が強く説くのは、普段会うことのないトップレベルの選手たちとコミュニケーションを取ることの大切さだ。もちろん技術を学ぶことも大切だが、それ以上に選手の普段の姿にこそ、学ぶことが多いという。

「自分は人見知りなので、森下(暢仁・現広島東洋)さんや海野(隆司・現福岡ソフトバンク)さんは、最初は話しかけづらかったですね。実績があって、野球選手としても尊敬していたので。そんな中で森下さんの方から話しかけてくださったり、積極的にコミュニケーションを取ってくださって。海野さんのことも、下の名前で隆司さんと呼ばせていただいて、仲良くやらせていただきました」

選考合宿では主将役、初参加の選手に積極的に声掛け「オンとオフの切り替えは大事」

 自らが上級生に気を遣ってもらった分、主将役を引き受けた昨冬の選考合宿では、初参加の選手へのケアに心を砕いた。否が応にも肩に力が入る代表への招集。円滑なコミュニケーションに欠かせないのが「オンとオフの切り替えだ」と牧選手は言う。

「去年は下で(先輩に)ついていくだけでしたが、主将は主将でチームをまとめなくちゃいけないというプレッシャーもある。初めての(代表)経験で緊張する人たちには、なるべく声掛けをするよう意識しました。もちろん試合の時はオンですが、ずっとオンばかりでも気疲れしてしまう。決起集会の後には選手同士で集まったり、普段グラウンドでは見ない、友達同士みたいな感じで接することも大事だと思います」

 実は、昨冬の選考合宿で5キロも太ったという。「あの時はケータリングも出て、ホテルのごはんも美味しくて……。代表では自分が一番体重が重くて、周りからメチャクチャ『デブ』ってイジられたんですよ(笑)。でも、そうやってオフの顔を知ることで、すごいと思う選手でも自分と同じ大学生なんだと気付くと思うんです」と、グラウンド外での交流の意義を語る。

自信をもたらした世代を代表する先輩、後輩、そして同級生のライバルの存在

 もう一つ、大切なのが同世代でライバルとなる存在を見つけることだ。牧選手にとってのライバルは、長野・松本第一高校時代に同県の強豪・佐久長聖高校でプレーしていた選手だ。

「自分の場合は東北福祉大の元山飛優。高校時代から同じ長野のショートとして意識してましたし、大学でも1年からレギュラー。間違いなく自分の“やる気スイッチ”を押してくれる存在で、去年は日米(大学野球)でも一緒でした。それまでは自分が一方的に意識してるだけかと思ってましたが、代表で一緒になってから向こうも同じように思っていたことを知って、ライバル関係がより深まりました」

 世代を代表する先輩、後輩、そして同級生のライバルの存在。それこそが、牧選手にこれまでになかった自信をもたらしたという。

「自分は甲子園に出ていないし、全国的には無名の選手でした。今こうやって注目されている姿は想像できなかった。でも、プロになった先輩たちと関われたことが自信になりました。当たり前のことですけど、そんな先輩方でも普段の顔は大学生。すごい選手でも、必要以上に委縮することはない。まだまだ自分がそこまでいってるとは思わないですが、一応は同じ舞台でやれているので」

 昨年の東都大学野球秋季リーグ戦で中央大学は15年ぶり25度目のリーグ優勝を飾り、打率.361、14打点と活躍した牧選手は最高殊勲選手に選ばれた。秋季リーグ連覇を狙う今秋は大学生No.1打者の呼び声も高い。残念ながらコロナ禍のため大学最後の年に日の丸を背負うことはできなかったが、大学代表として4番を担った経験、そして選考合宿で主将役を務めた経験は、確かにこの先の野球人生の糧となるだろう。

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