21歳で現役引退 第2の人生を歩み始めた元投手の心に残るU-18代表監督の教え

2020.4.20

21歳という若さながら、昨季限りで現役生活にピリオドを打った人物がいる。それが元千葉ロッテの右腕・島孝明氏だ。セカンドキャリア特別選考を経て、今年4月から国学院大学人間開発学部健康体育学科に進学。大学生として第2の人生を歩み始めた。世界中で猛威を振るう新型コロナウイルスの影響により、大学は休校中。「まだ全然実感が沸きません」と新たなキャリアの始まりに胸を高鳴らせている。

写真提供=Full-Count

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昨季限りで現役引退した島孝明氏、今春から大学生として再スタート

 21歳という若さながら、昨季限りで現役生活にピリオドを打った人物がいる。それが元千葉ロッテの右腕・島孝明氏だ。セカンドキャリア特別選考を経て、今年4月から国学院大学人間開発学部健康体育学科に進学。大学生として第2の人生を歩み始めた。世界中で猛威を振るう新型コロナウイルスの影響により、大学は休校中。「まだ全然実感が沸きません」と新たなキャリアの始まりに胸を高鳴らせている。

 地元・千葉県の東海大市原望洋高から2016年ドラフト3位で千葉ロッテに入団。時速150キロを超えるストレートを武器とした強気なピッチングが信条だったが、怪我などに苦しみ、1軍登板はないまま引退を決意した。そんな島氏の心に、今でも大きな財産として残る経験がある。それが2016年に台湾で開催された「第11回 BFA U18アジア選手権」だ。島氏は侍ジャパンU-18代表メンバーとしてアジアの頂点に輝いた。

 高校最後の夏、甲子園出場が叶わなかった島氏だが、その力強い投げっぷりがU-18代表を率いた小枝守監督の目に留まり、代表入りを果たした。「選ばれるとは思っていなかったので、ちょっと信じられない感じでした。何かの間違いじゃないかと思ったくらいです」と振り返るが、事前合宿で全員が集合した時は、さらにその思いを強くしたという。

「甲子園に出ていたスターたちが勢揃いしていたので、ものすごく緊張しましたね。本当に場違いな感じがしてしまいました」

 当時、高校ビッグ3と呼ばれた履正社高校の寺島成輝投手(現・東京ヤクルト)、横浜高校の藤平尚真投手(現・東北楽天)、花咲徳栄高校の高橋昂也投手(現・広島東洋)に加え、作新学院高の今井達也投手(現・埼玉西武)ら、その夏の甲子園を沸かせた選手たちは、同級生から見ても雲の上の存在だったという。その中で、島氏が心に持ったのは「甲子園に行けなかった悔しい思いを、高校の仲間たちの分も僕が背負って、日本代表で頑張ろう」という強い気持ちだった。

まさかのU-18代表入り、強気のピッチングで初戦勝利に大きく貢献

 強い思いを持って臨んだ初戦・香港戦では、6回から2番手として登板。2イニングを投げて打者6人から5三振を奪う完璧なリリーフで白星発進に大きく貢献した。2戦目以降も快進撃を続けたチームは、決勝でチャイニーズ・タイペイとの接戦を1-0で制し、見事に全勝優勝を飾った。

「チームとして1試合1試合、みんなが1つになっていく感覚がありました。試合中はみんなで声を出しあって、ベンチにいる人たちも全員で試合を戦っている感じがしました。優勝した時は本当にうれしかったです。特に、決勝は最後の最後まで緊張感のある試合だったので、本当に盛り上がりましたし、優勝の喜びがさらに強くなりました」

 大会では、ボールやマウンドの違いに自身の感覚を適応させたり、他の投手がどのように体を使って投げているのか観察したり、野球選手として普段は得られない多くの学びを手に入れた。だが、島氏の心に大きく響いたのは、今は亡き名将・小枝監督の下でプレーできた経験だった。

「監督は『フレッシュに、高校生らしさを大事にしていこう』とおっしゃっていました。野球選手としての立ち居振る舞いはどうあるべきかとか、日本代表としての誇りを持っていこう、という話も常になさっていました」

心に残る小枝監督の教え「人間性を一番重視なさっていたと思います」

 小枝監督は日大三高(東京)、拓大紅陵高(千葉)の監督を歴任。両校で春夏合わせて10回の甲子園出場歴を持つ高校野球界の名物監督だった。2014年夏をもって拓大紅陵高の監督を退任した後、2016年から2年の任期で侍ジャパンU-18の代表監督となった。千葉で育った島氏にとって、地元の強豪・拓大紅陵高を率いた小枝監督は、まさにレジェンドのような存在だった。

 短い期間ではあったが小枝監督の指揮の下でプレーすると、技術的なアドバイスや戦術以上に、野球に対する姿勢や人としての振る舞いなど、人間的成長を促される学びが多いことに気付かされたという。

「常に自分が試合に出るわけではなく待機する中での準備の仕方、野球に対する気持ちの持ち方を学ばせていただきましたが、人間性というところを小枝監督は一番重視なさっていたと思います。チームとして1つにまとまることができたのも、小枝監督の教えがあったから。数々の実績がある監督の下で野球をし、多くのことを学んだ経験は、自分にとって大きな財産になったと思います」

 今年から大学生として新たなチャレンジに臨む島氏は将来、国際関係の仕事に就きたいという。人として、どうあるべきか――。ユニホームを脱いだ今でも、そしてこの先もずっと、小枝監督の教えは優勝の思い出とともに心に深く刻み込まれている。

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