指揮官が涙したチームの結束力 日本通運野球部、都市対抗野球で55年ぶりの日本一を目指す

2019.7.10

7月13日に第90回都市対抗野球大会が東京ドームで開幕する。5年連続44度目の出場となる日本通運は、大会初日にJR東海と対戦予定。一昨年は準優勝し、昨年はその上を目指したが、2回戦で鷺宮製作所に0-1で惜敗。今年の南関東2次予選は、負けたら終わりの状況から第3代表を勝ち取った。1点の重みを噛みしめながら、チームは成長した。その陰には藪宏明監督も胸を熱くするようなチームの結束力があった。

写真提供=Full-Count

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一昨年準優勝も昨年は1点差で2回戦敗退、悔しさ乗り越え目指すは頂点

 7月13日に第90回都市対抗野球大会が東京ドームで開幕する。5年連続44度目の出場となる日本通運は、大会初日にJR東海と対戦予定。一昨年は準優勝し、昨年はその上を目指したが、2回戦で鷺宮製作所に0-1で惜敗。今年の南関東2次予選は、負けたら終わりの状況から第3代表を勝ち取った。1点の重みを噛みしめながら、チームは成長した。その陰には藪宏明監督も胸を熱くするようなチームの結束力があった。

 外野フェンスに目を向けると、力強くスローガンが書かれた横断幕が掲げられている。今年1月に両翼95メートル、中堅118メートル、外野が人工芝の専用球場「NITTSU浦和ボールパーク」がさいたま市内に完成した。そのグラウンドで選手たちは決戦に向けて、最終調整をしていた。

「強己 結集 優笑~日通ファンとともに~」

 OBでコーチも10年務め、2011年から指揮を執る藪宏明監督を中心に考えられた言葉だった。強い自分を作り、その“己”の強さを結集し、チーム力を高める。そして頂点へ「いい顔」で向かっていくという意味を示している。

 強己。日々のレベルアップは充実の施設が後押しする。専用球場の隣には寮やブルペン、室内練習場が設置されているため、時間を問わず練習ができる。夜中でもスイングをしている選手の姿もある。

 今年は監督、選手の中でもチームへの手応えを感じていたが、出場決定までは苦しい戦いだった。後がなくなった第3代表出場決定戦で勝利し、出場を決めた。

「2度、敗者にまわり、最後に勝つことができました。失敗をして覚えていくことも大きいですし、失敗しないと我に返って、修正もできませんから」

 藪監督はこのように振り返った。敗戦からも大きな収穫を得たという。選手たちが試合ごとに何が足りないかを考え、個人練習に励んだ。しかし、JFE東日本、かずさマジックと予選で強豪に敗れ、瀬戸際に追い込まれた。決戦を前にした練習日。どのようにチームの士気を落とさずに鼓舞させようか考えていた指揮官は、チームの結束力に目頭が熱くなった。

2回戦敗退に終わった昨年の反省「結果を求めすぎてしまっていた部分がありました」

「レギュラーではない、控えの選手やベンチ入りメンバーから外れた選手が、意図的にチームを盛り上げていたんです。その姿を見て、感動してしまいました。こんなチームを負けさせるわけにはいかないと強い気持ちになりましたね」

 指揮官は選手たちにわからないように練習場に背を向けて、涙をぬぐったという。己が強くなり、結集された力で挑んだ第3代表決定戦。かずさマジックに3-2、接戦で勝利し、本大会出場を決めた。

 1点の重みは昨年の大会でも味わった。2回戦では鷺宮製作所に完封負けをした。一昨年の準優勝を越えようと挑んだ夢は序盤で崩れていった。優勝への意識が強かったのかもしれない。あの負けから1年。打撃の修正はできたと藪監督は実感している。

「結果を求めすぎてしまっていた部分がありました。ファーストストライクが振れていないなど、同じやられ方をしてしまっていた。(準優勝した)一昨年はそうではなかった。追い込まれるまでは、ボールに合わせるのではなく、自分の打撃をしよう、という心掛けですね」

 主将の浦部剛史内野手を中心に、自立して考えるチームができたと自負している。スローガンとは別に、藪監督は就任以降、試合やグラウンドへの「入り方」、試合では「しっかり守って攻撃に転ずる」、そして「いい顔で野球をやろう」と3つの心掛けをしているという。

「ゲームもシートノックも挨拶もそうです。一番最初の“入り”を大切にしてほしい。野球としては守り勝つ野球をしたい。そして、いい顔というのは、向かっていく表情です。なんと言葉にしたらいいか表現が難しいですが、やる気に満ちたというか、意気揚々としているような“いい顔”で野球に取り組んでほしいと思っています」

 昨年は頂点を意識しすぎた部分はあった。決勝戦を見据えるのではなく、一戦必勝で戦い抜く覚悟だ。強い気持ちを結集させて、最後は笑って、終わる「優笑」(優勝)。チームはスローガンのもとに、55年ぶりの優勝を目指していく。

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