侍ジャパンU-12代表から広がる育成の輪 就任6年目・仁志監督のブレない指導方針とは

2019.7.1

令和最初の夏休みを迎えて間もない7月26日、台湾・台南市を舞台に「第5回 WBSC U-12ワールドカップ」が開幕する。世界を代表する12の国と地域が参加。野球日本代表「侍ジャパンU-12代表」は初優勝を目指す。

写真提供=Getty Images

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7月26日から台湾で「第5回 WBSC U-12ワールドカップ」が開幕

 令和最初の夏休みを迎えて間もない7月26日、台湾・台南市を舞台に「第5回 WBSC U-12ワールドカップ」が開幕する。世界を代表する12の国と地域が参加。野球日本代表「侍ジャパンU-12代表」は初優勝を目指す。

 大会では、AとBの2グループに6チームずつ分かれ、まずは総当たり戦のオープニングラウンドを戦う。上位3チームずつ計6チームが駒を進めるスーパーラウンドでは、オープニングラウンドでは別グループだった3チームと対戦。大会最終日となる8月4日に1位と2位が決勝を戦い、3位と4位が3位決定戦を行う。日本はチャイニーズ・タイペイ、キューバ、チェコ、南アフリカ、フィジーと同じグループAに所属。7月26日の初戦はチェコと対戦する。

 6年連続で侍ジャパンU-12代表を率いるのは、元読売の仁志敏久監督。15年間の現役生活では米独立リーグでもプレー。引退後は筑波大学大学院で学ぶなど、経験も知識も豊富な人物だ。トップチームでは内野守備・走塁コーチを務めた経験も持ち、各地で野球教室や座談会を開くなど、野球界の発展にも尽力。そんな仁志監督は、日頃からアンダー世代での育成の重要性を説いており、侍ジャパンU-12代表でも選手を育てる試みを実践しているという。

仁志監督の指導とは「選手一人一人の動きをよく観察していましたね」

 群馬県館林市にある慶友整形外科病院の古島弘三医師は、昨年8月に台湾・台北市で行われた「第10回 BFA U12アジア選手権」にチームドクターとして同行した。プロアマを問わず年間800人を超える野球選手の肘を診察する古島医師は、1人でも多くの選手が故障せず、少しでも長く野球をプレーし続けられることを願い、アンダー世代における練習過多に警鐘を鳴らす1人でもある。野球選手としてはもちろん、人間として成長するためにも「アンダー世代にとって一番大切なのは指導者」と訴える古島医師は、勝利が求められる環境下でも選手の自主性を重んじた指導を行う仁志監督の方針に感銘を受けたという。

「仁志監督は、いわゆるスキル指導は全くというほどしていませんでした。その代わり、選手一人一人の動きをよく観察していましたね。練習の中でミスが起きてもとがめない。どうしたらミスが起きないようになるのか、答えを与えるのではなく、子供たちに自分たちの力で考えるように伝えていました。日本代表チームともなれば、結果を求められるプレッシャーは大きいと思います。その中でも、選手の未来につながる成長を考えた指導を続けることは素晴らしいと感じました」

 侍ジャパンU-12代表入りを果たした18人は、硬式野球の指定5団体のいずれかに所属する選手。動画による審査・選考「デジタルチャレンジ」を通過した男女44選手が、6月8日に神奈川県にある東芝総合グラウンドでの最終トライアウトに参加し、送球、走力、打撃、守備など秘める才能を披露した。トライアウト前には「侍ジャパン野球健康診断」が行われ、医師による肩・肘・腰などの超音波検査や触診のほか、理学療法士やトレーナーによる可動域や柔軟性のチェックを実施。未来ある子供たちの身体をケアした。

侍ジャパンU-12代表で得た経験や知識を選手がそれぞれのチームに還元「意義あること」

 古島医師が参加した昨年のアジア選手権では、全国から精鋭15人が集結。今回と同様の検査やチェックを行ったところ、想像以上に身体の柔軟性に乏しい選手が多く、また15人のうち10人が肘の内側を痛めていたという。侍ジャパンU-12代表では、川島浩史トレーナーが肩甲骨周りや股関節などの柔軟性を高めたり、体幹を鍛えたりするストレッチやトレーニングを伝授。その動きが野球の試合ではどんなプレーに生きるかなどの実例も挙げ、トレーニングやストレッチに対する選手の意識を高めたという。

 侍ジャパンU-12代表として活動するのは事前合宿も含め2週間ほどと短期だが、「侍ジャパンU-12代表として過ごす中で、自分で考える習慣が身についたり、怪我や痛みに対する意識が高まったりすることが大切。選手がそれぞれのチームに帰って、自分が学んだ知識や得た経験を仲間に伝えていくことに意義があると思います」と古島医師は話す。

 自身も高校生まで野球をプレーした古島医師は、昨年12月に館林慶友ポニーリーグという硬式野球チームを創設。仁志監督をチーム代表に迎え、アンダー世代を育成する活動を始めた。医療のエキスパートと野球指導のエキスパートによる選手育成のコラボレーション。侍ジャパンU-12代表から始まった育成の輪は、着実に広がりを見せている。

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