「日米大学野球」で感じたベースボール ロッテ3年目右腕が大学代表で得た経験

2019.12.16

2016年6月。当時、桜美林大学4年生だった佐々木千隼投手(千葉ロッテ)は、同年7月に開催される「第40回 日米大学野球選手権大会」の侍ジャパン大学代表24選手が発表された時、その耳を疑ったという。桜美林大学硬式野球部では3年生の頃からエースとして頭角を現し、ストレートは最速153キロを計測。剛球右腕として首都大学野球リーグ1部でその名を知らしめていた。大学代表選考合宿でも存在感を示し、指揮を執った横井人輝監督はメンバー発表の段階から佐々木投手の先発起用を明言。それでも、自身にとっては「まさか」の出来事だった。

写真提供=Full-Count

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ロッテ佐々木千隼投手が振り返る「第40回 日米大学野球選手権大会」

「え? 自分が大学代表?」

 2016年6月。当時、桜美林大学4年生だった佐々木千隼投手(千葉ロッテ)は、同年7月に開催される「第40回 日米大学野球選手権大会」の侍ジャパン大学代表24選手が発表された時、その耳を疑ったという。桜美林大学硬式野球部では3年生の頃からエースとして頭角を現し、ストレートは最速153キロを計測。剛球右腕として首都大学野球リーグ1部でその名を知らしめていた。大学代表選考合宿でも存在感を示し、指揮を執った横井人輝監督はメンバー発表の段階から佐々木投手の先発起用を明言。それでも、自身にとっては「まさか」の出来事だった。

「僕の大学では過去にドラフト指名を受けた投手はいなくて、プロ入りするイメージや大学代表に選ばれるイメージが全くなかったんです。なので、大学代表の選考合宿に行っても、六大学野球所属の選手は『すごいな、なんか違うな』と別世界にいるようでした(笑)」

 ご存じの通り、東京六大学野球は屈指の人気を誇る大学リーグ。プロ野球選手を多数輩出する名門大学がズラリと並び、強気のピッチングスタイルを持ち味とする佐々木投手でも気後れしてしまったようだ。中でも大きな衝撃を受けたのが、明治大学のエースだった柳裕也投手(中日)の存在だったという。柳投手は侍ジャパン大学代表のキャプテンにも任命されていた。

「国際大会を経験できたことはもちろんですが、僕にとって一番大きな経験になったのは、柳と同じチームでプレーできたことです。柳は同い年ですが、その人間性に驚かされました。選考合宿の時から、六大学、東都大学、首都大学とリーグごとに選手がまとまってしまっていたのですが、宿舎の全部屋を回ってみんなと会話するようにしていたんです。キャプテンとしての姿勢や気配りは教えられる部分が多くて、野球の実力もすごいけれど、人間的にもすごい男でした」

米国代表選手のパワーを体感 「これがベースボールなのか」

 柳投手が率いたチームには、佐々木投手の他にも浜口遥大投手(横浜DeNA)、京田陽太内野手(中日)、吉川尚輝内野手(読売)、大山悠輔内野手(阪神)、辰己涼介外野手(東北楽天)らが名を連ね、全5戦シリーズを3勝2敗と勝ち越して2大会連続18回目の優勝を飾った。この時、第1戦の先発という大役を任された佐々木投手は、7回を投げて3安打1失点の力投。侍ジャパンを白星発進へ導き、シリーズの流れを決めた。

 初めて侍ジャパンのユニホームに身を包んで立った開幕戦のマウンド。気持ちが引き締まる思いと同時に、「代表に選んでいただいた以上、変なピッチングはできない。ましてや炎上なんてあり得ない」というプレッシャーが肩に重くのしかかっていたという。それでもマウンド上では緊張の素振りさえ見せず、先制点を許したものの12奪三振を記録。スタンドに詰めかけたプロ球団のスカウトたちを唸らせ、横井監督からは「100点」の最高評価を受けた。

 この時に対戦した米国代表の打者たちは蒼々たる顔ぶれだった。4番には投打の二刀流として注目を浴びるブレンダン・マクケイ投手(タンパベイ・レイズ)、5番には今季ミルウォーキー・ブルワーズの二塁手として活躍し、ルーキーながら打率.303、19本塁打を記録したケストン・ヒウラ内野手が並んだ。その他にも、ジャレン・ケンドール外野手(ロサンゼルス・ドジャース)、ジェイク・バーガー内野手(シカゴ・ホワイトソックス)といった2017年ドラフト1巡目指名選手の姿もあった。

 佐々木投手はこの4選手と合計12打席で対戦し、わずか1安打を許しただけ。ヒットを打ったのは2回の先頭打者、マクケイ投手だった。初めて投げる国際大会で好成績を残しながらも感じた、米国代表が持つ力強さは、今でも印象に残っているという。

「やっぱり力強さは違いました。バットのスイングにしても、投げるボールにしても、足の速さにしても、本当に力強かった。『これがベースボールなのか。素直に格好いいな』と思いました。今、この時の経験が生きているかというと、まだ分かりません。ただ、いい経験になりました」

プロ入り後は「納得できる数字は残せていません」 今はただ「とにかく野球が上手くなりたい」

 2016年ドラフト1位で千葉ロッテに入団した佐々木投手は、翌年に1軍デビューを飾ったものの、右肘の手術などもあり、ここまで3シーズンで1軍登板は合計22試合。6勝8敗、防御率3.76の成績について「納得できる数字は残せていません」と言い、大学代表でチームメートだった柳投手や浜口投手らの活躍に「自分が結果を出せていないので、刺激になるというより、情けない気持ちになります」と辛口の自己評価を下す。

 だが、ここで腐るような右腕ではない。侍ジャパンのトップチーム入りを目指したい思いについて問われると、キリッと表情を引き締めて言った。

「現時点では絶対に無理。もっともっとレベルアップしないと遠い話ですし、今の僕が目指したいと言ったらおこがましい。とにかく僕は野球が上手くなりたいです。いい球を投げたい。その思いを持って投げ続けます」

 まずはプロの世界で結果を出すこと。その挑戦を続けた先には、今度はトップチームの一員として日の丸を背負う佐々木投手の姿があるかもしれない。

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