アジア“全勝”、世界大会でも上位進出 2017年も各カテゴリーで強さ見せた侍ジャパン

2017.11.27

野球日本代表「侍ジャパン」は、2017年も各カテゴリーで好結果を残した。アジアでは“全勝”。世界大会でも全て上位に食い込み、世界野球ソフトボール連盟(WBSC)の世界ランキングでも、ライバルの米国らを抑えて男女ともに1位をキープしている。今年、日本が出場した野球の国際大会の数は、日米大学野球も含めて「9」。その戦いぶりを振り返ってみたい。

写真提供=Getty Images

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2017年の侍ジャパンの戦いぶりを振り返る

野球日本代表「侍ジャパン」は、2017年も各カテゴリーで好結果を残した。アジアでは“全勝”。世界大会でも全て上位に食い込み、世界野球ソフトボール連盟(WBSC)の世界ランキングでも、ライバルの米国らを抑えて男女ともに1位をキープしている。

今年、日本が出場した野球の国際大会の数は、日米大学野球も含めて「9」。その戦いぶりを振り返ってみたい。

まず“先陣”を切ったのはトップチームだった。小久保裕紀前監督が率いて、「第4回ワールド・ベースボール・クラシック™(WBC)」に出場。2大会ぶりの世界一を目指した侍たちは、日本での1次ラウンド、2次ラウンドを全勝で突破した。米国で行われた準決勝では、先発の菅野智之投手(読売)が6回6奪三振1四球3安打1失点(自責0)と快投したものの、初優勝した米国に0-1で惜敗。しかし、日本の底力をあらためて世界に見せつけた。

4試合11イニングで1失点のみ、投球回を上回る16三振を奪った千賀滉大投手(福岡ソフトバンク)はベストナインに選出。菅野も米国代表のジム・リーランド監督から「メジャーリーグ級の投手」と称えられるなど、投手力の高さは際立った。

一方で、東京では好調だった打線は米国代表の投手陣に抑え込まれる形に。大会後に退任した小久保前監督は、帰国会見で「今回対戦した選手が世界トップのピッチャーのボールを経験できたことも1つの財産になると思います」と今後の選手たちのさらなる成長に期待を寄せた。その上で「素晴らしい選手たちに囲まれ、恵まれ、一緒に戦えたことは、私自身の人生の宝物です」と振り返り、充実の笑みも。2大会連続で頂点には届かなかったとはいえ、確かな手応えを掴んだ大会だった。

トップチームの次に世界に飛び出していったのは、仁志敏久監督が率いた侍ジャパンU-12代表だ。初優勝を目指し、7、8月に台湾で行われた「第4回 WBSC U-12 ワールドカップ」に出場。台風が上陸し、悪天候で日程が何度も変わる厳しい大会となったが、小さな侍たちは奮闘した。

オープニングラウンドではメキシコに5-6で惜敗したものの、首位で突破。スーパーラウンドでは2連覇中の米国に3-6で屈したが、韓国戦では終盤に5点差をひっくり返すミラクル逆転勝利。メキシコとの“リベンジマッチ”となった3位決定戦進出を決めた。決戦はわずかなミスが勝敗を分け、0-1で敗戦。銅メダル獲得はならなかったものの、ベスト4という立派な成績を残した。選手が涙にくれる中、仁志監督は「最後に負けて、涙を流すくらいの成長をしてくれた。最初の集まった時の雰囲気からすると、最後に負けて涙を流すなんていうのは想像も出来ないくらいのスタートだった」と“教え子”たちを称えていた。

大学代表はユニバーシアード制覇も、U-18代表は初の世界一に届かず

一方で、見事に頂点に立ったのは侍ジャパン大学代表。8月の「第29回 ユニバーシアード競技大会」で、2大会連続優勝を達成した。「第41回 日米大学野球選手権大会」は惜しくも敗れ、3連覇はならなかったものの、日本の大学野球のレベルの高さをあらためて見せつけた1年に。大学代表からは、10月のドラフト会議で指名され、来季からプロ野球の世界に飛び込む選手も多く生まれた。

そして、日本を大きく沸かせたのは、9月の「第28回 WBSC U-18 ベースボールワールドカップ」。高校通算111本塁打を誇る清宮幸太郎内野手(早稲田実業)、高校通算65本塁打の安田尚憲内野手(履正社)、そして今夏の甲子園で大会新の6本塁打を放った中村奨成捕手(広陵)といった注目選手がメンバー入りし、初の世界一に期待がかかった。

オープニングラウンドでは、有望株を揃えた米国代表に敗れたものの、4勝1敗とグループ2位で突破。スーパーラウンドも初戦のオーストラリア戦に勝利したが、カナダ、韓国に敗れ、決勝進出はならなかった。それでも、3位決定戦ではカナダに8-1で快勝。主将を務めた清宮が試合後に「最後は本当にみんな声を出していましたし、いいチームになったなと思います」と振り返るなど、選手は大きな経験を積んだ。清宮、安田、中村をはじめ、このU-18代表もドラフトで多くの選手が指名を受けた。

世界大会では上位進出を果たしながら、なかなか頂点に届かなかった侍ジャパン。だが、アジアでは圧倒的な力を見せつけた。

9月に香港で行われた「第1回 BFA 女子野球アジアカップ」には、ワールドカップ5連覇中の侍ジャパン女子代表が18歳以下のメンバーで出場。橘田恵新監督の元で、大会を通じてたくましく成長した。

初戦で韓国に大勝すると、成長著しいチャイニーズ・タイペイも6-1で撃破し2連勝。さらに、パキスタン、香港に大勝し、4連勝で優勝が決定。最終戦のインド戦にも17-0で勝利して、5戦全勝で初代アジア王者に輝いた。

名将・大倉孝一前監督が昨年9月のワールドカップで5連覇を達成した後に退任。後を引き継ぐ形となった橘田新監督は「とにかく、ホッとしています」と安堵の表情で大会を振り返った。“世界女王”の日本にとっては、先の世界大会に向けての通過点。新指揮官は来年開催が予定されているワールドカップに向けて「早めの準備をしていかないといけません」と意気込んでいた。

女子に続いたのが、侍ジャパン社会人代表だ。10月に台湾で開催された「第28回 BFA アジア選手権」に、多くのドラフト候補を含む強力メンバーを送り出した。

予選ラウンドでは、初戦で香港に大勝し、続くパキスタン戦もコールド勝ち。予選ラウンド突破を危なげなく決めると、スーパーラウンド初戦では韓国に3-0で競り勝った。7回まで0-0という重苦しい展開も、投手陣の踏ん張りに打線が応え、8回に一挙3点を奪取。試合を決めた。

スーパーラウンド第2戦、決勝ではチャイニーズ・タイペイに2連勝。高い守備力を軸に、2大会ぶりの優勝を果たした。石井章夫監督は大会後、今後を見据え「日本の伝統である守り抜くという形は変えずにいきたいと思う」と話した。日本の強みを再確認する大会となった。

アジアでは圧倒的な強さを見せつけた侍ジャパン

11月には侍ジャパンU-15代表も、地元で結果を残した。静岡県伊豆市・志太スタジアムで開催された「第9回 BFA U-15アジア選手権」に出場し、4大会ぶりの頂点に立った。

香港、フィリピンを相手に2連勝を飾った日本は、第3戦で大会3連覇中だったチャイニーズ・タイペイに3-0で快勝。続いてパキスタンに快勝すると、最後は韓国に1-0で劇的なサヨナラ勝ちを収め、全勝優勝を果たした。大会後に「選手がよくやってくれた」とナインを称えた伊藤将啓監督。久々のアジア制覇の要因については「バッティングに関しては韓国や台湾の方が上だと思いますが、ここ一番の集中力はあったかなと思います」と振り返っていた。

そして、稲葉篤紀新監督のもとでスタートを切ったトップチームも、アジアのライバルに力の差を見せつけた。原則24歳以下、入団3年目以内(オーバーエイジ枠3人を含む)の選手が出場した「ENEOSアジアプロ野球チャンピオンシップ2017」で、韓国、チャイニーズ・タイペイと対戦。無傷の3連勝で優勝を果たした。

初戦の韓国戦は延長10回の末、8-7で劇的な逆転サヨナラ勝ち。チャイニーズ・タイペイ戦は8-2で快勝すると、韓国との再戦となった決勝も7-0で圧勝した。

すでにプロでも実績を残している今永昇太投手(横浜DeNA)、田口麗斗投手(読売)という2人の先発左腕が快投。投手力の高さをあらためて見せつける形となった。大会MVPに輝いた外崎修汰外野手(埼玉西武)、北海道日本ハムで規定打席未満ながら打率.413をマークした近藤健介捕手、そして打撃に定評のある西川龍馬内野手(広島東洋)といった攻撃陣も存在感を発揮。アジアのライバルに日本の層の厚さを見せつけた。

アジアでは4大会すべてで金メダル。その力をあらためて証明した。一方で、世界大会はユニバーシアードで優勝したものの、その他は3位が1つ、ベスト4が2つという結果に終わった。来年、すべてのカテゴリーに共通する課題は、世界でどう勝つか、というところになりそうだ。世界ランキング1位を守り続けるためには、頂点を目指して強化していくことも必要だろう。来年も侍ジャパン全世代の戦いに注目していきたい。

【了】

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