WBCでの「ミス」は「すごい経験」 松田宣浩「現役である以上は侍ジャパンに」

2018.1.22

世界一への熱い思いを抱くのが福岡ソフトバンクのムードメーカー、松田宣浩内野手だ。日の丸を背負うようになってから、2013年のWBC、2015年の「世界野球WBSCプレミア12」、そして昨年のWBCといずれも準決勝で敗退。「一番上のステージを見ていない年代としては当然見てみたい」と世界大会優勝への決意を明かし、「現役である以上は侍ジャパンに選ばれたい」と今後も日本代表に継続して選出されることを目標に掲げた。WBC米国戦での決勝点献上を「僕のミス」と言い切る男が、その胸中を明かした。

写真提供=Full-Count

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WBC2大会連続出場の松田、世界一への熱い思い「一番上のステージを見てみたい」

 世界一奪還へ向け、昨年7月に就任した稲葉篤紀監督のもとで“再スタート”を切った野球日本代表「侍ジャパン」。同11月の「ENEOS アジア プロ野球チャンピオンシップ2017(アジアCS)」では、出場選手が原則24歳以下、入団3年目以内(オーバーエイジ枠3人を含む)という大会規定の中で3連勝を飾り、初代王者に輝いた。ただ、今後は当然、25歳以上の選手も選考対象となるだけに、同3月の「第4回ワールド・ベースボール・クラシック™(WBC)」でベスト4進出に貢献した選手たちも選出されていくことになる。

 特に、世界一への熱い思いを抱くのが福岡ソフトバンクのムードメーカー、松田宣浩内野手だ。日の丸を背負うようになってから、2013年のWBC、2015年の「世界野球WBSCプレミア12」、そして昨年のWBCといずれも準決勝で敗退。「一番上のステージを見ていない年代としては当然見てみたい」と世界大会優勝への決意を明かし、「現役である以上は侍ジャパンに選ばれたい」と今後も日本代表に継続して選出されることを目標に掲げた。WBC米国戦での決勝点献上を「僕のミス」と言い切る男が、その胸中を明かした。

 目を背けたくなる事実と向き合い、乗り越えたことで、松田内野手は選手としてさらに一回り大きくなった。昨年3月21日(日本時間22日)に米国ロサンゼルスのドジャースタジアムで行われたWBC準決勝・米国戦。1-1で迎えた8回に日本は1点を失った。圧巻の投球を見せていた2番手・千賀滉大投手(福岡ソフトバンク)が1死二、三塁のピンチを招くと、アダム・ジョーンズの打球はゴロで松田内野手の正面に。しかし、これを捕り損ねてしまう。その間に三塁走者のブランドン・クロフォードが生還。松田内野手は一塁でジョーンズをアウトにしたものの、日本は大きな勝ち越し点を許し、これが結果的に相手の決勝点となった。

「球場の雰囲気がやっぱり違ったんですよね。見える景色が違った。東京ドームでやる試合とドジャースタジアムでやる試合は全然違うので、目から飛び込んでくる景色が違ったんです。守ってるときも。(試合は)すぐ終わったんですよ。僕もミスしてしまったけど、淡々と試合が終わった。雨もあったし、そういう感じですぐ終わったので、色々あっという間でした」

何度も映像で見直したあのプレー「準備が悪かったと思う」

 10か月が過ぎ、松田内野手はあの一戦についてこう振り返る。そして、自ら「ミス」と表現したプレーについても、逃げることなく言及した。

「やっぱり準備さえよければね。でも、準備してもスリップしたので……。まあ、どうにかしてあのボールをホームにつなげることはできなかったのか、という後悔はあります。でも、そういった意味ではあそこでまた戒めじゃないですけど、すごい経験をさせてもらったので、野球を舐めないというか、しっかり準備するということを教えてもらいましたよね」

 誰よりも世界一への思いを強く胸に抱き、挑んだ大会。そこで出てしまった「ミス」。そして、準決勝敗戦という結果。ただ、松田内野手はあのプレーから目を背けることなく、映像を「何回も見ている」という。

「あの時、(打者は)アダム・ジョーンズだったんですけど、初球やったんですよ。でも、やっぱり準備が悪かったと思う。初球から、もっと千賀が投げる前から気を張り詰めて『来い』という思いでやっていればよかった。でも、投げる瞬間に(気を)入れた。で、(打球が)来たので、1、2歩遅れたんです。千賀が投げる前から構えていれば対応できたものを千賀が投げる瞬間に(気を)入れたので、気づいたらもう(ボールが)目の前にあったんですね」

 原因は何だったのか。映像を見直すことで、自分の中でも課題を整理できた。そして、「準備」の大切さを改めて知った。大会後は、プロ野球の開幕が目前に迫っていた中で必死に切り替え、前に進んだ。その結果、シーズンでは2年ぶりの日本一という最高の結果を手にした。主力選手が次々と負傷離脱する中、松田内野手は3年連続となる全試合出場を果たし、チームを牽引した。

「(切り替えは)難しかったですけど、でもやっぱりもう切り替えるしかないから。次のステージに向けて、日本のプロ野球で頑張ろうと思って、一年間頑張れましたから」

WBCで世界一になっていたら「もう満足していたかもしれない」

 やはり大きな経験だった。そして、あのワンプレーがあったから、松田内野手は今も侍ジャパンへの意欲を持ち続けているという。現役の間は常に日の丸を背負うような存在でありたい。これが目標だ。

「現役である以上は侍ジャパンに選ばれたいと思っています。これまではずっとレギュラーという感じで出させてもらっていたけど、たとえ役割が変わっても、メンバーに入ってサポートしたいと思う。とにかく何かしたいですね。そういう思いは現役である以上、持ち続けたい。メンバーに選出、ノミネートされるような、選ばれるような選手でありたい。

 年齢が上であろうと、結果を出せば認めてくれて、選んでくださると思います。そういう意味で2018年、2019年は大事な年と僕は位置づけたいです。爆発的な数字を35、36歳で出したら、当然『お前しかいないな』と首脳陣は思うだろうし、そうやって選ばれたいと思う。チームでこの1、2年、結果を出すことがイコール、日本代表にまた選出される近道だと思っています」

 稲葉監督とは2013年のWBCではチームメートとして戦い、昨年のWBCでは打撃コーチと選手として本番に臨んだ間柄。「すごいですよ、監督。2013年は僕が9番で稲葉さんが8番だったし、去年は(稲葉監督は)打撃コーチやったし。その方が監督なのでね。すごい勉強熱心で熱い方ですよね」。世界一奪還を託された若き指揮官と再び“共闘”したい。そう願っている。

 侍ジャパンの一員として、3つの大会で連続して準決勝敗退という悔しさを味わった。実は、昨年のWBCで世界一を掴めていれば、「現役である以上は侍ジャパンに選ばれたい」という思いも「変わっていたでしょうね」と松田内野手は明かす。何が何でも世界の頂点に立つ――。この熱い思いが、日本球界を代表するサードを突き動かしている。

「僕らの代、中田翔もそうだし、第3回WBCで選ばれたメンバー、第4回WBCで選ばれたメンバーは世界一を経験できていない。一番上のステージを見ていない年代としては当然見てみたいし、逆に見ていたら、もう満足していたかもしれません」

 侍ジャパン戦士としてやり残したことがある。忘れ物を取り戻すために日本代表を目指し、日の丸を背負えば誇りを胸にグラウンドに立ち続ける――。松田内野手の世界一への挑戦はまだまだ終わらない。

【了】

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