侍ジャパン女子代表・橘田監督がワールドカップ6連覇と共に目指す「リスペクト」

2018.6.4

侍ジャパン全カテゴリーで初の女性監督となった女子代表の橘田恵(きった・めぐみ)監督。選手とのコミュニケーションを重視して臨む「第8回WBSC女子野球ワールドカップ」(8月22日からアメリカ・フロリダ州)では、大会6連覇の期待が高まる。4月25日に発表された最終メンバー20人と一丸となり、「私の野球にはめていくのではなくて、個々のいいところを生かすため」の作戦を考え、旬の選手を生かした戦い方を進めていく。

写真提供=Full-Count

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幅広い世代、幅広い能力で目指す世界一「みんなに期待しています」

 侍ジャパン全カテゴリーで初の女性監督となった女子代表の橘田恵(きった・めぐみ)監督。選手とのコミュニケーションを重視して臨む「第8回WBSC女子野球ワールドカップ」(8月22日からアメリカ・フロリダ州)では、大会6連覇の期待が高まる。4月25日に発表された最終メンバー20人と一丸となり、「私の野球にはめていくのではなくて、個々のいいところを生かすため」の作戦を考え、旬の選手を生かした戦い方を進めていく。

 選手のコンディションには好不調があって当たり前。女子特有の体調の波もある。代表メンバー選考では、高校生からプロまで全カテゴリーからバランスよく選手を選んだ。その背景には、コンディションの考慮もあった。

「8月には全日本女子硬式野球選手権大会がありますし、ワールドカップ直前には各世代の大会がある。だから、1つの世代に偏ると選手の疲労度が偏ってしまうと思うので、特にピッチャーは各カテゴリーから選ぶことも前提としました。高校生のポテンシャルが年々上がっているのを見ても順当だったと思います。

 大会ではその時に旬な選手が一番活躍するでしょうし、旬な選手は活躍して当然。逆に少しコンディションを落としている選手は最低限の役割が果たせるよう、みんなに期待しています。全員に」

 選手にはそれぞれの役割があり、そのピースが1つでも欠けたらチームとして成り立たない。2014年、2016年とワールドカップでは2大会連続MVPに輝いた里綾実投手(愛知ディオーネ)や2012年から4大会連続で代表入りした川端友紀内野手(埼玉アストライア)ら8人のワールドカップ経験者には、高いレベルのプレーはもちろん、次世代につなぐ橋渡しの役割を期待。高校生3選手には「次世代のジャパンを引っ張っていってもらいたい」と願う。

 ワールドカップ本番では、世界の女子野球を見回しても日本が傑出している機動力やスピードを生かした戦いが主流となる。だが、その中でも型にはまった戦い方に固執するのではなく、対戦相手や状況に応じた戦術の引き出しをより多く持って大会に臨みたい。

「ただ打てるだけ、ただ走れるだけの選手を選んだつもりはありません。ポジションはいくつか守れることを前提にやっている。バリエーションを多く持った20人の選手で、どれだけ戦術を増やせるか。1つの策がハマらなかった時に、こういう戦い方もある、ああいう戦い方もある、という準備をしておくことが、選手たちの安心にもつながると思うんです」

「あの子たちの野球を私たちは見習おうと言ってもらえるプレーをしたい」


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 ここまでワールドカップ5連覇という事実を見ても、世界の女子野球を日本が牽引していることは間違いない。世界野球ソフトボール連盟で技術委員を務めていた橘田監督は、今後、女子野球が普及し、レベルアップする上でも、侍ジャパン女子代表は大会6連覇と同時に、他国のチームや野球少女たちの憧れ、手本であるべきだと考えている。

「対戦相手の力量を考えずに独りよがりの野球をするのではなく、あの子たちの野球を私たちは見習おうと言ってもらえるプレーをしたいと思います。勝つだけではなく、内容も見てもらえるような野球をしたいですね。そのためには相手をリスペクトすることは必要で、点差が大きく開いたところでも盗塁、バントをするという風にはならないかもしれません。

 ただ、日本のバントを警戒して、極端なバントシフトを敷かれた場合、三塁にバントする必要はない。バントの構えをして守備がもっと前に出てきたら、逆に打ってしまっていいと思うんです。これは戦術なので。バントシフトを敷きながら、投手はインコースに投げてくるのか、変化球で来るのか。相手がどういう発想で来るかを見定めた上で、リスペクトを持ちながら、こちらは選択肢を豊富に用意したいと思います」

 女子野球が世界に幅広く普及するため、日本に1人でも多くの野球少女が生まれ、息の長い選手生活を送る道を作るためにも、8月、橘田ジャパンがワールドカップで世界を席巻する。

◇橘田恵(きった・めぐみ)
1983年1月5日生まれ、35歳。中学ではソフトボール部に所属し、高校では県立小野高校硬式野球部に練習生として所属。大学は仙台大学硬式野球部に所属し、女子選手ながら公式戦で1安打1犠打を記録。2012年から履正社医療スポーツ専門学校の女子硬式野球部「履正社レクトヴィーナス」監督就任。2013年の全日本女子硬式野球選手権大会において創部2年で全国制覇、初の女性優勝監督となる。2014年には履正社高等学校の女子硬式野球部創部に伴い監督に就任。創部3年目で全国高等学校女子硬式野球選抜大会優勝。

選手としてもオーストラリアのヴィクトリア州に野球留学、ヴィクトリア州代表、全豪の大会でMVPを取るなど国際的に活躍。

2011年から国際野球連盟(現在の世界野球ソフトボール連盟)のアスリートコミッション委員に就任。2012年、14年の女子W杯技術委員を務める。また、2016年の女子W杯では日本人女性初の大会技術委員長を務めるなど、選手、監督として女子野球だけでなく、男子野球や国際野球にも精通。

【了】

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次回:6月11日20時頃公開予定

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