元代表コーチが語る侍ジャパン社会人代表の意義と魅力 「選手たちの目標になる」

2020.2.10

野球日本代表「侍ジャパン」はトップチームを筆頭に8つのカテゴリーが設けられ、それぞれが国際舞台で活躍を見せている。2019年、社会人代表はフランスで行われた「2019 FIBT-YOSHIDA CHALLENGE」と、台湾で行われた「第29回 BFAアジア選手権」に出場。前者ではフランス代表と戦った5試合を4勝1敗で勝ち越し、後者では決勝で地元のチャイニーズ・タイペイに4-5と惜敗して、準優勝となった。アマチュア野球界のトップ選手が集う社会人代表は、日本の誇りをかけた国際大会に向け、どのようなモチベーションを持って戦っているのだろうか。

写真提供=Full-Count

写真提供=Full-Count

社会人代表のコーチとして4度、国際大会に出場した現慶応大学監督・堀井哲也氏

 野球日本代表「侍ジャパン」はトップチームを筆頭に8つのカテゴリーが設けられ、それぞれが国際舞台で活躍を見せている。2019年、社会人代表はフランスで行われた「2019 FIBT-YOSHIDA CHALLENGE」と、台湾で行われた「第29回 BFAアジア選手権」に出場。前者ではフランス代表と戦った5試合を4勝1敗で勝ち越し、後者では決勝で地元のチャイニーズ・タイペイに4-5と惜敗して、準優勝となった。アマチュア野球界のトップ選手が集う社会人代表は、日本の誇りをかけた国際大会に向け、どのようなモチベーションを持って戦っているのだろうか。

 昨年12月から慶応大学硬式野球部監督に就任した堀井哲也氏は、社会人代表のコーチとして4度、国際大会に出場した経験を持つ。また、社会人野球では三菱自動車岡崎、JR東日本で通算23年も監督を務めた人物。社会人野球の髄を知る堀井氏が携わった代表チームでは、2009年には長野久義外野手(広島東洋)、大谷智久投手(千葉ロッテ)、阿南徹投手(現読売職員)ら、12年は大瀬良大地投手、田中広輔内野手(ともに広島東洋)、13年は石川歩投手や井上晴哉内野手(ともに千葉ロッテ)、14年は西野真弘内野手(オリックス)や倉本寿彦内野手(横浜DeNA)らがプレー。社会人代表を経験した後にプロ野球の世界へ羽ばたいた。

「世界的に見ると、男子代表ではトップチーム以外は年齢別となっており、日本でいう『社会人野球』というカテゴリーはありません。ですが、侍ジャパンには社会人代表という枠組みがあり、社会人の選手たちが生きていく場所、勝負できる場所があります。ありがたいことですし、選手たちの目標になります」

 それぞれが企業の看板を背負って戦う社会人選手たち。都市対抗野球の本戦や予選などトーナメント形式の一発勝負では、手強い対戦相手として互いに火花を散らすが、代表チームに集まると「強く太い絆、繋がりを持つ集団」になるという。

「社会人選手は、ここぞという瞬間にかけるエネルギー、声のタイミングを熟知している」

 とりわけ、堀井氏が「さすが、都市対抗野球を経験した選手だ」と感じるのは、ベンチから声が上がるタイミングがチームで一致する時だという。一発勝負のようなギリギリの戦いを重ねた者が研ぎ澄ます、試合の流れや勝機を感じる嗅覚のようなものがある。

「私が勝負所だと思った場面で、ベンチにいる選手から『ここで1本!』という声が上がると、『そうそう、ここで1本ほしいよな』と思いが合致することがすごくうれしいです。一発勝負を多く戦う社会人選手は、ここぞという瞬間にかけるエネルギー、声のタイミングを熟知していると感じます」

 また、代表チームの一員として日の丸を背負い、国際大会を戦う中で、選手の新たな才能が開花する瞬間にも立ち会ってきた。日本国内で日本人選手と対戦する日常から飛び出し、海外を舞台に各国の代表選手と戦う経験が、選手の成長を促すこともある。

「普段と景色が変わると、野球観まで変わることがあるんです。投手だったら『このコースを打者は振らない』と思い込んでいたボール球でも、他国の打者はバットを振ることもある。そうすると、投手はピッチングの幅も広がり、自信も増します。打者の場合も同じです。国際大会では、審判によってストライクゾーンがまちまちなこともあるので、必然的に好球必打となる。すると、初球から積極的にバットを振れなかった打者が振れるようになったり、それをきっかけに打撃のレベルが上がることもあります」

社会人代表の国際大会は「彼らの勝負強さが披露される場所」

 もちろん、予期せぬ壁にぶつかることもある。投手の場合、日本国内では打者を抑えられた球を、北中米のパワーヒッターに軽々とホームランにされてしまうことも。だが、それも1つの「痛い経験」として成長の糧になると堀井監督は話す。

 また、監督やコーチが国際大会を経験することで、選手指導の幅が広がるメリットもあるという。

「指導する側としても、国際大会の経験を生かし、選手たちに現時点での立ち位置、どれくらいのレベルにいるのかなどを伝えることができる。私自身にとっても、非常にいい経験となりました」

 堀井氏は今年から社会人野球を離れ、母校の慶応大学で硬式野球部を率いる。戦いの舞台は変われど、長く深く関わってきた社会人野球への思い、誇りは失われない。

「一発勝負の戦いを勝ち抜いていくことは非常に価値のある経験。そこから選ばれた一流の集まりが、侍ジャパン社会人代表だと思います。社会人代表の国際大会は、彼らの勝負強さが披露される場所。勝負所にピークを合わせる術にも長けています。今の時代は、野球を見る人の目が肥えています。社会人代表の戦いは、現代の“本物志向”の野球ファンを魅了する選択肢になるのではないでしょうか」

 2020年、侍ジャパン社会人代表がどんな戦いで、野球ファンを魅了してくれるのか、楽しみだ。

記事提供=Full-Count
写真提供=Full-Count

NEWS新着記事