侍ジャパンが「プレミア12」初優勝で得た収穫と課題 稲葉監督が掴んだ日本の形

2019.11.26

稲葉篤紀監督率いる野球日本代表「侍ジャパン」は2019年11月に開催された「第2回 WBSC プレミア12」で、10年ぶりに世界一に輝いた。2020年に向けた試金石とも言える大会で、十分な結果を残した28人の侍たち。スーパーラウンドで米国に敗れたものの首位で決勝に進出すると、長年のライバル・韓国を相手に見事な逆転勝ちで頂点に立った。大会初優勝という最高の結果に、試合後、指揮官は涙を流して喜んだ。

写真提供=Getty Images

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大会直前に行われたカナダ戦で「こういう野球でやっていくんだと思えた」

 稲葉篤紀監督率いる野球日本代表「侍ジャパン」は2019年11月に開催された「第2回 WBSC プレミア12」で、10年ぶりに世界一に輝いた。2020年に向けた試金石とも言える大会で、十分な結果を残した28人の侍たち。スーパーラウンドで米国に敗れたものの首位で決勝に進出すると、長年のライバル・韓国を相手に見事な逆転勝ちで頂点に立った。大会初優勝という最高の結果に、試合後、指揮官は涙を流して喜んだ。

 大会に先駆け、侍ジャパンは10月21日に宮崎に集結して合宿を開始。2次合宿地の沖縄へ移動した同27日からは、日本シリーズに出場していた福岡ソフトバンク、読売の選手たちも合流し、1つのチームとして約3週間に渡る戦いをくぐり抜けた。稲葉監督は「今回はどの試合も楽な展開はなかった中で選手が粘り強くやってくれたことが、この素晴らしい結果に繋がったと思います」と今大会を振り返ったが、苦しい時もチーム一丸となって乗り越えた。

 台湾で行われたオープニングラウンド初戦のベネズエラ戦では終盤までビハインドの展開も、8回に逆転に成功。終盤の追い上げで白星スタートを飾ると、オープニングラウンドを3連勝で勝ち抜いた。舞台を日本に移したスーパーラウンドでは第2戦の米国戦こそ敗れたが、最終戦で韓国を破るなど通算4勝1敗の首位で決勝に進出。日韓対決2連戦となった決勝では先制を許しながら、山田哲人内野手(東京ヤクルト)に逆転3ランが飛び出し、大一番を制して世界の頂点に立った。

 今大会では、リードを許しても最後まで諦めず、逆転の機運を呼び込む侍ジャパンの戦い方が光った。どんな状況でも地道に1点を重ねる粘り強さ。稲葉監督がその重要性を噛みしめたのが、大会直前に行った「ENEOS 侍ジャパンシリーズ2019」カナダ戦の初戦だったという。序盤に6点を奪われながら地道に反撃して追い上げたチームの姿に、「沖縄でのカナダ戦で負けはしましたけど、1点差まで詰め寄った。こういう野球でやっていくんだと思えた。1点ずつ取っていくことが大事だと分かってやれた」と振り返る。敗戦の中にも、侍ジャパンとしての戦い方という光明を見た。

稲葉監督が感じた課題とは… 「アジアの投手と北中米の投手は全く違う」

 初めて見る投手との対戦が多い国際大会ともなれば、打者はそう易々とヒットを打たせてもらえない。連打や長打、一発での得点が容易くない状況では、「粘り強くやっていくこと。四球を選ぶ、バントをやる。なかなか長打は出ないので1点ずつコツコツ取るということは勉強になった」と指揮官は語る。その侍ジャパンが大会を通じて記録した42四球は、出場12チームでダントツ。2位の韓国が34四球だったことを考えると、大会初優勝を飾った要因の1つは選球眼にあったと言えそうだ。

 打線が少ないチャンスを生かして1点に繋げれば、最大の武器である投手力でリードを守り抜く。先手を奪われても、強力なリリーフ陣が追加点を許さず、逆転のチャンスに繋げる。投打が互いに粘り強さを見せながら、勝機を引き寄せる戦いの形が確立された。

 収穫と同時に課題も見えた。今大会で全8戦を戦う中で、稲葉監督は「アジアの投手と北中米の投手は全く違う」と感じたという。技術やコントロールに優れるチャイニーズ・タイペイや韓国の投手に対し、米国やプエルトリコ、ベネズエラなどの選手たちは手元で動くボールに、力強さが加わる。普段、対戦機会の少ない北中米のパワーピッチャーに、侍ジャパンとしてどう対応するべきなのか。どういうタイプの打者がアジャストしやすいのか、という点も含め、今後の打線編成で大きな鍵を握りそうだ。

「プレミア12」では28人だった選手登録枠は、2020年には24人に減少する。今大会では俊足の周東佑京外野手(福岡ソフトバンク)が代走の切り札として活躍。稲葉監督が「スペシャリストをどれだけ入れることができるか。今大会を通じて必要なことではないかと考えるようになりました」と語るように、投手と野手の割合に加え、“スペシャリスト”の存在もまた、選手選考の際に指揮官の頭を悩ませることになりそうだ。

 就任以来、チームの「結束力」を重視する指揮官の思いを知る28選手は、全員がチームの勝利のために働いた。「今回は特にジャパンに対して熱い思いのあるメンバーが集まってくれた。最後も熱いメンバーで戦いたい」と稲葉監督。「プレミア12」初優勝という目標を達成して得た経験、自信を胸に、侍ジャパンは2020年を迎える。

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