“戦友”から侍ジャパン稲葉監督へのエール「それが僕の素直な気持ちです」

2018.2.19

野球日本代表「侍ジャパン」のトップチームは、昨年7月に稲葉篤紀氏を新監督に迎え、世界一奪還に向けて再スタートを切った。昨年11月の「ENEOS アジア プロ野球チャンピオンシップ2017」では3連勝で優勝。3月には「ENEOS 侍ジャパンシリーズ2018」オーストラリア戦も控えており、着々と強化を進めている。その新チームを率いる指揮官と同世代で、プロ野球の世界をともに戦い抜いた戦友がいる。和田一浩氏だ。

写真提供=Full-Count

写真提供=Full-Count

和田一浩氏に聞く世界一奪還へのポイント

 野球日本代表「侍ジャパン」のトップチームは、昨年7月に稲葉篤紀氏を新監督に迎え、世界一奪還に向けて再スタートを切った。昨年11月の「ENEOS アジア プロ野球チャンピオンシップ2017」では3連勝で優勝。3月には「ENEOS 侍ジャパンシリーズ2018」オーストラリア戦も控えており、着々と強化を進めている。

 その新チームを率いる指揮官と同世代で、プロ野球の世界をともに戦い抜いた戦友がいる。和田一浩氏だ。2004年のアテネオリンピックや2006年の「第1回ワールド・ベースボール・クラシック™(WBC)」などで日の丸を背負った同氏に、世界一奪還へ必要なポイントと、期待する選手について聞いた。

 和田氏は旧知の仲である稲葉氏が率いるチームに人一倍、思い入れがあるという。

「同級生としても野球人としても僕は高校時代から知っていますし、すごく長い目で彼を見ています。悲願である頂点を取ってほしいですね。彼の人間性はすごく真面目で、そういった意味でも必要以上に背負いこんでしまう部分もあると思う。監督へのプレッシャーは相当だと思います。WBCやプレミア12、オリンピックでも優勝を期待されています。

 でも、彼はすでに多くの経験をしているし、これからも色々なことを吸収して素晴らしい指導者になっていくはずです。これから代表監督を終えるまでは相当なプレッシャーの中で生活していくことになるでしょう。直接的に関わるわけではないですけど、メディアなどを通じて彼を応援していければいいと思っています。それが僕の素直な気持ちですね」

 そうエールを送る和田氏は日の丸への思いも強い。「僕が今まで生きてきた中で、初めて君が代を歌った時にはこれほど国歌が重いものか、と感じました。そこで歌える君が代は素晴らしいなとも思った。それくらい重たいもの。プレッシャーがあるけど、誇りにも思いましたね」。国と国とがぶつかる真剣勝負。やりがいがある分、重圧ものしかかる。そのような舞台では日本を代表する選手といえど、本来の力を発揮することは容易ではない。和田氏は環境の違いについて指摘する。

「普段のペナントレースでやっている野球とは勝手が全く違いますから。いかに慣れておくかが大事になりますね。代表合宿の期間も短いですし、回数も少ない。その中で、いかにそういう場所(国際舞台)を想定しながら準備するかが大事になります。例えば、日本のプロ野球で許されるルールは世界に行けば通用しなくなることもある。日本だとボークを取られる牽制球でも国際大会なら取られないことも多々あります。いかにイレギュラーなことに慣れておくかが大事でしょう」

 昨年11月の「ENEOS アジア プロ野球チャンピオンシップ2017」ではU-24(24歳以下)の若い世代が中心となり、優勝を果たしたが、和田氏は選手たちが試合後に口にした“ある言葉”に注目したという。

「色々な記事を読んで、若い選手たちが優勝した時に『すごいプレッシャーだった』と言っているのを見ました。でも、厳しい言い方かもしれませんが所詮、3か国しか出場していない大会なのです。これが本大会になるとプレッシャーの度合いが全然違ってきます。だからこそ、慣れが必要になってくるんですね」

キャプテンの重要性、期待を寄せるエース、不動の正捕手の出現

 和田氏は実際にWBCやオリンピックに出場した当時を振り返り、キャプテンの存在が大きかったと話す。チームをまとめ、一つの目標に向かっていく――。その役割を誰が引き受けるのかが重要になるという。

「キャプテンの重要性は宮本(慎也)さんを間近で見て感じていました。すごくチームがまとまった。(2004年の)オリンピックでは結果は銅メダルだったんですが、僕は今までで最高のチームだと思いました。その後、(2006年の第1回)WBCで優勝しましたが、それもアテネで戦ったチーム、宮本さんを中心にみんなで“金メダル”という目標に一つになれた経験があったからだと思います。その役割を誰がやるのか。僕は絶対キャプテンは必要だと思う。やっぱりカラーが出るので。一つになって戦う重要性を感じましたね」

 そう語る和田氏は投手として柱になる存在にも言及した。期待を寄せるのは菅野智之投手(読売)だ。

「ポイントになる試合は2、3試合あって、それも強豪国とやる。勝たないといけいない、落とせない場面があります。最低でも2人のエース級が必要になりますし、計算できる投手が必要です。一方でメジャーリーガーが出られるかは分かりません。そう考えると、現状で菅野投手がエースとして君臨していかないといけない。僕らの時は上原浩治投手がいました。松坂大輔投手もいましたが、上原投手には安定感があった。絶対負けられない試合に投げる投手は現状、菅野投手で十分役割を果たせると思うし、上原投手がやっていた役割ができると思います」

 これまでの国際大会を見ても日本の投手陣が世界に通用することは証明済み。その中心が菅野投手となると予想する和田氏は、強力な投手陣をリードする捕手についても、柱となる候補を挙げた。ここ数年は圧倒的な実力を持った捕手が現れていないが、同氏が不動の正捕手を務める可能性がある選手として見ているのは森友哉捕手(埼玉西武)だ。

「打撃は現時点でもナンバーワンの域にきていると思います。あとは経験です。シーズンを通して出場した時にどれほどのものになるのか。打撃を含めてのスケールで考えれば今後10年、日本代表のキャッチャーを張れるものを持っています。日本の中で捕手は誰だ、といった時に持っているポテンシャルは凄いものがありますね」

 これから厳しい戦いに臨む稲葉監督。どのような選手を選び、どのようなチームに仕上げていくか、興味は尽きない。同監督と同じ時代を戦い抜いた元日の丸戦士たちも、その躍進を心から願っている。

記事提供=Full-Count
写真提供=Full-Count

NEWS新着記事