初の二塁コンバートで感じた「悔しさ」 中日・京田陽太の成長を促した”2人の才能”

2020.6.1

その場所は、世代トップと自らの距離を教えてくれる。日本大学時代とプロ入り後、日の丸のユニホームに袖を通した中日・京田陽太内野手。所属チームで感じるものとは異質の重圧や刺激だけでなく、経験のなかった悔しさも味わった。野球日本代表「侍ジャパン」という特別な舞台でともに戦った「2人の遊撃手」の存在が、京田選手の成長を促した。

写真提供=Getty Images

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遊撃手で新人王獲得も、侍ジャパンでは二塁へコンバート

 その場所は、世代トップと自らの距離を教えてくれる。日本大学時代とプロ入り後、日の丸のユニホームに袖を通した中日・京田陽太内野手。所属チームで感じるものとは異質の重圧や刺激だけでなく、経験のなかった悔しさも味わった。野球日本代表「侍ジャパン」という特別な舞台でともに戦った「2人の遊撃手」の存在が、京田選手の成長を促した。

 鏡に写したように、見える景色や動きが反転する。2017年11月、日本と韓国、チャイニーズタイペイが参加した「ENEOS アジア プロ野球チャンピオンシップ 2017」。全3試合に1番打者でスタメン出場した京田選手の守備位置は、主に二塁だった。ルーキーだったこの年、中日では遊撃で141試合に出場。チームの新人記録を塗り替える149安打を放って新人王も獲得したが、プロ入り後初招集の侍ジャパンで守ったのは、“いつもの場所”ではなかった。

 遊撃には埼玉西武・源田壮亮内野手がいた。同期入団でともに新人王に輝きながら、かたやフルイニング出場で155安打。数字の上では勝てないと分かっていたが、同じチームで自分が二塁に回されると、その差は想像以上に大きく見えた。「今だから言えますけど……」。そう苦笑いしながら、京田選手は振り返る。

同じく新人王の源田選手から受けた刺激「完成度の高いショート」

「(稲葉篤紀監督に)セカンドと言われた時は『ああ、自分は劣っているんだな』と思いました。当然のことなんですけど、正直すごく悔しい思いはありましたね」

 だから、余計に貪欲になった。暇さえあれば、源田選手を目で追った。グラブを出すタイミングや体のバランスなど、気になったことはとにかく聞いた。

「源田さんはどんな打球に対しても動きが一緒なんです。これは言うのは簡単ですが、やるのはめちゃくちゃ難しい」

 悠然と打球をさばく姿は格好の手本だった。「僕が言うのもおこがましいですが、完成度の高いショートだな、と思いました」。

 センスや身体能力任せで荒削りな自らに、足りない部分を見つめ直すきっかけになった。

世代のトップが集まる侍ジャパンは学び舎「色々な選手を見て学べる場所」

 京田選手にとって侍ジャパンは「色々な選手を見て学べる場所」、すなわち学び舎でもある。日本大学4年の時に出場した「第40回 日米大学野球選手権」でも、同世代の才能に、直に触れた。俊足巧打に軽快な守備。「タイプも似ていて、いつも比べられていました」と意識するのは、中京学院大学の吉川尚輝内野手(現・読売)だった。

 堅実さが支える守備のスピード感。「野生的。そんな感じがしました」。同級生ながら超一級品の素材に目を奪われた。

大会期間中は同部屋で、練習でもキャッチボールの相手となり、公私の話をしても馬が合った。ライバル心むき出しというよりも「同世代で一番気になる選手」。プロ入り後の経験値では先んじたが、今もその関係は変わらない。

 源田選手と吉川選手。この2人の遊撃手とは、これからも競っていくことになる。「まだ僕は周囲が納得する結果を出せていない」と京田選手。それでもプロ4年目を迎え、「守備面では自信はついてきました」と胸を張る部分もある。

 失われない積極性と底知れない吸収力。世代を引っ張る遊撃手として、近いうちに「侍ジャパン」で定位置に立ってみせる。

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